H a p p y B i r t h d a y !
>丸井クンが風邪引いたンだって!
女子特有の高い声。内緒話の積もりか、一つの輪になって一つの机を囲みながらこそこそ。あの、其処俺の席なんだけど。聴いてみれば話題は某天才的ボレーヤーの事で持ち切り、「御見舞いに行きたーい」だとか「看病してあげたいよねー」だとか。よくもまァぽんぽんと出てくるモンだ。勿論其の厚意は有り難ェだろうが、其れは飽く迄願望で在り、実際に世話をしに行くのとは別の話である。丸井は、可愛ェ女の子が見舞いに来てくれたら嬉しいのかねェ…と思ったが、矢張り男だから嬉しくねェ筈がないと結論付ける。事実、俺もそんな場面に遭遇したらテンションが上がるかもしれん。男ッてのは何とも単純な生き物だ。…あ、やべェ。そろそろチャイム鳴りそ。
>―――
#(閑話休題。)
奴の表面的な部分しか知らない女の子らに、昨夜の様子を暴露したら如何なるか…――彼奴はどんな顔をするのか。ま、十中八九殴られるのが目に見えとるから言わんけど。ピヨ。(何て、敢えて紛らわしい書き方をするのは昨夜の仕返しの積もり。ふふん、ざまァ。)
>―――
甘える御前も悪くはねェが、矢張り何時もの調子で言葉の応酬を楽しみたい俺も居る。寧ろ何方も捨て難い。んー。ン。
取り敢えず、早う風邪治しんしゃい。
>まるぶうあの野郎。
好い加減、可愛いと言われる事から脱却したい。大体俺を可愛いだ何だの言うより鑑を見ろ。御前のが可愛い面してッから。――え?違う?さて何が違うのか。だってほら外見然り、最近はデレ期に突入したかと思う程そう言う面を見せてくる様になった。と、思う。うん…(色々回想中)…、……。まァ良いか。兎に角俺に可愛いは似合わんッつう事で。
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丸井くんのー、
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ふくよk…あったけェ体温にー、
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毎回潰r…癒されてまーァす。
ありがとね。
>約一ヶ月振りに上げてみる。
暫く放置してたから怒ってンじゃねえかと内心焦りに焦って日記を手に取った俺、…久々だと何書いて良いか分かンねえな。
取り敢えず、
寒さと人肌恋しさで甘えて来るアイツが可愛くて仕方無え。
――ああ見えて淋しがり屋なのを俺は知ってる。
>ざぶん、ぼとん。
此の日記は丸井によって浮上します。
今暫く御待ち下さい。ピヨ。
>寒さの余り膝を抱えて縮こまる。
冬を迎えるにあたって、今から此の有り様。正直笑えねェ。こんな時は………
助けてー、ぶうえもーん。
とまァ、期待を込めて声を上げてみる。(但し布団の中で)
#追伸、
ぶうえもんて言い辛いよね。ピヨ。
>眠れ、ねェ。
調子付いて昼寝をした所為かやけに頭が冴えて如何しようもない。布団の中に入って早1時間。全く眠気がやって来ん現状に若干苛立ちながら枕に顔を沈めると、仄かに甘い香りが鼻腔を擽った。柔軟剤の匂いとも違う、やけに甘ェ匂い。…――丸井の匂いだ。寝る時は殆ど一緒だからか、彼奴の匂いが枕に馴染ンでて余計に人肌恋しさに拍車が掛かる、ッつう。ね。…ピヨ。
多分今だって呼べば応えてくれるだろう。彼奴はそう言う奴だ。が、其れを敢えてしねェのは……まァ、声を掛けたら掛けたで俺が直ぐ寝ちまうからッてのが大部分を占めとる訳で。其れ程、彼奴の声や所作は俺にとって――で、寒さが増した今無くちゃならねェモンになりつつある。喩え可愛いやら爺ちゃんやら色々言われ様とも、な。
…あァ、綴ったらすっきりした。丁度良い感じの睡魔ちゃんが来たンで、此処らで失礼。アデュ。
早朝の肌寒さは未だ慣れない。一月前のあの茹だる様な暑さはすっかりなくなって、今じゃ布団の中で身体を丸めながら眠る程。(勿論、隣には丸井も居る。が、寒いモンは寒いンだから仕方が無ェ。)
秋独特の、寒さ。此の空気は嫌いじゃない。寧ろ好きだ。
其れでも矢張り、…矢張り、なのか。
如何にも人肌恋しさは拭い切れない訳で。
夜になれば決まって彼奴に声を掛け、一時の温もりを得る日々。眠りに落ちる瞬間迄言葉を交わし(と言っても大抵俺の寝落ちで毎回中途半端に終わる。ごめんちゃい、ピヨ。)、甘い匂いを腕に静かに静かに意識を沈める。そう、丸井を抱きながら迎える朝は決まって寝覚めが良いから、
>腕の中で眠る、
まるぶう。基、丸井。早々に自分の日記を見付けられ、恥ずかしさに何度も「馬鹿。阿呆」を繰り返す様は見て居て飽きん。此奴を揶揄うのは実に愉しい。
最初に逢った頃の様な俺様何様丸井ブン太様はすっかり形を潜め、今じゃァこんな感じで身を預ける迄に成長した。ホンに、まァくんは嬉しいデス。(多分此れを読むであろう丸井から、盛大な突っ込み其の他諸々が入るのを予想して些か誇張してみた。ピヨ。)
で、熟甘ッたりィ雰囲気より売り言葉に買い言葉が合っとると思った。
いやまァ、偶に丸井の驚異的なデレに目眩がする事も在る、が。きゅんきゅんする事も在る、が。……、
アー…
早う眼ェ覚ませ、阿呆ぶう。