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スレ一覧
┗1406.Chick flick(8-12/32)

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12 :トラファルガー・ロー
2023/09/20(水) 14:48

ただいま



連日、捕物やその準備なんかでバタつく日が多く締めは船を上げての宴がしたいとどこのだれに看過されたのか騒ぎ始めたクルー達のためにそこそこデカイ宿を貸し切ってやった。おれも流石に顔を出さないわけにもいかず。
とりあえず遅くなること、メシはいらないことをあいつに伝えると気難しい顔をして「複雑…」と漏らした。その時は世話を焼かなくていい気楽さとメシを作らないでいいことに対しての矜恃の狭間かと思っていたのだが…そうではなかったらしい。
宴の前の晩、おれもあいつも疲労と睡魔に襲われる中

もっと快く受け入れるつもりだったのに、出来なかった


だと。
あぁ、複雑な気持ちってそういうことかと愛おしさが止まらずいつもより温かい身体をきつく抱き締めた。いつまでも背中を見送るのが惜しい相手でいたい。


透過とながいくらい

捕物が終わり駆け足で自船に戻る。
煙草も吸わず、大人しくおれの部屋で過ごしていたあいつが俺の姿を見つけて目を細める。
卵と、ソーセージとベーコン。出る前に使いに頼まれていた物は早々に食糧庫にいれた。母親に褒められるのを待つガキのようにおれはあいつに近づきそれだけを伝えて、称揚の声を待った。けれど次いで聞こえたのは茶化すような応酬ではなく、少し呆れた、それでも慈愛に満ちた穏やかな声だった。
「その前に言うことがあるだろう」
暫く考えて漸く頭に浮かんだ言葉をおれは悠久の中のような一間できつく噛み締めた。
そう、「ただいま」の一言を伝えることが酷く難しかった。
言いたくないわけでも、そのあとの常句を聞きたくないわけでもない。……恐ろしかったんだ。見ないようにしていた。

好きだと伝え合う前、あいつは「おはよう」と「おやすみ」は絶対に言いたい。と息巻いていた。そんな姿を愛おしく思ったのも懐かしいが、事はそこではなく"毎日の約束"みたいなものをお互いに作ることにおれは尻込みしがちだ。
今だって寝る折の言葉に囚われているのはおれの方。
眠い眼を擦るあいつにおやすみを尋ねてしまう。
あいつが起臥の言葉を掛けるのだと自分自身にルールを設けるのとは随分と違う、おれの中の弱さの指針。

「ただいま」「おかえり」、確かにおれの帰る場所はあいつの元だしあいつに迎え入れられる幸せに代わるものなどないだろう。ただ、それが、日常になることが怖い。
いつか消える「おかえり」をおれは受け入れることが出来るだろうか。いつか消える「ただいま」をおれは、………許せるんだろうか。

そんなことが一瞬の間に頭の中を駆け巡った。
目の前に立つ体を抱き締めて、深呼吸をする。一度口にすればおれは求めてしまう。たった一言がこんなにもおれを縛っていたなんて改めて気づいてしまった。
本当に細く、……違う意味でガキのように見えただろう。
零した「ただいま」を、あいつは笑って受け取ってくれた。ポンコツだなァ、がんばった、えらい。と抱き締めながら。

あいつはおれが戸惑っていたことを感じて努めて優しくしてくれたんだろう。その優しさにいつも救われている。

じんわりと胸に広がる「おかえり」の声を忘れたくないと思った。





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11 :トラファルガー・ロー
2023/09/19(火) 00:58

3はあとで


突然饒舌になるんじゃねェッ!


そうキレたあいつの可愛さたるや。
一から十までどれだけ好いているか説明した(実際は七割程度)ら、説明させたのは自分のクセにじたばた暴れ回って忙しねェ。時差で照れて死にたくなってるのは可愛かったから良しとする。

おれには分からせたい欲みたいなものがずっとあって、それの根本はきっと今まで散々言われた「何を考えてるか分からない」だとか「気持ちが伝わってこない」だとか…の的を得すぎてる言葉たちのせいなんだろう。 しかし、昨日あいつに「わからせたいってずっと言ってる」と言われてハッとした。そんなに口にだしていたのか。
一から十まで説明したいのはきっとおれの方だったんだろう。
分かって欲しい、とか伝わって欲しいとか。出来ることなら、おれの気持ちを相違なく伝えたい、複製して貼り付けてやりたい、と本気で思っている。

サニー号に久しぶりに足を踏み入れた時、メシの炊ける匂いとキッチンに差し込む強い西日に目が眩んだのを覚えている。
帰ってきちまった、と心のどこかで悔いながらもおれなんかにメシを嬉しそうに振る舞う姿や仲間たちとバカやってる姿にどんどんと惹かれていった。
それでも暫くあいつの気持ちを躱していたのは、海の中で大切なものを持つ恐怖のようなものだろうか。あいしてると笑って消えたあの人のように…手放すつもりなど毛頭ないのに、手放す覚悟ばかりをしていた気がする。あの頃は。

手を伸ばした先で手に入れた生暖かい心臓を握り潰さないようにおれは必死なのかもしれない。



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10 :トラファルガー・ロー
2023/09/17(日) 09:05

ひな



完ペキなニンゲンは存在しない。
なんてもんは建前で、ニンゲン誰しも存在しないと分かっていても"それ"を演じて生きてるもんだと思っている。自分を割り切って受け入れるのは恐ろしい。特に好いたやつの前で曝け出すのは。
おれもあいつも素直にダメなところも情けないところも全て見せているかと言われるとそうじゃないだろう。お互い強がりで、ひとりで生きていくことに慣れすぎているから。どこかでボタンを掛け違えてしまわないかの不安は付きまとう。
それでも愛が、あいつを好きな気持ちが伝わっていることが嬉しくて、建前がずるずると剥がれていく気がする。
真っさらでもいいかなんて。下手くそでもいいかって。
あいしてる、なんて。おれがあの人から受け取った言葉をあいつに与えられていることが酷く愛おしい。

愛してるって言うと、しってる。って返ってくる。
あいつは知らないだろう。「知ってる」ことでおれがどれだけ…泣きたくなるほどに嬉しい気持ちを抱えるか。
……これはいつかちゃんと口で伝えないとな。


色のある話

はじめてあいつをおれの船の、おれの部屋で抱いた。
もともと海のうえであいつをモノにした日には連れ出してどこか遠くに囲ってしまう魂胆だったんだが……まだ海でやりたいことが尽きないうちは常に潮に揺れる狭い船の中であいつを愛してやるつもりだ。

別に初夜でもねェクセに朝目覚めた時のあいつはいつもより照れては、少しぶっきらぼうで。そんなところが可愛くて仕方がない。疲れて寝落ちまうまでは気を抜きまくりなくせに。意識がはっきりしちまうと照れが勝るのだろう。
やだやだ、だってが止まらずにガーガーと可愛く喚く。
おれの腕の中にいる時は外聞もなくあまく鳴いていると言うのに、いざなにが恥ずかしいのか分からないが、あいつが照れて顔を隠してる姿がアホで可愛いからもう少しは抱かれることに慣れないで欲しいもんだ。




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9 :トラファルガー・ロー
2023/09/15(金) 06:42

みたらし



昨日は紆余曲折の末、あいつが鼻血を出した。あの男の身体機能は格段に向上したと聞いているが……鼻腔内の血管の弱さはなんなんだ。今回のは興奮による血管の膨張ではなく、打撲による裂傷。鼻にも覇気を纏え。怪我をするな。
……しかし、血を流しながら笑ってんのには思わずグッときた。こればかりは心配する必要のなさからくる視覚的ダメージによるものだろう。普通の人間が血を流してりゃ心配が勝るのに、あいつの流す血は素直に興奮材料の一端になり得るってのは我ながら面白く感じた。(本人曰く)手足が長いおかげで至る所にぶつかったりしているのをみると呆れと同時に気をつけろと口酸っぱくなっちまう程度には怪我・欠損なんかは極力避けて欲しいのに。
医学を齧ったモンとしてあるまじきだが、鼻に残った血液くらい舐めて吸い出してやればよかった。今度知らないところで怪我したら舐めてやろうと思う。気をつけるようになるだろ。


透過と陰鬱と追記

寝床で、あいつの甘い声を聞きながらこれからの未来を見て肌を合わせる。穏やかな幸せを噛み締めては言葉を交わしている最中、ふと気になったことをあいつに尋ねた。「おれを好きになってよかったか?」と。他意なんてものはなく、あいつの口から好きになってよかった。と聞ければ穏やかに眠れる気がしただけだった。
そうするとおれの予想に反しんてあいつはおもしろくない顔をする。「過去形みたいに言うのイヤだ」だと。
ああ、おれはいつもそうだなァ。言葉選びが格段に上手くないうえに自分の自尊心を保つ為に無意識に自分を卑下する。そうすることで相手も共に落としていることに気づいていない。
今回だっておれがおれである為に、愛されてるという言葉を直接聞けずに、試すように尋ねた。それがナイフの刃先を向けて渡しているという自覚もなく。
だから、あいつがそれをダメなことだとちゃんと教えてくれることが救いだと痛切に感じる。刃はヒトに向けてはいけないんだって。見捨てないでそれはダメなことなんだと教えてくれる。あいつの優しさに甘んじすぎてはいけないと思うし、おれの気持ちが伝わっている内に卑下するクセを治したい。いつか取り返しがつかなくなる前に。
染み付いた悪癖だが、あいつのそばでなら。そう願ってもいいだろうか。


2023-09-27 追記
ヒトの性質ってのはそう簡単なもんじゃなくて。
昨日も「言葉をひとりにするな」と言われた。気をつけているはずなのに、なんの進歩もねェ。情けないし、不甲斐なくて堪らない。
あいつとおれと、ふたりで歩んでるはずなのに。
ごめん。…と、根気強く諭してくれてありがとうをお前に。






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8 :トラファルガー・ロー
2023/09/13(水) 03:17

花の名



あいつが言った言葉ではっきりとおれを救ったものがある。

お前が歩いてきた大事な道だから、おれはその道に咲く花に水をあげる


今思えば多少の強がりもあるんだろうが、おれ自身摘んで燃やしたい花たちにあいつは水をやると言った。いらない雑草なら根が深くても抜いてやるとも。
おれは花を摘み取っても根を抜き忘れて痛い思いをすることが多いから、強がりだったとしてもこの花や根たちを共におれの一部だと受け入れてくれようとしたことでどれほど救われたか。
……のちのち「綺麗な花なんかじゃない全部食虫植物だった。虫だけ食わす。」ってむくれてたんだが。綺麗な花じゃないっていう割に虫を与えて結局育ててるところもアホで可愛い。
全てひっくるめて好きだと思う。

おれはあいつの道端の花に水をやれるだろうか。
その優しさがおれにあるかどうかはわからねェが、あいつの優しさにかまけて勝手に根腐れしてしまった花どもには中指立てながら除草剤でも撒いてやろう。

ベポの言った「黒足が可哀想」ってのは確かにそうかもしれねェ。おれはおれの花を育てることが当たり前だと思っていたが、実際共に歩くってのはおれも育てられる側なのか。……なるほど、確かに一理ある。



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