エダとは、Ъをかく遊びをしている。
どちらかがせんをかいて、どちらかがぬりつぶすって遊びだ。どんな色でかいてもいいし、どんな色をぬってもいい。かたほうがかいたら、交代して、ふたりでЪをかいていく。
毎日やってるうちに、Ъはたくさんになった。数えるのがたいへんだったから、いまЪがいくらあるかってべつの紙に残してた。……のに、もうすぐ4回目の1000っていうとき、その紙をうっかり手からすべらせて、だんろに落としてしまった。火の中でパチパチともえはじめたかとおもうと、すぐに消えていった。
すごく、かなしくて、かなしくて。おちこんだ。そんなとき、あたらしい紙にдЪって書いてくれるエダのこと、好きだなぁ、って感じるしゅん間なんだ。
そのあと、笑顔になってくれてよかった。って、ほほをつつみこんでくれるやわらかくて、やさしい手も好き。
チョコレートのはなしをしたら、エダといっしょにすることになった。
死ぬときは一緒に死んでね。
彼女が俺の目を見ていった。俺はエダのために生きているから、とうぜんだよ。そういうと、うれしそうに笑ってくれるところが、好きだ。
いつだったか、思い出せない。彼女以外のことはきおくがあいまいだ。たいき室に行くと、だれかが手紙をかいてた。きょうみなんてなかったけど、その日はエダもいなくて、たいくつだったから、なにを書いてるのかって聞いた気がする。こんやくしゃへの手紙らしかった。好きなひとなのに、どうしていっしょにいないの?ふしぎに思って問いかけると、愛しているから、いっしょにいられないんだって、そいつは話した。
なんて、うすっぺらい愛なんだろう。俺は、エダを好きだから、いっしょにいたいし、いっしょに生きていきたい。死ぬときもいっしょだ。死ぬときはいっしょに死んでって思っていてほしい。
そういえば、この間よんだ本に死体の絵がのってた。
ミイラ、っていうらしい。だきあったままの死体があるんだって。恋人かな、ふうふ、かな?死ぬときまで、だきあったままでいられたら、きっとすごくしあわせだね。エダ。
エダの目は、しおのあじがした。
たくさんの絵がとどいた。
このあいだの花火と、シュンセツショーのシャシン?だ。エダがたくさん写ってる。彼女にだまってきかいをむけていたから、すこしてれてた。
いま、ここにあのきかいがあればよかったのに。
もうすぐ、いい日がくると彼女は言った。
その日にはチョコレートをくれる、らしい?はなしを聞いたときに、じゃあ恋人の日だねとかえしたら、エダは笑ってた。
俺はなにをあげようって考えながら見つめていると、なあに?って近づいてきたから、キスをした。てれたようにすこし目をほそめて、はにかむ彼女の笑顔は、いつも、すごくまぶしい。
エダのわらった顔が好きだ。しあわせそうな顔をみてると、心臓がきゅっとする。それは俺のためだけにある、たからもの。
やっぱり、俺からあげるのはだめだって。……なんでだろう。
いつかの約束のために、書く。
まだ、ペンをにぎるのはなれない。エダがよめるか、しんぱいだ。
空にひかる、ほのおを見た。
花火とよぶらしいことは、はじめて彼女とそれをながめたときに、おぼえた。キオクノテイチャク?が、よくないらしい俺がおぼえたと言うと、いい子ね、とほめてくれるから、つたえるのは好きだ。
彼女ばかり見ていて、あのほのおがどんな色や、かたちをしていたか思いだせない。ただ、とてもうれしそうにデートの予定をかたる横顔も、お面をつける指のかたちも、ひかるふうせんを放つ両手も、空を見あげるうしろ髪も、彼女のことだけは、はっきりおぼえてる。このさき忘れることはないんだろうな。俺がエダを忘れるなんてこと、ありえないけれど。
彼女にしんぱいをかけてしまった。私がそばにいなかったから、ってくらい顔をするエダのこえは、それでもやさしい。
やわらかくて、あったかい。