「古い絵日記」
31ページ目：学術メモと建築の図画。
コメント：「僕たちの考えはまるっきり一致している。何一つ欠けのない、完全なものだ」この一文は打ち消し線で消されている。「僕たちの考えは相反するものだ。矛盾からは、多くの思弁と哲学が生み出される」こちらの一文は残されている。

45ページ目　走り書きの小さな設計図が載っている。
コメント：スメールにおける建築デザインの実践。感性に従ってデザインを練る、他人がどうこうと首を突っ込むことよりも依頼人が望む形を元に自分が心から納得できるデザインを追求する。もちろん建築物としての実用性を備え、芸術性も大切にしなければならない。美しさと実用性を融合させることで、より魅力的な建築物を生み出せる。時には、他のデザイナーや建築家との交流を図らねばならないときもあるよ。アイデアの共有やフィードバック、アウトプットを受けることで、より良いデザインを膨らませられるだろうからね。最後に、自分自身の経験や観察から学び続けることも重要だろう……新しい技術やトレンドに敏感になるのも悪くない。しかし他でもないスメールの建築家として、僕を指名していただいたことを忘れず常に成長し続けて仕事に取り組むとしよう。

49ページ目 コメント：以前、髪を切ってもらったときの話なんだが僕に鋏を通しながら「カーヴェさん、頭の形がとても素晴らしいですね。マッサージしても？」と申し出てくれたことがある。なんて良いひとなんだとティナリに話したら、勝手にマッサージ代を乗せられていなくて良かったねと言われた。

52ページ目　コメント：『本当の芸術は理解されないもの。だけど芸術家として、それを理解できる人がいて欲しい』これは母さんの言葉。『彫像の核となる脆弱な一点さえ見つければ、それだけで全体は完全に打ち砕かれてしまう』
これは、僕の言葉だ。

なぜだか、彼のメレンゲドールがとてもおいしそうに見えてしまった。魔法使いにとってシュガーというひとつ間を挟んだ媒介が入っているからか、まるで血肉をそのまま味わうような……そんな気がしてならないのです。オズ様にこんなことを漏らそうものならいったいどのようなお顔をされるか予想もつかないな。私を見上げる彼の人形が、その、可愛らしくて……掌を差し出すとそのまま身を捩って登ろうとするところを思い出すだけで私は満ち足りた気持ちになるよ。普段はわりと硬そう、というのだろうか……ほろほろと崩れてしまうイメージのない、そんな彼を私の口の中へ放り込んだら、きっといずれは溶けてしまうだろう。はは、その前に歯で砕いてしまうのだろうな。目と鼻の先まで持ち上げたメレンゲドールは、賢者様のための装飾であり魔法使いたちの気持ちが込められているというのに、私はひとりよがりの欲求でとても情けない気分になった。しかし……もう一体ほど、作ってはくれないだろうかと食い下がってしまう私を彼はどのように見るのだろうか。見たいとは決して思えないのに、なぜだかとても気になって仕方がない。ああ、私はきっと彼に「自分を食べて」と西の魔法使いたちのように示されようなものなら、おそらく……ぱくりと。……彼は、笑うだろうか。

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カインのメレンゲドールを追いかけるのは楽しかった、なにせ中々に箒の扱いが上手いものだから穂先にすら触れられなかったぞ。それに私から逃げる動きはなんだか楽しそうに見えた。ははっ、思い出すと今も周りで飛んでいるようにも思えるくらいだ。……そっと優しく包み込みながら捕まえようと両手を伸ばしたけれど、万が一にもうっかり掌で砕いてしまわなくて本当に良かったな。私とカイン、ふたりが揃うとどのような動きをするのか気になるところだよ。今度、もう一度クロエたちに作ってもらうのはどうだろうか？

朝食後にオズが近づいて来たと思ったら、生クリームがどうとか若い魔法使いを危険な目に合わせないことだとか説教一歩手前みたいな、釘を刺されたような、一言伝えに来ただけみたいな変な顔たくさんしてた。……なに？ネロも砂糖が死ぬほどいるとかぼやいてたな。僕に黙って甘いものを食べきれないほど用意する話でもあるの？ねぇ、僕も入れてよ。は？カインと僕が言い出したって？知らな……また僕か。最悪。ふん……でもただの砂糖じゃなくて、星屑糖で作った生クリームなら、その話に乗ってあげてもいいよ。ほら、早く泡立てて。クロエやヒースクリフ、邪魔するならミスラも突き落としてやろうっと。僕が食べる部分には触れるなよな。