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330 :沖田総悟
2014/11/11(火)23:59

手を離してようがどちらかが先を歩いてようが互いに理解してりゃあそれは一緒に歩いてんのと同じ事だ。と、思ってたんだが、どうやら違うらしいや。少なくともあの人ん中では。
この世界にはきっと俺と同じ考えを持って、俺と上手くやれる奴も居るんだろう。
が、そんなのは要らねェ。忘れたフリをしてた。俺が欲しかったものはそんなもんじゃねェ。

退屈じゃねェ仕事がある。安定した収入もある。支えてくれる親友が居て、勝手な俺を理解しようとしてくれるあの人が居た。
それでも満足は出来なかった。
結局、俺の根本は昔から変わりゃしねーってこった。

あの人と出逢うよりも前、六年前かそこらかねィ。その頃に作られたまま変わりゃしなかった。きっと元々そういう風に生まれてきた人間なんだろう。
六年前に居た場所は謂わば悪人の膝元だった。これでも右腕として買われてたんですぜ?懐刀として、立ち塞がった人間に罪があろうが無かろうが始末した。大半がろくな抵抗も出来ねェ一般人だったが、まァつまらなくもなかった。
その中でたった一人、真っ向から抗った奴が居た。無論荒事に慣れた奴だったからこそなんですがね。そいつが今でも忘れられねーんでィ。
命を賭した反撃を危うく躱しても、次の瞬間叩き込む俺の一撃を辛くも避けやがる。時間に直しゃたったの数分の筈なのに信じられねェほど濃密で、永遠に続けば良いとすら思える拮抗した殺し合い。
俺が満足出来なかったのは恋人ってもんの温もりに飢えてたからでも、況してあの人と価値観が合わなかったからでも無ェ。端から恋人なんて高尚なもんじゃなく、ただ対等にやり合える敵を――あの男の様に、捩じ伏せる快感と殺意を向けられる興奮を同時に与えてくれる存在を求めてたからだとようやく解った。あの人一人を踏み台にして。

こんなバカがどっちも両立出来る訳が無ェ。そう考えりゃこういう顛末も納得出来るってもんでさァ、剣か幸福かなんて俺の好きな漫画家の作品によく出てくる命題が自分自身に関わってくるたァねィ。だが事実、その選択肢はずっと前から鼻先に突き付けられてた。それにやっと気付いた今、遅れ馳せながらケジメ付けようじゃねーか。
腹の底を焼く欲求に従って俺は剣を執ろう。四年間の幸福と思い出を、それを象徴する題ごと此処に置き去りにして。
精々面白そうな相手なり場所なり見付けるとすらァ。



2014/11/11 停止


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