あの人にとってのおれと、おれにとってあの人と。
連絡を断つ前、そこに大きな差があるように感じて、その差に打ちひしがれて幕を閉じた。
でも今考えれば、おれとあの人はいつだって同じ歩幅で、同じ方向を向いていたのだ。
今もそう。
なにをするにも心地の善い距離感。
無償の愛がここにあるんだと思う。おれにもあの人にも。
お互い一番の愛はもう他所にある。
それでも心のどこかにあの人への気持ちがあって、誰かに向ける愛の根底にはあの人に愛された自信がいつも根付いている。
なんて幸せなことなんだろうか。
だれに理解されなくても、あの人との関係がいつもおれを正しい方へと導いてくれる。
6年。それだけの月日が経とうとしてる。
コラさんから手紙が届いた。
透過 生存if
一年越しのように思う。あの人の優しさを無下にしたのはおれだというのに。あの人は未だおれに愛を与えてくれる。
おれにとってのあの人はとても大事なものだった。
ただ、あの人の生き方と向き合うことが恐ろしかったんだ。
少し気まずそうに、それでも慈しみを込めた文字で書き募られた文字が酷く愛おしくて……おれはまたあの人の優しさに触れてもいいのだろうか。
お互いもうきっと愛を謳うことはしないだろうけれど、それでもあの人と共に生きてきた時間は決して他者から邪魔されるものではない。これからもそう在り続けるに違いない。
あの人がおれを大切に思ってくれることに偽りなどないのだから。
それが欲を孕まない愛だとしても、寄り添える相手であることには違いない。誰とでもないコラさんとだからこそ築いてきた歴史がある。あの人を愛した過去がある。
おれはそれをもう恐れないでいたい。
脇役の語るお話