日記一覧
┗飽和する午後(1-10/17)

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10 :日吉若
2010/05/17 18:43
1年程前に薦められた本を、今更になって読んだ。
本屋の中、普段は立ち寄らないコーナーに足を踏み入れて、他にもいくつか目ぼしい物を拾い上げてレジへと向かう。
本屋のカバーは汚れが逆に気になるから断る主義で、持ち歩くのであれば手持ちの物を掛けるようにしている。
とはいっても、今回の本は持ち歩こうとはとても思えなかった。
他人事じゃなさすぎて、片手間で読む気には、とてもなれないからだ。

「お前等に似てる」と言われてから随分と時間が経つ。
何が似ているのかを聞いた気も、聞かなかった気もする。
それでも、ページを捲っていけばすぐに解った。…確かに、似ていると思った。
あの人とは少し遠い、けれど多分、主人公がその相手に抱く感情を、俺はとても正確に辿る事が出来てしまう。
そして、きっとその人の掌の温かさを、頭ではなく、感覚で理解してしまえる。
抱きしめられて軋む胸の痛みも、ふとした仕草に自分だけが動揺してしまう悔しさも、本人が笑って話す過去が、酷く圧し掛かる事さえも。
これ以上好きにならないようにと思うのに、それでもどうしようもなく惹かれてしまう、その感情さえ。


2年前の、明日。俺達の関係は形を持った。
それまでの曖昧な、互いの暗黙の了解の上に成り立つ、始まりも終わりもない関係は崩れ、初めて感情を口に出した。
今でも、あの夜の事を思い出すと酷く胸が苦しくなる。
俺を好きだと告げるあの人の声と、波の音。
想いを伝えるより先に口付けた事、指を絡めて眠った事。
欲しくて堪らなくて、それでも矛先を収めた事。
何もかもが限界で、傍にいると幸せで、酷く辛かった。
あの人が甘く笑えば笑う程、手に入れたくて、それでも尊重したくて、辛かった。
手に入れてはならない人で、それなのにあの人から示される好意がまるで毒のようで、底の無い沼に足を取られている気分だった。
いっそ絶望的な程に、あの人に惹かれていた。


もしも、と考える。
もしもあの時、本当にあの人の留学が決まっていたとしたら。
何事も無かったように、後輩の一人として、俺は氷帝でそのままテニスをしていたんだろうか。
あの人のいないコートで、越えたいと願う人の背中の幻影を追ったまま。
毎日のように2人で打ち合ったラケットを、あの人のいないネットの向こう側を見た時、俺は何を思っただろうか。
あの人と絡めた指の空白を、あの人のいない夜を、埋める術を持っていただろうか。
海を越えた国と、日本では、きっと触れる機会も殆どないんだろう。声を聞く時間さえ限られる。
過ぎた時間に「もしも」を持ち込んだ時、「今」の稀有さに思い当たる。
いくつもの偶然と意志とが重なって、ようやく2年だ。あの人の傍で、特別な存在として。



跡部部長。
もうすぐ夏が来ますね。アンタの傍で迎える、とうとう3度目の夏だ。
こんな節目に限っていないんですから、アンタの空気の読めなさも相変わらず、2年間ずっと変わりませんね。
当たり前のように傍で笑うアンタを、俺は今日も当たり前のように愛してます。
今日も、明日も、きっと。
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9 :日吉若
2010/03/26 08:00
跡部部長。…跡部さん。
アンタにどうか届いて欲しいと思う。
こんなにも好きで、愛しく思っている事を、どうか知って欲しい。
アンタが笑えば嬉しい。
アンタが苦しむなら哀しい。
もっと傍に行きたいんです。限界よりも近く。
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8 :日吉若
2010/03/23 04:31
自分の眼鏡姿があまり好きになれない。
ただでさえキツい目付きが更にキツく見える、と兄に笑われたのはもう数年前の事だ。
稽古や部活に邪魔になるという理由があったために、早くから両親の理解を得てコンタクトに移行したのは幸いだったと思う。
手元のライトだけで読書をする時間が増えるにしたがって、今ではコンタクトは手放せない物になった。
が、寝る前だけは別だ。就寝前の数十分から数時間の間はコンタクトを外す必要が出てくる。

あの人の隣に眠る時、俺は基本的に自分で眼鏡を外さない。
空けられた隣に滑り込む事、腕に頭を乗せる事を優先している内に、腕や胸に当たる眼鏡を邪魔に思っていると、すっと伸びてきた手にそれを攫われる。
レンズが無くても、あの人の顔を見るのに不自由は無い。
補助が不要になる程近くて、呼吸が触れる程の距離で目の奥を見る。
あの人の目の中に俺が映っているのが見える。今、この人は俺を見ている。それが解る距離だ。
あの人もまた、俺の目の中に自分の姿を見るだろうか。俺が捉えている姿を見て、どう思うだろうか。
笑みで細くなる目の奥、少し惚けたような自分の顔が歪んでいく半ばで視線を逸らし、胸に顔を埋める。
呼吸で上下する胸元は温かく、深い。溶けるように沈んで行き、そのまま意識が途絶えていく。


そうして眠りについた翌朝。
起きようとする俺がまずしなければならない事は、あの人の手が攫ったままどこへ置いたかも解らない眼鏡の捜索から始まる。
ベッドヘッドに置く習慣を、いつになったら身につけてくれるんだろうか。
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7 :日吉若
2010/03/15 04:15
久々に、あの人の音を聴いた。


二人で暮らし始める前までは、あの人の実家にあるグランドピアノを聴く機会も少なくはなかった。
付き合う前、音楽室で弾いて貰った事もある。
二人で過ごすマンションに楽器は持ち込んでおらず、音楽と言えば高価なオーディオ機器から流れるクラシックが主になった。

あの人の音が好きだった。
部活が終わった後、部誌を監督に渡した後に音楽室に立ち寄って、机に腰を乗せてあの人の音に耳を澄ます時間が好きだった。
こういうのが好きなんじゃねえのか、としたり顔で弾く曲は不思議と耳に馴染んだし、穏やかな表情を見ている事も好きだった。
今この音を聴いているのは俺だけだ、と思っていた。
いつだったか、一番最初にこの人が俺の前で楽器を手に取った時、さらっと弾きこなす姿に悔しさを覚えつつも、目を奪われた事を覚えている。
そして後日、「俺だけの為にまた弾いて欲しい」と強請った事も。…あの人はきっと、覚えていないだろうが。
あの人の奏でる音はいつも俺の耳にじわりと浸透したし、穏やかに包まれている事を全身で感じた。
時折作られるあの穏やかな音に満たされた時間が、俺は本当に好きだった。


帰る場所を同じ小さな部屋にしてから、そうして寄り道をする事も減ってしまった。
いつ人が来るとも知れない音楽室よりも、二人で寄り添う事に躊躇いもない砦に戻って抱き合う事が増えた。
ピアノが聴きたい、と呟いた所で、自室にピアノはない。持ち込んでもいちいち調律師を呼ぶのは俺があまり歓迎出来ない。
結局そうして暫く、あの人の音に触れる機会からは遠ざかっていた。


たまにはイベントにかこつけてベタな行動に出るのも悪くはねえだろ、と笑ったあの人がピアノの前に座って、そこから流れる曲に思わず表情が緩んだのを感じた。
思い出の曲、と言ってしまえば実にベタだが、当時、俺達の中では何度となく、まるで一つのキーワードのように語られた曲だ。
物よりも何よりも、その曲を、今日、聞けた事を酷く嬉しいと思った。
過ぎた年月と、今と。傍にある事の稀有さを感じた。
この人が好きだ、と。そう思った。
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6 :日吉若
2010/03/14 04:19
ここ数日夢見が悪い。
無駄にモテるあの人がきっと全部悪い。
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5 :日吉若
2010/03/09 03:27
少しずつ近付く日付に思いを馳せる。
何年過ぎても、あの瞬間の鮮やかさを俺は忘れはしないだろう。
あまりにも眩しくて、その隣に並び立ちたいと願ってしまった。
近付いてしまえば更に欲しくなり、触れたいと願った。
愛したいと、愛されたいと思った。


跡部部長。
俺はいつもアンタの傍にいる。何があっても、きっと。

また、春が来ましたね。
あの日と同じ季節が。
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4 :日吉若
2010/03/06 22:02
ホワイトデーが近付いている。

周知の事実ではあるが、あの人はモテる。解りきった事とはいえ、時折無性に腹が立つぐらいにモテる。
先月の行事は酷い有様で、実家に全部チョコレートを置いてきたとはいえ、
一日中取り巻かれていたチョコレートの匂いが体にこびりついているんじゃないかとすら感じた。
そんな騒ぎにも本人は我関せずで素知らぬ顔だ。
本気の奴がその内何割いるんだか、と意にも介さぬ表情でコーヒーを口にする姿に、慣れてきたとはいえ一瞬殺意を覚えた。

実際問題、あのチョコレートの全てがあの人に対し本気の物とは思わない。
校内ではある意味名物行事の一環になっている節があり、それに乗っただけの女もいるだろう。
また、ただの憧れの存在としてブラウン管の中の俳優宜しく慕う女もいるだろう。
ただ、一定以上あの人と言葉を交わした上で、となると話は変わってくる。
あの人の言う「アイツはそういうんじゃねえんだよ」程信用出来ない言葉もそうそうない。

遠くから見るとただの金持ちモテ男。もう少し近付くと育ちのいいインテリヤクザ。更にもう少し近付くと父性溢れるジョーク好き。
あの人は本当に真っ当で、自他共に認める面倒臭がりではあっても「いざ」という時にはこれでもかと広い心と面倒見の良さを発揮する。
イタリア男たる所以でいいと思えば褒めるし、それがまた自然すぎる所がタラシ臭い。
本人に下心がまるでないのもモテる要因なんだとは思う。
飢えている人間はスマートじゃない。満ちている人間、もしくは欲していない人間は飢えてがっつく事はせず、その余裕が魅力にも繋がっていく。
あの人の魅力は、近くにいればいる程増す物だと思う。あの人が相手に好感を抱いていれば尚更だ。


先月、15日。
バレンタインの狂騒は土日を経て落ち着いていた。
部活の書類の事で、と生徒会室に呼び出され廊下を歩いていくと、丁度生徒会室から数メートルに差し掛かった所で目的の扉が開いて一人の女子生徒が出てきた。
静かに扉を閉めた後、一拍おいて俺の方へ小走りに駆けて行ったその女の顔は真っ赤で、すれ違い様一瞬見えた表情は今にも泣き出しそうに唇を噛み締めていた。
その時点で何となく予想をしつつ、生徒会のドアをノックする。
中からは馴染んだ声が、校内特有の平然とした声音で返ってきた。耳元に響く声とは違う、常温の声。
名を名乗りもせずに開けると、生徒会長の机の前、片手を天板の上に置き、もう片手で小さな包みを手にしたあの人の姿がある。

「一日遅れで熱烈な告白でも受けましたか」
『会計の女だ。義理だとよ』

特に動揺するような素振りも無く、全員に12日に渡したが俺には近付けなくて今日になったらしい、と平然と俺に向けて包みを放り投げてきたあの人に、
さっき走り去った女の顔を見せてやりたいと、心底思った。
少し強い力で包みを投げ返すと、わざとらしく驚いた様子で、それでも軽々と受け止めたあの人が「おっかねえな」と笑う。
笑みを象った目が少しだけ甘いのは、多分俺が義理と信じなかった事が伝わったせいだろう。
根拠のない嫉妬じゃねえよこのハゲ。胸の内で悪態を吐いて、書類を急かした。


昨日、その事を不意に思い出して腹立たしくなった。
隣で静かな寝息を立てるあの人の顔に無性に苛立ちが募り、この野暮ハゲが、と思いながら頭頂部から髪を抜いてやった。
クソ、死ね、このハゲ、本気でハゲろ。
一本抜く毎に念じていたら、非モテになれと念じかけた5本目であの人が起きた。
間近で瞼がゆるりと開いて、未だ眠りの中から戻らないような目をしたあの人が、寝起きの掠れた声で「…どうした」と一言囁く。
5本目に掛けていた手をそっと下ろし髪を撫でて「何でもありませんよ」と答えると、
「そうか」とだけ言って肩を抱く腕に少しだけ力を篭めた後、すぐにまた寝息が立ち始めた。
次の日、枕に散った髪の毛が少しだけ多かった事にもあの人は気付かない。
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3 :日吉若
2010/03/04 23:24
ふとした発言に親密さを滲ませてしまいそうで焦る事がある。

誰かの口からあの人の名を聞く事は珍しくもないが、気が緩んでいると危ない。
「あの人はああいう人だから」
「誤解されやすいからな」
この2つが出かけると肝を冷やす。
つい先日、つい口を滑らせた時の同じクラスの女の視線がやたら怖かった。嫉妬と羨望と少しの媚び。
人気のある人だから、校内では必要以上の接触は避けている。あくまで部活の先輩後輩として。…稀に、人目を避けるようにして。
そういった苦労を吹き飛ばすようなイージーミスだ。


「誤解されやすいが、あの人はあれでいて親切で優しいから遠慮なく頼めよ」

…恋人の事を我が物顔で語る癖は、どうやれば消えるんだ。
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2 :日吉若
2010/02/26 16:57

氷帝学園2年。
テニス部所属。
報道委員。
実家は道場。
血液型はAB。
現在野暮なハゲと二人暮らし。


自己紹介をして欲しい、と言われるのが正直苦手だ。
初めて会った人間に自分の信念を語るのもどうかと思うし、趣味はと聞かれて読書とでも答えた時の「無趣味かコイツ」の視線は実に腹立たしい。
(無趣味な人間がこぞって「読書、音楽鑑賞」と書いたりするから皺寄せが来る。滅べ。)

だから、要するに俺という人間がどんなモンなのかは、長い目で見て貰いたいという願望持ちだ。
言葉をないがしろにするわけでもなく、言葉に依存するだけでもなく。
総合して貰えればそれに越した事はない。
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1 :日吉若
2010/02/26 16:49
単なる日記、もしくは雑記。
適当さと無精さではなかなか負ける気がしません。
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