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┗1176.緞帳裏の星(215-219/278)

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219 :エメトセルク
2024/02/21(水) 20:31




下の記事……私の視点についての話だが、ヒュトロダエウスは私の物事の考え方だとか、美しい景色を見たときの感想、夢の話なんかを聞きたがることが多い。私としては話すようなほどのことでもないと思っているんだが、ヒュトロダエウスにとっては興味深いらしい。そこまで人と異なるような感じ方をしているつもりもないんだが……。
ただ、確かに私とヒュトロダエウスではものの見方が違うなと感じることは度々ある。そうだな……最近だと、人と動物の関係性を言及した作品について議論したとき、とくにそう思った。私には悲しい……というか、動物が可哀想で『生き物は人より遥かに寿命が短いので、その短い時間どう彼らと対峙していくのか』を説いた話だと思っていたんだがヒュトロダエウスには違って見えたらしい。「ワタシはあれは、人による人のための作品だなあと感じたかな。それにハッピーエンドに見える」
見ている世界が違いすぎて、ハッピーエンド!?あれがか!?と驚愕した記憶がある。私には、もっと動物に寄り添えという戒めの話にしか見えなかったが……。お前の方がよほど特殊な考え方をしているんじゃないのか?
ヒュトロダエウスと弁論をしていると、当たり前だが私とは異なる者なのだと改めて思い知る。同じものを視ていても、違うことを感じるし考える。
最近よく思うことがある。私とヒュトロダエウスがふたりでひとつといったような番でなくてよかった、と。自分と似たような相手を好きになれるとはとても思えない。かといって価値観がかけ離れすぎているのも……ともに生活する上では大変だろう。
だからヒュトロダエウスくらいでちょうどいいのだと思う。私と同じすぎず違いすぎないあいつが。そんな存在が隣に在ること、偶然ではないと私は思っている。




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218 :ヒュトロダエウス
2024/02/21(水) 19:59



エメトセルクのものの見方は、ワタシとはやはり違っていると思う。違うからこそ、斬新な創造物や検証が難航しているイデアに関する意見なんかを、個人的に彼に尋ねてみることも多いのさ。……仕事じゃなくたって、こうやって旅をする中でもそれは変わらない。旅先で出会ったものや風景を目にしてエメトセルクがどんな思いを抱くのか。ワタシにとっては何より興味深いものなんだ。

あのときの旅でもそんな場面があった。ワタシたちはとある研究施設に招かれていたんだ。無機物の創造に心血を注ぐ者たちが、星のために尽くしているところさ。
……じつは当初、エメトセルクはあまり興味がないのだろうと思っていたんだ。試作の創造物を視るのは基本的にワタシの仕事だしね。研究員が創造物について熱心に説明してくれているのを聞きながら、……ワタシが気になっていたのはずっとエメトセルクのことだった。付き合わせちゃって、もしかしてつまらなかったりしないかなって。
……フフ、だけどどうやら要らぬ心配だったみたいだ。彼ってこういうときにこそ、人知れず静かに、いろいろな考えを燻らせているようなタイプだってことを失念していたよ。

研究所での視察を終えたあと、ワタシたちは気になった創造物について意見を交わしていたんだ。
「うまくできていたよね。一箇所の部品が他の装置とも連動するようになってるのは面白い仕組みだったなあ」
「他の箇所に心を分け与えられるようにあの位置に創られたんだろう」
エメトセルクはそんなふうに言い出した。
「……あれは心臓を模して創造されているんだと思ったが」
……なるほど、こんな見解があるなんてね。心臓だとか心だとか、正直ワタシにはまったく思いもよらない考えだった。一見、心なんてなくても成立しそうな物だし、創造した研究員ともそこまで突っ込んだ話はしなかった。
ああ、彼らしいなあ……。ワタシは密かに嬉しくなったんだ。彼だからこそ辿り着いた視点に他ならないんだろう。
ほかのイデアに関しても、聞き出してみると色々なことを話してくれた。冥界にまつわる調書や、既存の生物と無機物との類似、創造物と創造者の関係性、そこから生起する感情について。彼はあまり話すつもりはなかったんだろうけど、ワタシがしつこく食い下がるから黙ってるのも面倒になっちゃったんだろうね……フフフ。同じものを見ていたはずなのに、彼の口から語られる言葉はどれも彼しか持ち得ないものだった。

……エメトセルクは口数が少ないし、思慮深いタイプだからね。自分の思いや感じたことを奥底にしまい込みがちだ。誰かが尋ねない限りは、相手に伝えようだなんて考えないだろう。それを知ることができる立場にいられてよかった。
彼だけが持つ素晴らしい視点があることを、ワタシとしてはもっと世の中に知らしめたいと思うのだけれど……それをよしとしないエメトセルクの謙虚さもまた好ましいと思っているのさ。




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217 :エメトセルク
2024/02/17(土) 09:08




昨日はヒュトロダエウスの調子が悪かった。
もともとあまり元気がなかったのだが、一緒に寝たいと言う奴に対して「私はあまり疲れていないから起きて作業をする、寝るならお前ひとりで寝ろ」とあしらったら無理やり抱かれた。いや……冷たくした私が悪いんだが……。
ヒュトロダエウスは調子が悪いと力ずくで抑えつけたり噛みついたりしてくる傾向にある。……力ずくといっても、私が本気で抵抗をしたらヒュトロダエウスなど軽く吹き飛ばせるのだろうが……。いつもと違うヒュトロダエウスの雰囲気に気圧されて、うまく力が出せない……というか、怪我でもさせたら事だ。そうして結局いつも流されてしまう。そう頻繁にあることでもないが。
有り余っていたエーテルも体力も根こそぎ持っていかれ……(無論この間も冥界からエーテルは流れ込み続けているが、一気に減ったからといって急に雪崩れ込んでくるものでもない。引き出そうと思えばいくらでも引き出せるが、こんなことのために使うのも馬鹿らしい)
ヒュトロダエウスの望みどおり、気づいたら奴の隣で朝を迎えることになっていた。

「おはよう、一緒に寝てくれてありがとう」
「……無理やり寝かされたようなものだ」
「フフ、そうだね。幸せだったなあ」
サイコパスか?
「でもやっぱり、ワタシああいう状況少し興奮するみたい」
サイコパスだったか……。

私はああいうのは言いたいことの何もかもが呑み込まれて流されてなくなって、……うやむやになるから好きじゃない。
だが、そういうことがあった次の日のヒュトロダエウスはいつも以上に大事に、優しくしてくれるからそれは悪くない……と思っている。存分に労らせてやる。




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216 :エメトセルク
2024/02/16(金) 20:31




この間ヒュトロダエウスと街を歩いているときに、怪しげな箱を持った男が道端に佇んでいるのを見かけた。箱には穴が空いていて、ちょうど手を入れて何かを出したり入れたりできるような形をしている。
なにか面倒ごとにでも巻き込まれたら厭だ……そう思った私はすぐ通り過ぎようとしたのだが、興味を持ったヒュトロダエウスが男に声を掛け始めた。これだから好奇心の強い奴は……。

「今新しく創ったものを試験的に使っていて……よろしければ実験にご協力いただけませんか」
「わお、おもしろそう!もちろん構わないとも、エメトセルクもいいよね?」

安請け合いするんじゃない……と言いたいところだが、見たところあまり協力はしてもらえてなさそうな様子だった。それはそうだ、呼びかけも何もなく突っ立っていただけなのだから。仕方ない……手伝ってやるか。
男から詳しく話を聞くと、この箱は未来がわかるものらしい。穴に手を入れて、中にある小さな紙を取り出す……するとそこに未来の自分のことが書いてある、と。未来といっても細かいことまではわからず、ざっくりとした内容らしいが。
確かに先々のことがわかるとなれば素晴らしいイデアだが……胡散臭すぎる。本当に大丈夫なのか……?という私の躊躇いに反して、ヒュトロダエウスは迷いなく箱の中に手を入れた。

「あれ、たくさん入ってる。うーん……これにしよう」

ヒュトロダエウスが取り出した紙は紫色のゴムで巻かれた小さなものだった。「エメトセルクも!」と促されるまま私も箱から一枚を取り出す。……黄色いゴムだ。
さて、いざ中身を開こう……とした瞬間、ヒュトロダエウスのゴムが千切れる。不吉だ。
ヒュトロダエウスは笑っている。どうやらあまり気にしていないようだ。さて、今度こそ……と中身を開こうとすると、次は側で見守っていた男の「あっ!!!!!」という声で遮られた。今度は何だ……。

「すいません……これカップル用でした……」
カップル用?????
「応用として恋愛に特化した箱も作ってみて……こっちはあまり自信のない出来なのですが……」
「おふたりはご友人……ですよね?本来の使い方と違うことをしてしまうと暴発して紙が燃えたり箱が機能しなくなったりするかも……」

青ざめながら謝罪する男を見て、ヒュトロダエウスが「伝えてしまってもいいのでは?」といった感じの目配せをしてくる。……大変不本意だ……。だが、せっかく自分が創ったものが壊れてしまうかもしれない……そういう焦りを抱いている男をそのまま放置して去るのも忍びない。

「…………心配しなくとも、私たちは恋人同士だ…………」
「!?そうだったんですね!?それは失礼を……あわわわ」
「あっ、でも壊れてもすぐ直せるので大丈夫です!とってもらった紙もそれで結果が変わるわけではないので……宣誓ありがとうございました!」
宣誓した意味!!!!!

隣でヒュトロダエウスが息をするのも絶え絶えなほどに笑っている。お前……こうなるのが予想できていたな……?箱のことも初めから視ていて、大体の構造を把握していたに違いない。
どっと疲れたので男には適当に手だけ振ってその場を後にした。


ああ、そういえば結果だが……私のには「諦めきれない恋を引きずっているあなた 悲しいけれどこの恋は諦めたほうがよさそうです」といきなり書かれていた。開幕から何の話だ?ヒュトロダエウスの方も「一方的な恋をしているあなた この恋は諦めたほうがよさそうです」的なことが書かれていたらしい。
ふたりとも見当はずれもいいところじゃないかと溜息をつくと、「でもおもしろかったじゃない」と笑うヒュトロダエウス。
まあ……たまにはこういうのも悪くないが、やはり何かが自分たちの運命を決めることなどできはしないのだな、と思う日だった。




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215 :ヒュトロダエウス
2024/02/16(金) 00:21



エメトセルクは不思議だ。
彼が建物を出ようとするその瞬間に雨足が弱まるし、先を塞いでいた魔物の群れがまるで道を開けるかのように立ち去る。……逆もしかりだね。彼が屋内に入った瞬間土砂降りの雨が屋根を叩き始めたり、彼の調査が済んだのを見計らうようなタイミングで厄介な魔物が現れたりするんだよ。彼の選び取った選択は、巡り巡ってかならず善い結末をもたらす、……ようにワタシには思えてならない。まるで何かの加護でも受けているみたいにね。
エメトセルクは言うだろう。「私が行く先で雨が上がる?そんなはずないだろう。見ろ、現に今も雨は降り続けているが?」なんてさ。……うん、そうなんだ。この星を真に愛している彼が、天候を操るなんてするはずもない。日頃から天気の変化をこの星が生みだした奇跡と尊び慈しんでいるような人物なんだから。……まあ、エメトセルク自身が望んで起こしている現象じゃないってことはたしかなんだろうけど、ワタシが言いたいのはそういう話ではなくてさ。
あれだけ土砂降りだった雨が彼の行く先で、完全に止むわけではないにしろ、たしかに雨足を弱めたりする。そういう些細な偶然がいくつも重なるのを隣で見続けてきたワタシとしては……これが単なる幸運だって片付けてしまうには惜しい何かを感じてしまうものなのさ。
冥界……エーテル界は物質界と重なるようにして存在している。視えるかどうかは別にしても、それはごく当たり前にどこにでもあるものだ。冥王を慕うかの領域が、ワタシたちのまったく感知しないところで、ごく僅かな作用をしているのだとしたら。……なんて、大それた仮説を夢想してしまうのもそれは仕方がないことなんじゃないかな?

彼の不思議な力は……そうだなあ、魔力や魔法とは違う、……もっと純粋で微かな、祈りとも呼べるものかもしれない。エメトセルクがときどきぽつりと語る言葉を拾っていくと、それは彼の生きる世界にずっと昔から存在しているらしいとわかってきたんだ。
彼はとても慎重かつ用心深い性格だ。おまけにとことん根が真面目で心配性ときた。アーテリスに生きるワタシたちはたいてい誰もがおおらかなもので、彼のように、いつも、なにが起きるかもしれないと心づもりをしている者はほとんどいないだろうね。
……エメトセルクは、きっと起こることはないだろうその災いが、彼の周りの大切な人たちに降りかかることのないようにと、ただ祈っている。誰に何を告げることもなく、ひとり静かに。そういう生き方をずっとしている。

彼の敬虔な想いを感知して冥き海は彼を愛するんだろうか。




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