
鐘の音
遠方側から鳴り響く聞き慣れた、と謂う縒りは懐かしい。そんな“
聲”が頭の中で鳴り響いた…──気がした。其れは心地良くて冷め切った世界に色を齎す魔法の様な音色で、立ち止まった
脚を再び動かすには丁度好い頃合。
浮き足立つ言葉も
感情も全て投げ捨てれば、他人に害を与えず。放り投げた欠
片を子供のように只管眺めればそれに似た、カタチばかりの玩具を周囲は与えて呉れる。
完璧な自分で在り続ける事が正しいと、昔誰かカラ聴いた事が在る。顔の輪郭さえ思い出せん誰かの言葉を鵜呑みにして、自分の感情を押し潰す。其れは俺の
意思…そう頭で言い聞かせれば全ては思い通り。
達観して
世界を見詰める事が本当は一番
自分の世界が上手く廻るコツなんかも知れん。再び感情と云う欠片を見詰めて後悔為る事は自業自得、悔いは無い。頭の中で鳴り響く鐘の音が如何か何時か止む事を願い…──俺は今、欠片を眺める。剥がれ落ちた穴が空いた
胸に戻って来る事を願う様に。