お互い100を優に越えるサーヴァントを抱えちゅうき、一人一人とのパスはそがぁ強固なもんでもないろうち侮っちょったけど、ひと度マスターが体調不良に陥ると悪影響を受ける英霊は少のうないのが現実らしい。
ほれもわしらみたいな神秘の少ない、近現代のサーヴァントともなると……いや、まぁ、あいたぁの場合はお竜が付いちゅうき、そがな心配いらんじゃろっちゅうて甘う見ちょったせいでもあるんじゃけど……。

兎に角。龍馬がへたばっちゅう。

こがな時は慌てず騒がず。医者でもないわしに出来る事らぁて無いき養生に専念して貰うに限るちや。そうと決まれば鬼の居ぬ間の洗濯洗濯♪……らぁて、パチ屋に繰り出す気にもなれず。ロビンやビリーらとポーカーする気も起きん。燕青らぁと戯れようにも、わしが上の空で怪我させそうじゃらぁて言われてしもうた…。
べこのか。ちくと食ろうた位で怪我なんぞするかえ。

気持ちまでクサクサして面白うないきわしも不貞寝しゆう事にする。……あいたぁの寝床で。

わしらが召喚された頃にはとうに地球は真っ白になっちょって、元々カルデアがそこに基地を構えちょったんじゃ、と伝え聞いてもちくともピンと来やぁせん。
すわ凱旋か？と思えども手には何の成果も勝利も携えちょらん。ほいたら奪還か？と思えど、肝心の■■■■■は人質に取られた大事な仲間っちゅうよりも、敵の本陣そのものじゃっちゅうんじゃから不思議なもんちや。

しかも意気揚々と向かった先でUターンを余儀なくされる有り様…。のう、マスター。あれ、さっきの妙な■…。どういてあいたぁをとっ捕まえゆうなり何なりせんがよ？

「そもそもあいたぁ誰ながよ？」
と、■■者そのものでしかなかった■■を追及しかけた言葉は呑まざるを得んかった…。

何ながこの空気…。

知っちゅう。この雰囲気はよう知っちゅう。
わしの知らん、聞いちょらん、他所事の話を知っちゅう者だけが共有しゆう「踏み入ったらいかん雰囲気」じゃ。ここより先に迂闊に触れたら何もかもが駄目になるっちゅう事を…わしは生前嫌っちゅう程味おうて来た。

それ以上掛ける言葉も挟む嘴も持ち合わせざったき、すごすご引っ込んでしもうたけんど…。あいたぁと立香と…、今頃どうしちょるんじゃろうか…。

夜中。わしんくは2時を前に決着したちや。
初めはケツァルコアトルにスタンバらせちょったマスターじゃけど、もしかすると憧れの存在過ぎてククルカンが緊張してしまいゆうかも知れんっちゅうてサンバサンタのケツァルコアトルに交代。その後もあの陽気な姉やんに引き寄せられる様子もなく虚しく回り続ける召喚式を眺める事数十分。
最終的にあーだこーだとボヤくテスカトリポカを囮……触媒に、風と太陽の神さんはカルデアにやって来よった。

取り返しの付かん程の痛手を被る前でえかったちや。あいたぁんくの立香にもえい報せがある事を願うとするかの。

石、石、石、石……

右を向いても左を向いても石が足りん。
作戦終了した異聞帯や特異点を浚え直すがもほうじゃけど、気が付いてみたら強化や幕間まで貯まりに貯まっちゅう有り様…。

わしんくのマスターは元々怠惰な方じゃけど、まさかこれ程とは思わざったちや。

ちくと前までわしも龍馬も単体宝具、周回らぁてお呼びが掛かるもんやないち高を括っちょったけど、今は槍のあいたぁが居りゆうきそこは遠慮無うサポートで力を貸して貰いゆう。

やれ働け、それ働け。
お竜、もう一発宝具ぜよ！

まぁ……解らいでもないけどの。
とは言え悠久の、ちゅうてもえい程の永い永い時間を経て漸く得られた安息じゃ。まずはゆっくり休ませちゃるんもえいんやないかち思いゆう。

マスターは……しょうげに大変な事を日々の変わらん暮らしの中でしゆうんじゃなと痛感する。
わしは誰かと想いを交わしゆうらぁて…、そいたぁのこれまでも、これからも、全部を纏めて背負い込む様なそがな事は…、きっと龍馬以外によう出来んがよ。

何百という英霊の一人一人を相手に絆を深め、当人でさえ隠そうとしゆう心の深い所に触れては新たな力を呼び覚まし、…まっことようやるもんじゃの一言に尽きゆう。
サーヴァントの身としては至れり尽くせりで左団扇な心地じゃけんど、マスターみたいな関わり方を誰彼無しに続けゆうがは……流石に…、恐らく…。

何の悪影響も無いらぁて安穏としちょる奴なんぞきっと居りやせんろう。わしは頭が悪いき自分に何が出来るとも思わんけんど、どうかあの真っ直ぐな在り様が……損なわれる事の無いように。
益体もなく願う位しかわしには出来んきの。