『夜毎に姿を変えるあの不実な月に愛を誓ったりなさらないで』

その言葉はむしろ逆に思えてならん。夜毎に姿を変えて見えてもあの月は何時やって美しい弧を描いて其処に在る。映す空がどんな表情を見せようとも、太陽の光に負けて見えずとも。確かな月にこそ愛を誓うんは間違うてなん無い。
俺がそないな事を言うたなら彼奴は"俺自身に誓ってや"て言うてくれるんやろうけどな。偶にはそないロマンチックな睦言を交わすんも良えやろ？

運命の相手やとか、そんなんあんま信じる人間とちゃう俺やけど信じたくは在った。夢と現実の境なんホンマは曖昧な様にロマンチストとリアリストも紙一重なんやろな。
彼奴と出逢うて、手を振り払い、また伸ばして繋がってからはホンマ幸せ。まさか彼奴の口からあないな言葉が貰えるなん思うても居らんかったから、格好悪い位に頬が緩んでまうわ。二つに割れた硝子の欠片の様に、はたまた何やのパズルのピースみたいに、素で示す所作がピタリと嵌るっちゅう事もあるんやて初めて知った。その相手が彼奴やった事が何より嬉しく誇りなんやで。

正直自分でも不思議な位やねん。どないして彼奴との時間はこないに心地良えんやろ？何につけても俺の嫌な琴線に触れる事は無く、的確に奥まで震わせられる。ほんで俺もそうらしい。嗚呼ホンマ奇跡？一年とか居って今更奇跡も何も無いけどな！そない阿呆な事堂々口に出来る位熱に浮かされっ放しっちゅう話や。

未だに永遠っちゅうのは信じとらんけど、何時やってこの気持ちが過去形にならんように願っとるで。今日も溺れる程、愛しとる。

何でそない簡単に手ェ伸ばせるんか解らへん。振り払われるかもしれへんのに手ェ伸ばすよりも、伸ばされた手を選別して取ってやる方が比べモンにならん程簡単で、自分に優しいんにな。

俺の前でだけや言うて泣くあの人はホンマは何人もの前で泣いて縋って誰かの温もり欲しとるだけなんやろか。ホンマはめっちゃ面倒臭いんに振り払えへんのも自分のエゴなんやろなァ。

愛しさは募るばかり、
なんあまりにふやけた言葉や。彼奴と居るとそれだけで嬉しい。時々俺は愛し過ぎてウザイんちゃうか？なんて思うんやけどそれでも手を離してやる気にはなれへん。例えばもし万が一彼奴が別に好きな奴出来たて言うても、自分の事愛しとる気持ちは其奴に負けへんって言い切れる。幸せを願えばこそそっちに行かせん訳にはいかんけどそれでも一番は譲らへん。

彼奴を腕ん中に閉じ込めておける時間が一分一秒でも長なるようにしたいんや、せやから後ろ向きな事は一切考えへん。浮気や何や疑った事もなければ喧嘩すらした事無いんちゃうかな？彼奴ん事信頼しとるし、きっと彼奴もそうなんやろうなって思うと最高に嬉しいわ。

ふと思い出したみたいに自分に貰た言葉を読み返して見た。直接届くんとは違てあの場所で交わした言葉や。

不思議なモンでお前の言葉なんかそうやないんか分かってまう。わざと分かるように書いてくれとんのもあるんやろうけど、貰て来た言葉の一つ一つがホンマに嬉しゅうて胸がぎゅってなるんやで？あの頃から変わらず愛してくれておおきに。俺は今もお前の可愛え恋人で居れとるやろか？何度否定しても懲りずに言われるその言葉が何時からか嬉しくなってもうた。男にそないな形容詞似合わへんっちゅう思いは今もあるけどな、お前の前でだけ特別やから良え。俺も良う言うてまうしおあいこっちゅうのもある。

最近は忙しゅうて前程一緒には居れへんけど交わす言葉には変わらず愛しさ籠もっとる。そん中でもやっぱあの場所に残される言葉は何や格別に響きよんねや。ふとした呟きも拾ってくれておおきに。ホンマに身体、壊さへんでな。それだけが心配。俺ん声で癒されてくれるなら幾らやってお前を呼ぶし、腕ん中で溶かす勢いで甘やかしたる。せやから、せやから……あー…早よ今日も逢いたい、