フフフ……あの新種の保護をエメトセルクが任されたのはいい判断だったと思うよ。彼なら、なんだかんだと文句を言いながらもついつい世話を焼いてしまうだろうし……というか、すでにだいぶ懐かれちゃっているしね!
エメトセルクと小さな獣が戯れているところは何ともほほえましくて、思わず笑ってしまう。
彼としては戯れてやるつもりなど毛頭ないのだとしてもそうはいかない。まだまだ幼体というだけあって遊び盛りみたいだね、フフフ。はしゃぎ過ぎて魔法で軽くたしなめられていることもあるくらいさ。それでもめげずに向かっていくのだから、案外恐れ知らずな個体なのかもね。
……フフッ、鬱陶しいとか言って近くに来るとちゃんと撫でてあげるんだから。ワタシから見ても、彼らの相性は悪くないんじゃないかな?
アログリフの見立てによると慎重で臆病な性質って話だったし、エメトセルクが保護したばかりの頃はそのとおりの挙動をしていたように観察できたのだけど……、フフ、要はエメトセルクに甘えているんだろう。そんな厄介な個体をよくこの短期間で手懐けたものだと感心してしまうよ。獣の幼体とはいえ、僅かに知性もあるようだ、彼と接して感じ取るものがあるのかもしれないね。
一応ワタシも、飼養の管理は協力するつもりでいたんだよ?エメトセルクがその個体を預かることになった要因のひとつだって自覚はあるからね。
はじめのうちは「活動に必要なエーテルの大部分を食事で補給するのか……?しかも一日に数度だと……」とかなんとか言ってたけど、今は皿が空っぽになってると「空だったから入れておいたぞ」なんて、すすんで給餌するようになっているんだから……うん、やっぱりキミが保護してよかったよ。
……ああ、観察を怠るつもりはないからそこは安心していい。今のところ、害をなすような兆候は視えないし、このまま何事もなく年月を重ねてくれるのを願っているよ。局長の立場としても、すすんで星の海へ還したいわけではないからねぇ。あるいはこの創造生物ならエルピス直下の……、……まあ何かあったとしてもエメトセルクと一緒ならば心配はないと思うけどね。
私信と見せかけた独り言①:中の人ネタは反則だろう……サビクのくだりでもうダメだった。
私信と見せかけた独り言②:素早い牽制に礼を言うべきだろうな、これは。できる恋人がいてくれたようで何よりだ、よいフィナーレを迎えられることを願っている。
成り行きで新種の創造生物を飼うことになった。寒冷地に適応した毛皮を持つ比較的大型な生物で、陸路での人や物の運搬も可能だそうだ。
……とはいえ私が飼うことになったのはまだ幼体で、大きくなるには数年ほどかかるらしい。幼いせいか、どこへ行くにも私やヒュトロダエウスの後を付いて回り、本を読もうとしても構えとばかりにちょっかいを出してくる。
寝ていても隣で尋常じゃなく喉を鳴らしてくるし、顔を舐めてくるものだからゆっくり眠ることすらできん。まったく、厭になる……。ヒュトロダエウスは顔を舐められそうになると何の躊躇いもなくガードしているが、アリなのかそれは……。
【アゼムと】
☀️「なんか雰囲気?顔つき?が若いころのエメトセルクに似てる」
♊️「(なにを言っているんだこいつは?絶対にツッコまないからな私は)私が産んだからな」
☀️「出産祝い贈るな!!」
🏹「そうだと思ってたんだよね!!」
こいつら相手にボケた私が馬鹿だった。
【ヒュトロダエウスと】
♊️「昨日、やけに寝苦しくて目が覚めたら、奴が私の首の上で寝ていたんだ……」
🏹「あっ、そういえばワタシも……この間エメトセルクが眠ったあと、その子もキミの枕を使って寝ていたんだよ」
🏹「そしたら無意識に避けたキミがワタシの方に寄ってきてくれて……嬉しかったなあ、そういうことって滅多にないからさ」
……?
♊️「お前それは……私の話じゃないのか?」
🏹「そうだけど?」
あの会話の流れで私の話になるか……?
お前の姿を見かけなくなって、半月ほど経った。今更だが伝えるタイミングを逃していた言葉を今ここで伝える。私は今でもダメージジーンズで笑っている。……なんの話かだって?最近お前が書いた……ああいや、4ヶ月近く前の話は最近とは言わないのか。この体の時間感覚は未だに慣れないな……。
いや、何度考えても物凄いセンスだと思う。お前くらいじゃないのか、あんな例えが思いつくのは。私は昔からお前のそういうセンスや言葉選びを気に入っている。たまに異様に目を惹く文字を綴る奴がいるだろう、私にとってのそれがお前だ。
……そんなお前の言葉が見られなくなったのにはどこか物足りなさすら覚えるが、気が向いたときにでもまた戻ってくるといい。何日、何百、何千年くらいまでなら待っていてやる。そのときには、心からのアンコールを捧げようじゃないか。
……と、ここまで書いていたんだ。なのに割とあっさり渡されてしまったその鍵に、私が思ったことはふたつ。「私はだいぶ恥ずかしいことをしてしまったんじゃないのか」「パスワードまでセンスがいいな……」以上だ。
いや、もちろんこの言葉たちをお前に伝えずに終わるという選択肢もなかったわけではない。……が、常日頃顔を合わせてる相手に面と向かって「尊敬している」と改めて伝える機会もそうないだろう。私とお前ほどの付き合いにもなれば尚のことな。ならばとこうしてそのまま残すことに決めたわけだ。恥だの何だの、それこそお前の前では今更だしな。
ところで、もう手遅れだとは思うんだがお前は今すぐこの日記を読むのをやめた方がいい。いややめてくれ。大したことは書いていないが、私がお前の恋人の立場だったら間違いなく読むのをやめさせる。読むな、閉じろ、記憶から消せ。そして新鮮な気持ちで楽しんでくれ。気が向いたときにでも顔を合わせてくれたら、そうだな……多少のことは手伝ってやらなくもないぞ?……なに、お呼びでない?手は足りている?お前……あれだけ期待させておいて……。ハァ、これだから厭なんだ……。
ワタシたちにしては、ここ最近は慌ただしい日々を送っていてね。思うようにエメトセルクとの時間が取れない、もどかしい毎日だった。ワタシの方は、先日認可された新型の創造生物にかかりきりで。エメトセルクも、少々厄介な区域の監視を請け負ったらしくてなかなか休まる時間もない。丸一日顔を合わせない……なんてことにはさすがにならなかったけど、会ったとしても本当に顔を見る程度。恋人同士としてはもう少し触れ合う時間が欲しくなるところだ。これがたとえばアゼムだったら何日何ヶ月何十年会えなくとも、便りがないのが良い便り……だとか笑って言えちゃうんだろうけどね。
こういう心持ちでいるのはワタシの方ばかりかと思っていたのだけれど、どうやらエメトセルクもそれなりに想いを募らせてくれていたみたいだ。フフフ、それを知れただけでも収穫にはなったかもしれない。お互いに限界だという合意に達して、ワタシたちはふたりの時間を作ることにした。……まあ、あとで埋め合わせが必要なくらいには結構強引に作った時間なんだけど、うちの職員はみんな優秀だからね。ワタシひとり不在な程度、なんということもないさ。
しばらくぶりにエメトセルクとふたりだけで過ごした。いわゆる恋人同士としての触れ合いは、エメトセルクが恥ずかしがってしまうんじゃないかと思ったけど、フフ……今回はワタシの熱意に押し負けた感じかな?
互いに忙しくて擦れ違っていたとき、険悪……とはいかないまでも、なんとなく距離を感じるような気がしていた。気持ちが伝わりにくい日……っていうのはどうしてもあるもので。多忙が重なるとなおのこと厄介だ。エメトセルクは普段からあんな感じだからたいして変わりはないように見えるけど、調子が悪いときは喜怒哀楽を極端に内側へ押し込めてしまいがちなんだよね。彼の想いを察したり彼に愛情を伝えたり……ワタシまでそういう大切なことが難しくなる。波長が噛み合わないこの感じ、あまり長く味わいたくはないものだよね。
触れ合うことで満たされる、だなんて……フフ、ずいぶん原始的にも思える。だけど実際のところ、それで格段に心持ちが安定しているのだから捨てたものでもないのかも。ずれていたものが調律されていくような、しっくりくる感じ……というのかな。お互いを確かめ合う時間がワタシたちには必要だったみたいだ。
今後もしばらく忙しい時期は続いていくだろうけど、ワタシは隣に彼がいてくれるだけで何より幸せだなって思うよ。
エメトセルクって、一緒に仕事をしている職員からの評判が本当にいいんだよね。この前、議事堂で彼と働いている市民と話す機会があったのだけれど、フフフ……かなりエメトセルクのファンになってたねあれは。いっそエメトセルク信者といってもいいかもしれない。
彼、はじめはちょっと威圧的だし気難しそうでとっつきにくい印象をもたれがちなんだけど、実際近くで過ごしていると仕事熱心で責任感が強くて、とても信用できる存在なんだよね。老若男女問わず、彼を評価しているのも納得だ。
先日、難航していたイデアの審査があってさ。いわゆる大物ってやつだね。緻密なイデアだったから色々と問題が重なっちゃって、なかなか展開の段取りに移れない。まぁワタシはわりと楽観的に捉えていたんだけど、さてどうしようかと考えていたわけだ。
一向に着手できない状況を話すと、エメトセルクがとても心配してくれてさ。「本当に大丈夫なんだろうな?」なんて真剣な口調で言うんだ。時間の感覚なんてのんびりと捉える市民が大半だというのに、彼ときたら時間単位で綿密なスケジュールを見積もって提示してくるんだよ。フフ、そこまでしてくれるものだから、さすがにこちらでも頑張らないとって雰囲気になってね。ワタシの方でもいろいろと動いてみて、なんとか最終的な審査ができる段階まで辿り着くことができた。
……その2日後だ、今回登録したイデアが実際に入り用になったのは。エメトセルクがあのとき発破をかけてくれなければ、この件の対応にはちょっと間に合わなかっただろうね。フフフ……対応にあたった十四人委員会の中にはエメトセルクも含まれていたから、どうにか間に合って本当に良かった。こういう判断と行動力……それに、周りを動かす力というのかな、エメトセルクは間違うことがない。少なくともワタシはそう信頼している。
フフフ、こうした彼の仕事ぶりを見るたびに、ワタシはいつも思うんだ。やっぱりあの座には彼こそが相応しいって。改めて、あのときはありがとう、助かったよ親愛なるエメトセルク!