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┗1176.緞帳裏の星(264-268/278)

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268 :エメトセルク
2024/09/18(水) 14:40




いわゆる幼馴染と呼ばれる関係性にあるヒュトロダエウスと私の付き合いはそれなりになる。では恋人としてはどうかというと、これもまあ短くはない。私たちくらいの年齢にしては長い方だろう。なにせ幼いころに知り合ってから今日までの時間……のその半分、とまではいかないが、半分近くを恋人として過ごしている。
そうなってくると、記念日という存在も薄れてきそうなものだが……何百回繰り返したところで私たちにとって特別な日であることに変わりはないらしい。
私たちには記念日がふたつある。付き合った日とヒュトロダエウスに特別なものをもらった日だ。前者はまだ少し先だが、もう片方の記念日を先日迎えた。かといって何をしたというわけでもないんだが……休みを合わせてふたりで食事をしたくらいか?まあつまりいつもと変わらずに過ごしたわけだ。特別な日ではあっても、毎回特別に過ごしているわけではない。そもそも1年なんかあっという間に過ぎるからな……2年単位くらいで祝う方がいいのかもしれない。

ヒュトロダエウスにもらった特別なもの、というのは。婚姻関係を結べない私たちが誰に見せるでもなく、ただ確かな証としてヒュトロダエウスが用意してくれた石だ。とても硬く、炭素だけでできているらしい。透明な石なんだが、光の当たる角度によって虹色になるところが私は気に入っている。よくこんな美しい石を見つけてきたな……眼がいいからなんだろうが。
が、この石。実はヒュトロダエウスが密かに用意していたにもかかわらず、私がうっかり渡される前に見つけてしまうという事故を起こしている。いや、石そのものを見つけたわけではないんだが……。ヒュトロダエウスの日記というか、メモというか……が置いてあって、何気なく見たらそういう内容が走り書きされていてだな……。本人が少し席を外している間に見てしまったものだから、戻ってくる前に慌ててもとに戻した記憶がある。見てはいけないものを見てしまった、という焦りからわざわざ魔法を使ってまでメモを完全に触る前の角度に戻したくらいには動揺した。
メモに書かれていたヒュトロダエウスの予定によると、渡すのはまだ数日先らしい。……黙っていた方がいいのだろうか……。悩んだ挙句、結局隠し事をするのは向いていない性分なものでその日のうちに暴露した。……向いていないのは私だけではなかったようだがな。

急遽渡される日が変わったその石は、今も私の手元で輝いている。
この石を贈ってくれたときと変わらない愛情を、今もなお注ぎ続けてくれている変わり者の男へ。どうかこれからも傍にいてほしい。




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267 :ヒュトロダエウス
2024/09/16(月) 06:41



このあいだ、海に立ち寄ったんだ。しばらく忙しくて出かけられなかったんだけど、エメトセルクと少しだけ遠くまで散歩をしてきたよ。いわゆるデートってやつかな。陽の光が波に反射して綺麗だった。やっぱり海辺に立つ彼を見るのが好きだなぁ。
……実はその海に行くことはワタシの思いつきで急遽決まったんだ。それ以外はエメトセルクが計画を練っていてくれてね。
彼はずっとこの日を楽しみにしていてくれたみたいだった。一見そうは見えないと思うけどね。朝からなんだかそわそわした様子なのが微笑ましくて笑っちゃった。楽しみにしていたのはもちろん彼だけじゃない。なにしろ、日程を調整してふたりで合わせた休みだったからね。

「次の休みの予定が決まったぞ」
その日の数日前、エメトセルクがどこか誇らしげにワタシにそう言ってきた。彼ってこういうときにプランを練るのが好きみたいで、いつもいろいろ調べて行き先を選出してくれるんだ。どこへ行って何をするかだけじゃなくて、いかに効率よく各箇所を回るか、移動手段や滞在時間を計算してさ。それで、うまく調整して完璧なプランを練り上げることに人知れず情熱を捧げているらしい。フフフ……完成した計画を告げるときの自信満々な表情、かわいいんだよね。ワタシ、エメトセルクのドヤ顔が世界一好きな自信があるよ。
計画を告げるといっても、具体的な内容は当日まで教えてくれないんだ。当日……というか、本当に直前まで黙っていることが多いかな。辿り着いてようやくここが目的地だったんだ、ってわかるみたいな。エメトセルクに全面的に任せてるからなにも問題はないし、ワタシもミステリーツアー的な感じで楽しめているよ。そもそもプランに口出しされるのがあんまり好きじゃないというか、自分の完璧な計画に水を差されるのを良しとしないタイプだからね。彼を尊重して、ワタシも楽しめているんだから言うことなしさ。

もっとずっと前から、遠出のときの計画を立てるのは彼がすすんでやってくれていたんだ。最初のころは「本当に私が全部決めていいのか?私の行きたい場所にばかり行くことになるが……お前だってやりたいことがあるだろう?」なんて話もしていたっけ。「キミの行きたい場所へワタシも行きたいのさ」ってワタシが毎回同じ返事をするものだから、最終的には彼も納得せざるを得なかったらしい。
明確な目的を持って旅をするエメトセルクと違って、ワタシはどこへ行っても基本的に楽しめてしまうんだよね。だったら、エメトセルクの行きたい場所へ行って、彼の興味のあることを共有したい。もっというと、彼が興味を満たして楽しんでいる姿を隣で見ていたい……っていうのが、ワタシにとって旅の最たる目的になるわけだ。

……と、ここまで考えてふと思い至ったんだけど、もしかして彼なりにワタシの楽しさを引き出そうとしてくれているのが、あのミステリーツアー的なプランの提示の方法だったりするのかな。たしかに「何が起こるんだろう?」っていう期待感は、行き先に頓着がなくても魅力にはなるものだ。言われてみればワタシってそういう状況、けっこう好きだなぁ。
……エメトセルクがそこまで考えてくれているのだとしたら、もしかするとワタシは思ってる以上に彼に愛されているのかもしれない。
「いや、お前が極めて都合よく解釈しているだけだが?」
ってバッサリ言われる可能性もあるんだけどね!




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266 :ヒュトロダエウス
2024/09/06(金) 07:08



ふと見上げた夜の空。高くそびえる塔の合間から見えた星々が綺麗でね。アーモロートの周辺でも遮るものの少ない広場までひとりで足を伸ばして、しばらく眺めていたんだ。十四人委員会の会議があってエメトセルクは不在だったのが残念だったけどね。
星空を見上げるとき、ワタシの隣には彼がいるのが常だった。思い返せば幼年のころから、よく連れ立って星を見に行っていたなぁ。アーモロートの街明かりから少しだけ遠ざかって、夜の暗さがはっきりわかるところを探してね。あるときは少し深い森の中まで入ろうとしたんだけど、その闇の中になにが潜んでいるのか、幼いながらふたりとも視えてしまって、大事になる前にあわてて引き返したこともあったっけ。それでもめげずに色々な場所へ出かけていって、星がよく見える場所を探したものだ。

綺麗な景色や面白いものを見ると真っ先に彼のことを考えてしまう。きっとワタシよりも心を動かしてくれるのは彼の方だろうから。彼がどんなふうに見て、どんな思いを抱くのか、それを隣で感じられることがワタシの歓びなのだろうと、ひとりのときはよりいっそう強く実感するよ。

昨日の夜空が綺麗だったって話を、翌日エメトセルクに話したんだ。キミにも見てほしかったなってさ。するとエメトセルクは「私もそうだ」なんて言うんだよ。
明け方に目が覚めると、窓の外に美しい朝焼けが見えたんだって。夜が明けきるまで窓辺でそれを眺めていたらしい。それは素晴らしい時間だったんだろうね。
「こういう景色を見たとき、一番に知らせたいと思うのはお前だ」
そう彼は続けた。……フフフ、エメトセルクにしてはずいぶんストレートな愛情表現じゃない?ワタシが笑うと、至極鬱陶しそうな顔をしていたよ。

朝焼けも星空も、きっとまたふたりで見よう。彼が隣にいるということが、この星の景色を幾倍にも美しくして眼に映すのだろう。




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265 :ヒュトロダエウス
2024/08/25(日) 12:37



彼の横顔をしみじみと眺めてみる。
髪色よりも少しだけ色濃いまつ毛が光に透けている。奥にある瞳はワタシの好きな金色で、ちょっと重たげな二重瞼がその眼差しを強くしている。……あまりじっと観察していると睨まれてしまうんだけどね。フフフ、それで怯むワタシではないのさ。むしろ目が合って嬉しいくらいだ。エメトセルクは露骨に厭な顔をして、盛大にため息をつく。そういうところも含めて、ああ愛しいなぁって思うんだ。

かなり前の話になるかな、彼とワタシはアーモロートから遠く離れた地でエーテルの調査をしていた。例によってエメトセルクの座の仕事にワタシが同行する形でね。見晴らしのいい丘で、ちょうど日暮れの時刻だった。沈んでいく夕陽をしばらくふたりで眺めていたんだよ。……まあ、ワタシの方は夕陽を見ているエメトセルクを見ていたっていうのが実際のところだけれど。
暮れていく空が天上の深青色から橙を経て赤く変わっていくのも、熔けた金属みたいな陽の色ももちろんきれいだったけど、金の光に照らされた彼がワタシにはなによりも美しく視えた。丘の上から見える景色に見入っているというよりも、それを見ながら現在進行中の調査に関して思案に耽っている……という感じの横顔だ。真面目な彼が熱心に座の仕事に取り組んでいるところを見ると、やっぱりあの選択は正しく星の為になるものだったと何度でも確信する。
彼が、なんていうのかな……星の息吹が感じられるような場所に立つ姿を見るのがワタシは好きなんだ。森や海や川、星々の輝く空も朝焼けも、彼がいるその光景が殊更美しく見えるのは、彼が星を愛し、星に愛されている証だと思えてならないんだよ。
……ああ、もちろん、ワタシが彼を愛しているからというのも美しさの理由のひとつに間違いはないだろうね。


……ところで、これを書いているあいだ、例の創造生物くんがワタシの髪紐にじゃれついてきて笑っちゃった。三つ編みで遊ぶのってそんなに白熱するほど楽しいのかな?……フフフ、かわいいからまぁいいか。こういうのが甘いって、エメトセルクに言われちゃうんだろうなぁ。




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264 :ヒュトロダエウス
2024/08/25(日) 06:51



性根以外はすこぶる器用な冥王様にも苦手なことは存在する。料理を作ることだ。まぁ、苦手というだけで作れないわけではないんだけどね。実際、彼の作るものは間違いなく美味しい。何度か食べたことのあるワタシが保証するよ。彼いわく「私が作ると何かの実験のようになる……」ってことらしい。フフフ……エメトセルクは真面目だからなぁ。
創造物のように完璧なイデアがあるなら創り出すことは容易だろう。だけど、料理のレシピとなると結構曖昧なものも多いんだよね。慣れてしまえば目分量でなんとなく作れちゃうとしても、エメトセルクみたいなタイプはそうはいかない。レシピに記載されているとおりに、材料を寸分の狂いなく計測して、指定の形に切り揃え、時間ぴったり火にかける……。出来上がったものはお手本通りの品になったとしても、はたしてそれが彼の好みの味とも限らない。……フフ、これではちっとも楽しくないし、そもそも食物からのエーテル補給をさほど必要としない彼からしてみれば、遠ざかるのも無理からぬ話だ。

ワタシの方はというと、料理するのはわりと好きなんだ。エメトセルクと違って、正確なレシピがなくてもなんとなく勘で調理できてしまうタイプだから彼のような苦労はしないしね!
……先に書いたとおり、エメトセルクって好みの味付けがはっきりしていてね。長いこと隣にいるとなんとなくわかる。これはあんまり好みじゃなさそうだとか、こういう味にしたら好きかも……とかね。用意された食事から彼の好みに合うものを探すのもいいけど、ちょっとしたものなら作ってしまった方が早い。そういうのが積み重なって自然とエメトセルクの好む食事を作れるようになっていたのさ。自分のためなら全然料理なんてしないのにね。エメトセルクに食事を用意するのはワタシの個人的な欲求を満たすためでもあるんだけど、その食事で彼が満足してくれるのならこれほど嬉しいことはない。近頃は彼もワタシの作るものを信用してくれているようで、よそで食べたものなんかも「……この前食べたものがまた食べたいんだが、お前なら再現できるだろう」なんてリクエストしてくれるようになった。フフ、光栄なことだよね。
趣味程度に作っているだけだから、そんなに頻繁に調理をしているわけではないんだけど、また作らせてほしいな。リクエストがあれば喜んでお応えするよ。




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