第一部隊で第一線を走る伽羅は、帰城すると疲弊して帰ってくる。夜もぐったりとしながら夕餉を摂り、気付くと船を漕いでいて、その身を布団に連れて行く。抱きしめて撫でていると、どれだけ疲れているかが、何となく伝わってくるようになってきた。
俺に出来ることはなんだろう。
あんたは俺に癒されているというが、きっとそれじゃ足りないし、もっと────寝かせてやりたいし、休ませてやりたい。俺なんかに、何か出来るだろうか。
俺ばかりがあんたに頼って凭れてしまっているのに、俺はほとんどなにも返してやれていないのが、悔しい。これを見てあんたは首を傾げるだろうけれど、もっと、返して、手渡していきたいんだ。
あんたの安寧はここにあるのだと、……どんなに疲弊し切っても、俺は、あんたをちゃんと待っている。
だから、俺の前では気を抜いて、寝落ちたり弱音を吐いたりしてくれていい。
そばにいるから。
俺が、あんたのそばにいるから。
◆◇
※愉しくは無い話
個体差だ。
当分、任務禁止令を下された。それは何となく察していた。
そもそも俺は不具合個体だ。おそらくずっとこの手の話は一生付き纏うだろう。己がどれほど拒めど、他の同位体の様に振る舞えど、個体差は個体差なのだ。それはもう避けられないし、向き合うことから逃げることも出来ない。
他者と比較してしまうことが増えた。
嫉妬や羨望で気がおかしくなりそうな日々に、辟易と諦念ばかりだ。
俺は初期刀だった。でも今は、もう違う。
肩書きだけのただの鉄のなまくらでしかない。
それなのに彼奴ときたら、
ゆっくり、共に生きようと、手を繋いで笑う。
普段ほとんど笑わないくせに。慣れ合いも嫌がって、いつか何かを失うのが怖くて、誰の一等でなくてもいいと、舞台に上がろうとさえせずに、いつもひとりを好むくせに。
そこで分かったんだ。
あんたは、嗚呼、俺の舞台に自身を、
あんたの舞台に俺を、選んで、登って、上がってくれたんだな。上げて、くれたんだな、と。
俺があんたに出来ることは、
あんたのために生き(息)ることなんだな。
なあ、そうなんだろう。俺の唯一。
◆◇
まだ世界の色彩は取り戻せない。
それでも隣の掌の温度があれば、俺はきっと、いきてゆける。
あんたの傍で。かたわらで。
あんたのマイペースさに、笑いながら。
救われながら。