遥と彼方のあいだ
のちへん
甘さが足りない
のちへん
スチールレイン
恋情の淡い初色
「お前のことが好きすぎて、毎日貪欲になって、満たされない」たぶんあいつが言いたかったのは単に惚気で。
ただ「満たされない」なんて一言がどうしても引っかかって死ぬほど落ち込んだ。おれのネガティブの賜物だな。クルーには絶対見せられねェ姿だ。
落ち込んだ、ってのはそんなことを言うあいつにではなく、「満たしてやれなかったおれ」に対する自己嫌悪だ。
でもあいつにそんな意図はそもそも全くなくて、おれが勝手に蹴躓いただけなんだが……。
愛おしいって気持ちが両手から零れ落ちて、流れ出るそれすら相手に届くまでに乾いちまう感覚が抜けない。
おれには愛情を真っ当に届けることが出来ないようで、同じ轍を何度踏めば気が済むのか。シャチはおれに「経験しないとアンタは理解しない」と言うが、経験したところでなんの身にもなっていないんだろう。
不幸せをあいつに与えることだけはしたくない。
懺悔なんだろうか。それはわからないけれど、……そうだな。もう二度と「おれじゃなくてもいい」なんて思わないようにすることだけが、せめてもの償いかもしれない。