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┗1233.掌底と憧憬(28-32/42)
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32 :
灰_谷_竜_胆(東 ̄リ ̄ベ)
2023/04/30(日) 01:07
「そういう意味で好きなんだけど」と兄貴に言われたのは今から3年と数ヶ月前のことだ。そういう意味ってどういう意味なの、とは聞かずとも表情で分かった……んだけども、マァ〜〜〜ジでぇぇ???というのが言われた直後の率直な感想。いや、告られる前から薄々勘付いてはいたんだけどさぁ。でも、何つうか、なんでオレ?だって兄貴はモテるじゃん。顔良しスタイル良し性格悪し。最後の1つが致命的だけど、前2つで相殺どころか釣りが来る。喧嘩だってバカみたいに強いし、六本木の灰谷兄弟っつったら大抵の奴は真っ先にあっちの顔を思い浮かべる。つーか、そう、兄弟なんだよ。弟なんだよ、オレは。業が深すぎるってか、よりにもよって地獄行き直行便みたいな相手に恋しなくたっていいんじゃねえの?
なんでオレが好きなの、と聞いたら「だってオマエ可愛いじゃん」と即答された。おかしいな、ろくに通ってない学校で受けた視力検査ではオレと違って確か1.5とか叩き出してたはずなんだけど、目ェ腐ってんのかな。本当にオレが可愛く見えてんならそれは間違いなく幻覚だ。変なキノコでも食ったのかもしれないし、放っときゃその内正気に戻るだろ、と思ったけど告白以来兄貴の幻覚はどんどん酷くなっていった。そうして「竜胆は可愛いね」と言われ続けて耳にタコができかけた頃にやっと気付いた。これ、オレ自身が変なキノコなんだわ。我ながら何言ってんだって話だけど、こうとしか考えられない。何かよく分かんねえけど兄貴はオレのせいで弟が可愛いっていう幻覚をキメてて、オレが傍にいる限りきっと永遠にそれが続く。そんなのあんまりじゃねえか。オレのせいで実の弟に惚れるなんていう業を背負わせてしまうなら、オレもそれを半分引き受けなきゃいけない。離れるなんて選択肢は間違っても有り得ない、だって自分達は何もかもを分け合って歩いてきたんだから。
…と、決意したのが3年前の今日。その日からずっと、兄弟と恋人の肩書を並べて生きてる。まあ、雑な理屈をぶん回してみたところで、要は兄貴だって俺にとっては変なキノコだよって話。だって、初めて好きだと言われたあの日、「同じ気持ちになるまで待っててくれ」と薄い背中に縋った時点でオレはとっくに勝負に負けてたんだろう。
3年間ずっと覚めない幻を見続けてくれてありがとう、兄貴。4年目もどうぞよろしく。愛してるよ。
(2021.10.13)
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31 :
灰_谷_竜_胆(東 ̄リ ̄ベ)
2023/04/30(日) 01:06
喧嘩を売る相手を間違えた。とは言っても実際に喧嘩をしたわけじゃなくて、ガラス扉に利き手の手首を思い切りぶつけただけの話だけど。
大抵の生き物相手なら早々負ける気はしないもののさすがの六本木のカリスマ(笑)も重厚な無機物相手には歯が立たなかったようで、オレの手首にはぐるんぐるんに包帯が巻かれている。というか病院での不良への視線が痛かった。何で整形外科ってジジィとババァしかいねえの?ダウンタイム中の美女とかいるんじゃねえのかよ。それは美容整形外科か。…とにかく、まあ、骨に異常はなかったけど暫く喧嘩だの抗争だのはお預け。どっかから情報聞き付けたバカが夜討ちをかけてきても片手と両足使えりゃ負けねーし問題はない。日常生活にもそこまで支障はないし、案外何とかなるモンだ。
ただ、オレの手首を見た兄貴の反応は見ものだった。「ぇ……え?」と狼狽えてから「な、なんか果物とか食う?」とか言うから吹き出しただろうが。病人かよ。面白かったから特に突っ込まずに「タッケェ梨が食いたい」つったら頷いてそのまま出て行ったけど。…さて、兄貴が正気に戻ってなければそろそろ高級な梨を抱えて帰ってくるはず。手が痛くて動かせねえからさぁ、剥いて食べさせてよ、兄ちゃん。可愛い弟が甘えてやるんだから嬉しいだろ?
(2021.10.03)
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30 :
灰_谷_竜_胆(東 ̄リ ̄ベ)
2023/04/30(日) 01:05
冷血、血が通っていない、血も涙もない。兄への評価のほんの一部だ。テメェの血は何色だと逆上する奴に向かって「赤に決まってんじゃん、バカなの?」と真顔で煽ってたこともある程だけど、冷徹そうに見えて本当は懐に入れた人間には優しい男だったりする。もっとも、その懐にはオレしか入ってねえんだけど。
見た目のせいで低体温だとも思われがちだけどそんなことも全然ない。むしろ真夏にひっつかれると暑苦しい。分かっててベタベタしてくるからそういうところもキライ。だけどもう秋だし、暑いのもそろそろ終わるし。意外と繊細だからこういう時期にはよく調子を崩すし、「オレってそんなに冷たそうに見えんのかなぁ」とか気にしてたりもするし。しょうがないから良くできた弟が抱き締めてあげる。オレはこう見えて冷え性だし、二人合わせて丁度いいんじゃね。兄貴が優しいって知ってんのはオレだけでいいの。どうせ兄貴だって明日になったら全部忘れて、笑いながら雑魚を蹴散らしてるんだろ。
(2021.09.25)
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29 :
真_人(呪 ̄術 ̄廻 ̄戦)
2023/04/30(日) 01:01
一度触れたことのあるその魂は、熱いと感じるほどに温かかった。
肉体は魂の器にすぎない。ならばなぜ、特徴的な形状の眼鏡の奥、薄い色をした2つの瞳はあんなに冷え切っていたのか。──答えは簡単だ、取り繕っていたからだ。
理性と呪力で雁字搦めに防御された向こう側、血潮にも似たあの本質に再び触れて暴きたいと思うこの衝動を一体何と呼ぶのか。それは他の人間を1522回改造した今でもまだ、分からない。
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28 :
真_人(呪 ̄術 ̄廻 ̄戦)
2023/04/30(日) 01:01
七海が寝込んだ。「この仕事が終わったら絶対にクソほど休んでやります」と言っていたのはフラグというものに他ならなかったわけだ。良かったね、待ち望んでた休暇じゃん。布団以外のどこにも行くことは叶わないけど。
それにしても自分自身のことを正しく認識してないのは困る。「ちょっと熱があるだけです」とか言って普通に動こうとしてたけど、世間ではそれを体調不良って言うんじゃないの?呪霊に分かることが人間様に分からないの?もしかして熱のせいで筋肉だけじゃなくて脳味噌までゴリラになったのか?
…俺の術式を使えばあんたの体くらいあっという間に全快にしてやれるけど。でもあんたの魂はそのままの形が一番綺麗なんだ。洗練されてるのにどこか泥臭くて、飽きない。だから早く自力で何とかして元気になって。熱に魘されてる顔なんて見ててもつまらないんだよ。
お休み、七海。心配しなくてもずっと傍にいてやるから。
(2021.09.09)
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