公共料金の支払いしてくれるならストーカーになってもいいよなんて言ったら本当に郵便受けをまさぐりそうだから冗談半分にしておいた。……ゴミを漁る顔のいい男って、すごく刺さる。

僕の好きな瞳に捕えられると、隠したはずの心臓が潰れて死ぬ。

ぴるぴるって耳先を震わせる赤毛が僕の指先を誘って、爪先が沈んでいく。どちらで音が聞こえているのと言うと傾いたのは人間の耳だった。髪の色と同じ毛色はとてもよく馴染んでいてまるで本当に獣になったような気さえしたんだ。僕の猫にしちゃおう、ケルベロスとどちらが強いかな。ミスラなら僕の犬の喉笛を食いちぎりそうだもの。絶対に戦わせない。あいつにはもういくつも名前をつけてる。アップルパイ、なんて名前は僕がつけた。赤くておいしい魅惑的な艶を持つアップルパイ。僕に食べられてなくなっちゃう。でもあの男は何度味わってもなくならないから、好き。

あつくって、僕もおまえも輪郭をたもてない。太陽をなくす方法がないか馬鹿みたいに真面目に考えていたら頭まで茹で上がって……今すぐプリンかゼリーの海で全身寒いくらいに涼しくなりたくて仕方なかった。オズでもからかいにいったら涼しくなるんじゃないかと思ってミスラのネックレスをぐいぐいと引っ張ったら思いのほかボロボロで千切れた。そのせいでベッドから転げ落ちた僕は趣味の悪い部屋の天井を見上げることになったのに、なぜだか本当に面白くてけたけたと笑っちゃった。両足を交互に動かしていると革靴の踵がミスラの片腕にめり込んでなんだかいい気味。そのうち靴すら奪われて宙づりになったけどおねだりしておだてたらちょうどいい空間魔法を使ってくれたから僕は涼しい部屋で昼寝もできたってわけ。眠たいのに魔力の消費量が激しい類の魔法を使うなんて、おだてられたおまえの負けだよ。ばーか。ミスラの胸板、昼寝をするのにはちょうどいい硬さなんだ。