糸を引けば揺れ、音を鳴らせば踊る。掌の上で転がるそれに漏れるは微笑みか、溜め息か。
……ふむ。予定調和が過ぎるとつまらないものではあるが、こうも単純だと最早面白いまであるのう! 全てにおいてあまりにも単純。道筋も、過程も、招きかたも誘いかたも、己の気の持ちようも、何かも。本当に、〝全て〟わかっておった。わかっていてなお、それでも。まずは自発的変化を見てみたいという希望的観測を手放しきれずにいた。わしにとっての時間を鑑みれば、少しばかり待つのも、眺めるのも、傍観するのも……まあ、悪くはないかと思っておったのじゃが。まっ、それはそうじゃ! という変わり映えの無さ。寧ろ徐々に萎んでいくのがわかってしまえば、わしも悠長に子供をしている場合ではない。答えはわかっておるわけじゃし、みすみす退化させる愚行をしても無駄であろう。
わしの掌の上、と思えばよい。星の瞬きほどとは言わぬが、鼓動を握る感覚はそれなりに慣れたものじゃ。慢心はせんとも、それこそ愚かさの極みじゃからの。
噛み砕けぬものが残らないと言えばそれは否ではあるが、それはそれじゃ。このままでは勿体なかろう。どうせならば自由に、好きに楽しめばよい。気ままに、のう。
そろそろ爪を整えなおす頃合いじゃな、長いと不便も多い。ずっと同じ色にしておるが、たまには色を変えてみるのも良いかもしれん。そうとなればシルバー達に好みを聞いて回るのも一興かのう。
一瞬で身形を整えるのは簡単ではあるが、ひとつひとつ丁寧に手をかけるのも特別な楽しみ方ではある。人間らしいお洒落、じゃろ? 何よりキュートな方がわしに似合うじゃろうそうじゃろう、満足度を高めるための楽しみも必要じゃからな!
どうせなら彼奴らを引き連れて店を見て回るのもよかろう、予定を立てて楽しみを増やすとしよう。