気づけば俺たちの生まれかわった日もすぎて、今年のさいごの月をむかえていた。夜はすっかり冷えるようになったけど、それでも手をつないで歩けば寒さなんて感じるひまもない。昨日のデートもすごく楽しかった。夜遅く、色とりどりの明かりに照らされる彼女は、昼間とはまた違った魅力を放っていて、何度も何度もみとれてしまった。幸せそうに笑ってくれる整った横顔は、泣きそうになるくらいきれいで、嬉しくて、また大好きが増えた音がした。
これからも、たくさんデートをしよう。ここから出たら、いろんなところに行こう。今年もきみを愛してた。その次の年も、きみを愛してる。俺のたったひとりのお姫様。
彼女はきっと天才とか、すごい医者なんだと思う。どんな苦痛でも、彼女の笛の音、優しい手のひらや、あたたかい言葉に触れるだけで、たちどころに痛みがひいていくから。
昨日の夜だってそうだ。彼女の言葉ひとつひとつから、冷えていた体もじんわりあたたかくなった。すごく苦しかったのに、彼女の体からはいつも通りのいい匂いがして、気づいたら目がさめて寝顔をながめている。優しくてかわいい、俺のお姫さまは、ぐっすり眠っている。
キスの約束を思い出して不満を口にするそのくちびるには、やっぱり今日も俺からキスをするけれど、明日はきみから。だから、今日は俺の番。大好きと、おはようのキスも、ずっとだよ。
最近のエダはすごくあわただしそうにしている。きっと見えないところでも、俺の病気を治すために、やっきになってくれているんだろう。ただ、俺は、この病気がなおっても、治らなくても、きみと一緒がいい。ずっとだ。彼女をわずらわせるものすべて、なくなってしまえばいいのに。
エダ、俺たちの記念日おめでとう。
生まれ変わった日とも違う、ふたりにとって大切な思い出の日だね。あのとき、きみが見つけてくれて、ほんとうに嬉しかったんだ。きみと出会えていなかったら、今ごろなにをして生きていたんだろうって考えるだけでこわいと感じる。きみが差し伸べてくれた手を握った日のことは、いまだに鮮明に思い出すことができるよ。きみは俺の希望で、幸せで、大切でかわいい女の子で、世界でいちばん大好きなお姫様なんだ。いつも、俺のために魅力的でいてくれてありがとう。
ここにきて、これからも置かれている環境は変わっていくかもしれないけど、それでも、この手は絶対に離さない。きみとだからそう思える。ずっと、これから先も俺たちはふたりでひとつでしょう?死ぬときだって一緒だ。だからそのときは、きみに俺を食べてもらいたい。一生に一度しかできないことだって彼女はそう言っていたから。そうしたらひとつになれる。彼女の望みを俺はこの先も一生かけて叶えていくつもりだ。
もし、生まれ変わりっていうものがあるのなら、その次の人生だってきみと生きていく。次はどんな暮らしをしようか?食べてもらうまえに相談しておかなくちゃ。
あ、そうだ。前に話していたひみつ、ようやく伝えられる。喜んでくれるといいな。
愛してる、俺のエダ。
いままでも、これからも、約束は違えることなく、ずっとだ。
エダはよく、約束をしてくれる。
それは出会ったころから、毎日のささいなことや、少し先のデート、内容はさまざまだけれど、なにひとつもとりこぼさず叶えようとしてくれる。きっと約束は信頼のあかしなんだ。俺は彼女を心から信頼しているし、愛しているから、これからも俺も、たくさんの約束を彼女と続けていく。いきたいじゃなくて、いくんだって言えるのはエダのおかげだ。ありがとう。きみが大好きだよ。
エダはほんとうに優しい。
いつも彼女は、それも下心だと笑うけれど、俺がどんなにわがままを言っても、それを叶えるのがしあわせなんだって抱きしめてくれる。俺にがまんをさせることを、彼女はすごく嫌がる。それは最初から、出会ったころからそうだ。がまんはしちゃいけないって教わった。彼女の言うことは、絶対だ。だから今日のことも、がまんじゃないんだ。本当に。
きみが好きで、大好きで、ずっと一緒にいたいから、すこしだけがんばってる。それだけなんだ。
ありがとう、エダ。たくさん優しくしてくれて、たくさん愛を教えてくれて。これからだってずっと、きみは世界でいちばん大切で大好きな女の子だ。
なんて健気で、いじらしくて、いとしい女の子なんだろう。きみはいつでも、そのすべてで愛してると伝えてくれている。エダがほしいもの、俺が代わりに手に入れられたら、きみに渡してあげるのに。
エダの、ぜんぶ言葉で教えてくれるところも、すごく好きだ。
ふたりとも、白い蝋でべたべたになったけど、彼女は楽しそうだった。エダのわらう顔が、とても好きだ。
眠る彼女のそばで、きれいな文字をなぞる。これはエダがはじめて俺にくれた手紙だ。むずかしい言葉はいまでもよくわからないけど、あのころからずっと、彼女は俺にわかる言葉でつたえてくれる。何度でも、何度でも、根気よくかみくだいて。だから誤解をうむこともないし、俺たちの愛情や関係に不安を覚えることもない。すごく、しあわせだ。彼女の言葉は、頭がぼんやりとして心地がいい。ふわふわとして、足が地面につかないような。やわらかなベッドにずっと包まれているみたいなんだ。