・ホットケーキ2
後ろ向きな感情の発散方法の一つに料理がある。そういう目的の時は食うのじゃなくて、気が済むまで切ったり煮たり焼いたりすることがメインだ。
夜に部屋を抜け出して、無心でホットケーキミックスとか材料突っ込んで混ぜて、混ぜまくって。ボウルを何度も落としてダマを潰して、潰す。焼いて、ひっくり返して、皿にひっくり返してどんどん積んでいく。どんな気持ちで焼こうが焦げたりさえしなけりゃ、いい匂いといい色で焼きあがるようには上達したような気がする。
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バイト帰りにキッチンに寄ってきたあいつが完成品を見て、「願い星って叶うもんだね」って言った。そん時に初めて、今年のあいつの願い事を思い出す。ホットケーキが食べれますように。そう言っていたんだった。
僕はこれをあいつの願いを叶えるために作ったわけじゃないし、なんなら前向きな気持ちで作ってもいないのに。あいつは簡単にすごく簡単に綺麗なものに変えて、ウマそうに食うんだ。
夢見の悪い僕に対して「早く食わせて」と言われた時と似たような感覚かもしれない。上手く言葉が出なかった。
・蒸しパン
特殊設定(小人化)注意
僕が前に飲んだことのある魔法薬で、今度はあいつを胸ポケットに入れて授業を受けた。手首に巻いた輪ゴムを摘むときに舌を向くと少し開いたポケットから寝顔が見えて、めちゃくちゃ爆睡してたんだよなあいつ。まあ……トレイン先生の魔法史が子守唄に時々聞こえちまうのは僕もそうだし……。
先生とかクラスの奴らの声とか、書くときのペンの音に混じって僕にしか聞こえない距離で小さい寝息が聞こえて笑いを堪えるのが大変だった。寝心地をマシにするためにハンカチは敷いたが、それにしても随分リラックスしてやがる。
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あいつが起きたあと部屋に帰って、それから購買で買っておいた蒸しパンをやった。「小さい体でデッカいものを腹一杯食う」ってちょっとした夢だよな?どうやらチョイスが最高だったらしくて、これにしてよかったと思った。カステラと迷ったんだ。
普段口がデカいあいつが齧り付いた後に残った食べ跡がやけに小さかったのと、全身使ってデカめにちぎってくれた分が僕にとっては少し物足りないサイズだったのが面白くて笑ってしまった。それに気付いたあいつが死ぬほど驚いていたのも面白かったかな。
・特殊性癖の話
折り畳んでおく。
ナントカカントカってやつ。もう全然名前を思い出せないが、最初聞いた時はカッコいい必殺技か何かかと思った。あいつが読んでいたコミックか何かにそういう奴が現れたらしくて、僕を思い出したらしい。……は、恥ずかしい。
そのナントカカントカを否定が全然できなかったことが、それ以上に恥ずいったらなかった。だ、だって、好きなもんは仕方ないだろう……!?仕方ないはずだ。うん。
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僕だけそれがバレてんのは癪だから、ネットで調べてあいつに当て嵌まりそうなのを探そうとしたんだ。必殺技名みたいな名前が辞書みたいにズラッッッ!!って並び過ぎていて、10秒ぐらいで諦めた。そもそもあいつの好みってそんな特殊じゃないよな……。
・噛み癖
これも折り畳み。
特殊ってほどでもないとは思うけれど、それでも十分ヤベェ部類の好みだと思っている。大丈夫だ自覚はある。あいつは許してくれるけど、最終的に傷だらけにしちまったらどうしようと思って、それが怖い。愛情表現だっていくら言い張ったとしても、結局のとこ根本的には立派な暴力行為なんじゃないか?って自問自答をよく繰り返している。他人にならあいつにしか向かない欲求だから、処理に困る。僕自身を噛んで誤魔化そうとするとあいつがこら、って言うから……困る。
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夜中の理性とかがあやふやな時にふとそれを伝えてしまった(僕は何をしているんだ)。
あいつから聞いた話、世の中には愛欲って言葉があるらしい。意味を改めて考えると「わ゛ーー!!」ってなる反面、それでも暴力って言葉より100倍いいと思った。よかった、噛みたいって気持ちは暴行したいって意味じゃないんだ。……マジでよかった。
・「悲しい」
たったそれだけの面倒くさいメッセージを、見たことない喜び方で受け取ってくれていたことが未だに不思議だ。