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210 :包囲6
2009/05/17(日) 21:16:03

狙いがつけづらい訳ではない。
的は眼下にそこら中にいるのだ。
だが、それらを撃っても意味はない。
たかだか矢の一本二本で小鬼全部は片付けられない。
そして自分は、撃ち切ったが最後、存在を気づかれた後はリロードよりも小鬼に接近されるほうが絶対に早いのだ。

ならばせめて、あの若者の戦闘を補助するように射撃援護をしようと考えたのだが…それができない。


近すぎるからだ。


槍の間合いでは全く無い近い間合いでの混戦に陥り、若者を援護する有効な射撃は同時に若者を撃ってしまうかもしれないリスクをはらんでしまう。
そんな博打は援護とは言わない。

もし援護射撃ができたなら、それと連携して若者が効果的に動けば小鬼の混乱を誘うことになり、包囲から抜け出すこともできたかもしれないのだが…

村長(…槍を持ってあの間合いは不利だ…
あれならショートソードでも持っていたほうがまだ役に立ったのに)

若者はそれでもその近い間合いで随分上手く槍を使っていたが、やはり槍を持つことの弊害が顕著に出ていた

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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209 :包囲5
2009/05/17(日) 20:59:03

もはやいなすもなにまなく、圧力と圧力のせめぎ合いとなった。

包囲の四方から林の如く鈍器が向かい来る。
それを致命傷だけは回避しながら、自分は全力で敵の急所をブチ抜きながら包囲の圧を押し返す。

しかし、ゆっくりと圧負けし、包囲の輪が少しづつ縮んでゆく。


その様子を、村長は村の外の高所から見ていた。

村長(く…
これでは…!)

ガチリ、とセイフティを弦にかけて歯噛みする。

大型の二連クロスボウ。
先の鞄の中身はこれだ。
小型のものは割と見かけるが、強弦で大型の物にこの二連ギミックが施されたものは殆ど無い。
理由は簡単、取り回しが悪すぎるからだ。

強弦のクロスボウの弦を引くには脚で固定し両手で保持し全身の膂力を使う必要がある。
その隙はかなりのものだ。

主に狙撃に使うものであるからそれでもリロードはなんとかなるが、それが二連ともなると最早実用的ですらない巨大な隙を生む。

強弦二連クロスボウは、それ故失射が許されなかった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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208 :包囲4
2009/05/13(水) 21:01:34

その雄叫びを上げて襲いかかってきた小鬼に

俺「単純だな」

ビシャッ!!と側頭への回し蹴りが叩き込まれる。

同時に肩に担ぐように背後に軽く槍を突き出してやり、一匹を突いて殺る。

俺「それでこそチンピラだ!!」

ハイを打った右脚を下ろさず、そのまま横蹴りして首をぷらぷらさせている小鬼を蹴り飛ばして後続を止め、そのまま左後ろ回しに繋げて側面の小鬼の顎を刈り飛ばし、後ろ回しの回転を使って首を支点に槍を押し込み突いた小鬼を投げ飛ばす。

そのまま開いた距離に踏み込み、柄打ちから繋げて振り打ち左右二匹を殺る。

俺「オルァ!!
もっと来い!!
殺らねェとみんな死ぬぞッ?!」

言葉が通じないのだからそんな挑発には意味はない。
はずなのだが、一瞬怯んだ後、小鬼は下がらず向かってきた。

こちらのツメの良さを見て、守っていられないと悟ったようだ。

俺「そォだ!!

もっと、もっと来いッ!!」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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207 :包囲3
2009/05/13(水) 20:38:55

多勢を相手に脚が止まったら終わりだ。
それよりはいい。
しかし、確実にダメージは増えてきていた。

俺「…あんだよ」

小鬼の攻め手が鈍っている。

包囲の内側にばらばらと散らばる同族の骸に気後れしているようだ。

俺(…情けねェな
ゴミみてえでも鬼のくせに、たかだか二足で歩くようになった猿一匹によォ…)

威圧してもいいが、この手の連中を焚き付けるならもっと良い手がある。

俺「…く…」

周囲を見回し、包囲の薄そうなあたりに向けて踏み出す。
その一歩ごとに危うい足取りで歩を進め、顔を歪める。

包囲の前衛にたどり着くまで酷く時間がかかり、特に右足に体重をかけるのが辛そうな様子を見て…小鬼達が低く騒ぎだす。

覚束ない足取りに合わせて、包囲がじわじわと狭まってくる気配がする。


うつむき加減に肩を上下させる手負いの人間に対して…

『ギャアッ!!』

と包囲が縮まり一気に襲いかかる。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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206 :包囲2
2009/05/12(火) 21:01:48

それに対して、反射的に脚を上げてしまってから

俺(やべえ…!)

しくじった、と背筋を寒くさせながら、ローをカットしにいってしまった開いた脚を体に引きつける。

イヤーン、みたいな体勢の俺の太腿を、ローではなく低いスウィングの棍棒が打った。

俺「ぐ…」

打たれた脚を地面に下ろしながら…

俺「…ッざけんなコルァアッ!!」

すぐさま逆脚を振り上げ、小鬼の顎を打ち上げる。

宙に舞った小鬼は追撃の必要もなく、顎骨を口の中に埋め込んで、地面に落ちたまま動かなくなった。

俺「…」

太腿に鈍い痛みが走る。

折れてはいない。
足元に攻撃が来た時、つい反射的に下段回しを脛受けにいってしまった。
なんとか引きつけが間に合ったが、あのまま脛で受けていたら確実に脛が折れて、立っていることもできなかったろう。

俺(クソ…
下手に訓練されてるとコレだから…)

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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205 :包囲
2009/05/12(火) 20:46:55

ヒュカッ!!と槍を鋭く振り抜いて、一匹斬るうち他の全ての方向から小鬼が殺到する。
それをまた槍を振り回し数匹後退させるものの、身を低くして入りこんできた小鬼数匹が槍の間合いの内側に潜り込んできた。

舌打ちする間もなく正面からの小鬼の攻撃を、槍を持たない方の手で鈍器を持つ前腕を押さえて止め

俺「っだらァ!!」

そのままその手で首をキャッチし、ヴンッと腰から下を振ってゴッシャと膝を叩き込んでやる。

が、その感触を確かめる暇もなく

俺「ぐお…!」

ドズ、と鈍い音と一緒に背中に重い熱さが沁みる。
ギリ、と奥歯を軋ませ、シィッ!!と息吹と共に膝で倒した小鬼を離して背後に後ろ蹴りを打ち込む。

ドン!!と打ち抜いた感触がする。
どこに当たったかは知らないが、踵には鉄が仕込んである。
武器で受けきったのでもなければどこに当たっても最低骨折は免れないので、戦闘不能にはなったろう。

すぐさま意識を変えようとして、ヒュッと足元に攻撃の気配を感じる。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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204 :そのころの村長宅4
2009/05/10(日) 21:13:08

心の中でそう呟き、窓を覗き込む。

村長「!」

窓から見えたのは、小鬼の背中だった。

他の小鬼の姿を探す。
見えたのは同じ方向に走り去る小鬼。

私は刺叉を強く握りしめた。

村長「…あの男…!」

混乱した顔を見せるカイジに刺叉を握らせる。

そして私は部屋の隅に置かれたクローゼットに歩み寄り、扉に手をかけた。

カイジ「これは…?」

上段から革鞄を引き出し、それを片手に窓に手をかける。

村長「…あの男が、逆転の手を打った。」

カイジを一つ撫で

村長「だが…援軍の一つもなければ、あの男もいい加減限界だろう。

お前はマヤを守れ。」

そう言って、私は窓から身を踊らせた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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203 :そのころの村長宅3
2009/05/08(金) 18:09:59

カイジ「このまま、引き下がってくれますかいのう…?」
村長「…」

あの男は、時間が経てば小鬼が引き上げるとなんて考えてはいない。
略奪に来たのだ。
手ぶらで帰るわけがない。
実入りが望めないなら皆殺しだ。

膠着で済ませてはいけない。
あくまで小鬼をここから引き剥がす手が必要だ。

しかし、現状取れる手はあまりにも少ない。

取れる手があるとすれば…

村長(…だが…
やるか?
それを…)

一つある。

しかし、馬鹿のやる事だ。
小鬼と同じくらいの馬鹿さ加減の手。

期待はある。
しかし、その期待に応えたとしてもあの男が無事とも限らない。

だが…

村長(もうあの男が『その手』を打つのを期待する以外に、命を長らえる希望は無いんだがな…)

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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202 :そのころの村長宅2
2009/05/08(金) 16:40:58

略奪を主目的とするなら、火をつけていいことなどない。
略奪すべき物品が焼失してしまう。

しかし、小鬼は馬鹿なのだ。
理性的な判断など端から期待すべきではない。
じれたら火を点けることに躊躇などしないと考えるべきだろう。

止める手段で、一番有効なものは…打って出ることだ。
だが、できるわけがない。
できないから立て籠もっているのだ。



詰みだ。

一手打たねば次はない。
というより、現状では放火などさせないように手を指さなければそもそも詰むのだ。

村長(これだけでは片手落ちだ…

…さあ
陣を守って王手を打たれるような手を指して終わりか?)

あの男は分かっている。
これだけでは半端だ。

ロクに話してもないが、まあその程度は分かる。
修羅場で涼やかに微笑んでみせるような裏も余裕もありそうではなかったし、読むのは簡単だ。

元は、同業者であったのだから。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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201 :そのころの村長宅
2009/05/05(火) 21:08:28

村長宅の床に、血が滴っている。

しかし、宅内のカイジ・マヤ・村長の誰にも怪我はなく、室内にその血を流した主はいない。

血は窓から侵入を試みた小鬼のもので、腕を刺叉で突かれてすぐに耳障りな声を上げて後退した。

その後も何度か突入してきた小鬼を撃退しているうち、突入は今のところ止んでいた。

カイジ「…終わり…ですかいのう…?」
村長「…いや。
攻めあぐねているだけだろう。
まだ諦めてはいない。」

正面の扉は突破しようとしてバキバキにされた傷跡でいっぱいだったが結局突破できず、小鬼達は窓から突入を繰り返した。

これはあの男の読み通り、ここまではバッチリ膠着状態に持ち込めた。

しかし…

村長(…このまま続けば…いくらゴブ共が馬鹿でも『次の手』を打ってくると思うが…
さて。)

うってつけに、この集落の家屋は全て木造だ。
『次の手』を打たれたらひとたまりもない。

『次の手』…

『放火』だ。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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200 :そのころのとある民家4
2009/05/04(月) 16:30:47

オッサンは自分がものスゴイ声量で吠えているため気づいていない。

ヴォアアアと叫びつつブンブン剣を振り続けるオッサンをよそに、走ってきた小鬼がオッサンを包囲する小鬼達に何事が口走る。

それを聞いた小鬼達は、互いに少し顔を見合わせた後、じりじりとオッサンから離れて包囲を解いていく。

そして少しずつバラけた後に、オッサンを置いて全員が集落の奥へと走っていった。

私「…あ。
ゴブ、いなくなった…」
母「南無妙法蓮解経般若波羅」

オッサンはポツンと取り残され、まだヴフーヴフー言いながら周囲を警戒していたが、しばらく時間がたつとだんだんと落ち着いてきた。

私「え…
どうなるんだろ…
…このままだともしかして私たちが…?」
母「(無言で娘を抱きしめ覚悟の表情)」

オッサンは、周囲をしばらく見回した後

オッサン『ふぅんん』

膝と腰が同時に砕けて、その場に気絶した。

子分『アッ…アニキイィイー!!!

死ぬなでヤンスゥウううゥウー!!!』

今までどこに隠れていたのか分からない男がいきなり現れオッサンに駆け寄り上げた叫びが、白々しく空に響いていた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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199 :そのころのとある民家3
2009/05/04(月) 16:00:37

オッサンは、非効率の塊のような振る舞いをぶちまけながら、自分は期せずして案外と良い効果を導き出していた。

私「おっかねえ…

言われなくとも、外なんか出るワケないよ…
あんなトチ狂ったバケモンみたいなの前出たら、ブチ殺されるだけじゃなくてどんな汚らわしい行為をされるかわかったもんじゃないじゃん。
絶対出ねえよ…」
母「カオリ、カオリ。
隠れなさい。
見られたら呪い殺されてしまうわ。」

見ているものにとっては、単純に恐ろしいバケモンの群れと、見た目が空前絶後に恐ろしいバケモン、どちらかがなにか間違って死なない限り、自宅から出る気など微塵も起こらない状況だ。

とりあえず見ている者全員が、人かバケモンか関係なくどっちか死ぬまで待とうと決心したその時、ギャアギャアとうるさい声がどこかから聞こえた。

オッサンを取り囲んでいる小鬼達は、まるで幽鬼かなにかと対面しているかのように萎縮し押し黙っている。
こいつらの声ではない。

一匹の小鬼が村の奥側から走ってきていた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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198 :そのころのとある民家2
2009/05/04(月) 15:37:48

無駄しかないような動きの繰り返しで、初めて見るオッサンの体は疲労の極みに達していた。

恐怖に蹂躙された心を無闇に振り回し、精神のほうも傍目から見ても限界中の限界だ。

要するに、どう見てもお前はもう死んでいる感じのオッサンは、私にはもはや時間の問題に見える。

しかしその命が繋がっているのは、ひとえにその気迫によるもののようだった。
オッサン『家から出るんじゃあねぇえぇえエエエ!!!
絶対、絶対に家からァアアアああァアアア!!
家ぇエエからああァアアア出たらぁあァアアア俺の未来がァアアアああ!!』

手負いの獣のように全開でもがきながら、オッサンが吠える。

顔面中の汁を垂れ流しながら刃物をフルスウィングしながらなにかワケのわからない言葉を吠えたけるガタイのいい男の姿は、はっきり言って恐怖の対象でしかなかった。

小鬼もそう感じているのか、数の面でも戦力の面でも完全に圧倒しているにも関わらず、オッサンを遠巻きにして攻めあぐねている様子だった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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197 :そのころのとある民家
2009/05/04(月) 15:01:53

集落ランドリート側のこの家は、型自体は他の民家と一緒だ。

しかし、他と違う集落の中央通りを見渡しやすい窓が、私の密かな自慢だった。

その私は、今母と一緒にその窓を覗き込んでいる。

私「…母ちゃん、アレ、なんだろう。」
母「だ、だめだよカオリ。
あたしが見とくから、あんたは見ちゃいけないよ。」

母にはそう言われるが、あまりにも目を引き過ぎてとても言うことを聞けるものではない。

私「かあちゃん、すごいよ。
涙と鼻水と涎垂らしながらモノッスゴイ暴れてる。
台風の時壊れてバタバタバタバタいいながらびちゃびちゃ雨水こぼしてた雨樋にスゴイ似てる。」
母「カオリ、カオリ。
頭、頭を下げさない。
口から何を吐くかわからないから。」

窓の外では、オッサンが顔面中から汁を垂れ流しながら引くぐらいじったんばったんもがいていた。
初めて見る顔だ。

とにかく小鬼を近づかせまいとブゥオンブゥオン剣を振り回し、疲労で覚束ない足元がその脅威の大振りの勢いでバランスを崩し転び、それを隙と見て殺到しかけた小鬼をまた滅多やたらに剣と汁を振り回し追い払い這いずるように立ち上がる。
それを繰り返していた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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196 :襲撃さなかの村で8
2009/05/01(金) 20:29:52

こちらの被害が今まで見られないくらいならば、入り口方面はより少ないと見ていいだろう。

奥側の家屋も残り少ない。
とりあえず仮避難が終了したら、あとは防衛を考えず反撃に転じることができる。

しかし、狙いである家屋の略奪が困難になれば…当然狙いは俺かオッサンに集中することになる。
俺だってヤだが、オッサンが小鬼の全戦力を相手にするのはもっとキツいだろう。

(まあ…こうなるんだよな
めんどくせえ、クソ
依頼主はともかくとして、なんで性犯罪者予備軍まで気回してやらなきゃなんねんだ…)

胸中毒づき、チッと一人舌打ちしながら立ち止まる。

柵で区切られた集落の奥側、終端だった。



立ち止まった背後から、ギィギャア耳障りな声が聞こえてくる。
肩越しに見やると、喚きながら小鬼が十数匹ほど一団になってこちらに走ってくるのが見えた。
恐らく略奪をしていたぶんではなく、集落を包囲していた予備兵力なのだろう。

それから一度目を離し、前方に視線を戻す。

そちらからは背後よりは比較的静かに、森の木々の間から小鬼がぽつぽつと姿を現す。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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195 :襲撃さなかの村で7
2009/05/01(金) 11:25:05

一つ頷くと、俺は坊主の頭を叩いて一息に窓から飛び出した。
勢いそのまま地面に転げて受け身をとり、すぐさま走り出す。

一応自分も窓から出る時は警戒しなくてはならないが、グズグズしている時間はない。
だから、とりあえずはこれでいい。
気構えなく急に窓から飛び出してくるものを攻撃するのは、人間も小鬼も困難だろう。

とりあえず追撃はない。
窓の外での待ち伏せはない。

こんな調子で、さしたる混乱もなく数軒の家屋を回り終えた。
いくつかの怪我はあったものの、まだ犠牲者は発見していない。

どうやら一応村の者も小鬼に何度か襲われているだけあって 、不用意に家屋の外に出るのが危険だと分かっていたようだ。

しかしそれでも襲撃時に外にいた人間は襲われたようだが、それも逃げるために家屋内に避難したため、それが幸いした。
それらの理由が重なり、村人の避難は当初の予想より順調にいっていた。

(とりあえず、ここまではラッキーだな…)

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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194 :襲撃のさなかの村で6
2009/04/29(水) 18:29:50

しっ、と軽く息を吐き傾け逆側に脚をかけると、棚がふらりと揺らぐ。

さっとかけた脚を引き抜いてすぐ、棚は中の食器を粉砕するけたたましい音を立てて倒れた。

それをドガアと蹴り込んで扉に押し込み、入り口を封じる。

ちゃりぱりと棚から零れた食器の破片を踏みながら父親に近づき、俺は脇にあった農作業用の刺叉を握らせた。

俺「入り口封じたから小鬼はあの窓からしか入ってこれない。
あの窓じゃ入ってきても一匹づつだから、入ってきた端から突いて始末するんだ。
できるよな。」
村人「あ、ああ
あんたは?」
俺「ん。
雇われた用心棒。
今村に入ったの始末してるところだ。
追い出すまで家に籠もっててくれ。」
村人「…そうなのか?
分かった、頼む…」

急な話だったが、親子が混乱した様子はない。

突然のことでなにが起こったのか把握できていないのが幸いしている。
こういう状況では周囲の状況を見て恐怖を喚起することが主なので、逆に冷静に指示を出すと相手も落ち着き素直に指示を聞くものだ。
今まで見回った家も、だいたい似たようなものだった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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193 :襲撃さなかの村で5
2009/04/29(水) 18:11:33



駆け出す先で、見えた端から小鬼を切り払う。

基本的に脚は止めない。

全力疾走から槍間合でいきなり斬りかかり、一匹殺ってすぐさま返して次を斬って、そのまますぐにまた槍を振り回し小鬼を追い払って担ぎ直してまた走る。

基本的にバラバラに略奪をしている小鬼は地形を利用はしているが連携はしていないのだが、数が違うので囲まれると面倒だ。
間合いが違うなら遠目から数を減らして逃げたほうがいい。
弓ほどではないが、槍でもこれならそれなりに安全だ。

そうしてまとまった一団を全滅させてから、戸内を見回っていく。

村人「う…あっ?!」

かちゃりと軽く扉を開くと、暗い部屋の中で影がびくりと震えた。

俺「平気か」
村人「えっ…
ああ、うん…」

部屋の中には三人の村人が固まっていた。
夫婦と、息子だろうか。
母親が太股に怪我をしている。

俺「坊主、母ちゃんの太股にコレ当てて強く押さえろ。」

ビッ!!と軽く自分の服の裾を破って息子に放ってやり、部屋の脇の棚に手をかける。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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192 :襲撃さなかの村で4
2009/04/28(火) 19:41:00

俺「!」

はっと気づき、村入り口のほうに耳を澄ます。

だいたいが小鬼の声だが、中に一つだけ…野太い男の声のように聞こえる。

(始めたか)

善戦しているのか、もうなぶり殺しに合っているのか、どっちかは知らないが、とりあえずあの騒ぎが収まるまではオッサンに入り口方面の小鬼が集中する。
その間は、村人が逃げる時間を稼げるというわけだ。
よしんば死んでも小鬼が死体を損傷し飽きるまでは効果が続く。

まあ、それはオッサンに限ったことではなく俺も一緒だ。

仕事を請けた以上、それは仕方ない。
割に合わないと思わなくもないが、そういうものだ。


オッサンがちゃんと仕事を始めたのを確認し、俺は軽く首を鳴らした。

俺「…さて…
俺も行くか。」

一つ呟いて駆け出したころには、村長の笑いへの疑問など忘れていた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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191 :襲撃さなかの村で3
2009/04/27(月) 13:31:30

村長「さて。
それでは、儂等はこれから入り口を封じてしまうから、戻ってきても簡単に避難はできん。
分かっているな。」
俺「…え?
あ、ああ」

自分で言ったことだ。
当然分かっている。

村長「…一応な。
儂も、アンタがなにをするつもりかは察しがついてる。」
俺「…何?」

村長は、言いながら小さく笑みを浮かべていた。

村長「だが、そんなにうまくいくとは思えなかったからな…少し半信半疑だったんだが。」
俺「…」

なんとなく、感じるものがあった。
村長はもしや…

村長「まあ、いいだろう。

任せる。」

そう言って、村長は軽く手を挙げ扉を閉めた。

(…なんだ?)

複数の叫び声が、村入り口のほうから響いた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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