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┗1089.SSスレッド(212-231/290)

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231 :流転の結末8
2009/05/22(金) 20:40:22

何をしたかと言えば、打ち終わった体勢から見たら、肩からくっついただけだ。
なにか打撃をした様子はない。

しかし若者はまるで分かっているとでもいうように小鬼を弾き飛ばした後、その結果も確認せず再び駆け出し、閉じかけた隙間に自分の体をねじ込んでゆく。

そこに迫る小鬼達がやはり若者の進撃を止めようと仕掛け、再び同じように若者は捌きながら踏み込み密着し

『ドパアアァン!!』

と小鬼が吹き飛ばされる。
今度はまるで背中を預けるような体勢だ。

そのまま一直線に指揮官に突っ込みながら、若者は左右から迫る小鬼の懐に踏み込み

『ドパアアァン!!』
『ガシャアアァン!!』
『ゴシャアアァン!!』

と弾き飛ばしながら隙間をこじ開けてゆく。

その様はまるで少し開いた隙間に楔を打ち込み開いてゆくようで…小鬼達が弾き返される様子はまるで、『長く連なる壁』が急に現れて衝突しているかのようだった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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230 :流転の結末7
2009/05/22(金) 20:28:50

小鬼達が我に帰った時にはもう遅い。
既に若者が矢のようにその隙間に駆け出している。

ザザザザザザと足音高くは無いもののかなりの速度で迫る若者の圧力に戦慄した表情を浮かべながらも、その細い隙間を埋めるように小鬼が殺到する。
しかし若者はスピードを緩めない。

ほぼ最高速でその隙間に突入し…隙間の入り口と言える部分の小鬼が、こちらも走って迫りながらすれ違いざまに鈍器を叩き込もうと得物を横殴りにしてくる。
それに一足で飛び込みながら

『カッ!』

と下から回し受けて攻撃を流し

『ひゅる』

と沈み込みながら若者が小鬼と肉薄する。

零距離だ。
一度離れなければ有効な打撃は望めない。

しかし、速度を殺さぬまま肉薄し、同時若者が

『ドシン!!』

と重く踏み込むと

『バカアァアアン!!』

と聞いた事もないような音を立てて小鬼が弾き飛ばされた。
飛ばされた小鬼は受け身も取れず、真横に吹っ飛び一回転し、頭から地面をガシャシャとこすり、ザン!ザン!と数度転げ回って群れの一角に突っ込む。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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229 :流転の結末6
2009/05/22(金) 18:56:45


人間の体は、翼のような柔軟さを持ってはいない。
しかし、人間の少ない関節を駆使して翼が羽ばたく動きを再現したならば、もしかしたらあのようになるのかもしれない。

その、自らを翼そのもに見立てたような打ち込みで、2つの腕で一匹づつ。

もし見た目で名前を付けるような愚かな真似をするとするなら…『鳳凰双翼』、とか、『双翅』とか、そんなような名前が付くのだろうか。

未知の光景に、そんなどうでも良いことを考えてしまう。

だが、それは小鬼も同じだったのかもしれない。

同朋が殺されて怒るでも怯えるでもなく、それでいて先のように恐怖に突き動かされさらに狂乱するでもなく…なんだか何が起こったのか理解できていないかのように、小鬼達は一瞬動きを止めていた。

そうしてぼんやりした空気の中、ふらりと若者の前の小鬼達が身を退き、若者と指揮官鬼の間に小さな間隙ができた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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228 :流転の結末5
2009/05/22(金) 18:43:15

その、身を返して回転し攻撃を避けるための動きの中でまたも始まっている腕の円弧の動き。

同時に、というよりあの腕の動きで効率的に加重を移し身を返す動きをスムーズにしているのか。

背を向けられている小鬼にはひょっとしたら分からなかったかもしれない。
背中を挟んで練り上げられる運動エネルギーが、振り向きながら加速して自分に振り下ろされる一連の出来事。


『ビシャアアアン!!』

と耳を打つ音の中、今度は見えた。
一度みたのが、効いたのかもしれない。

脚から出力された力を移動のエネルギーに変換。

それをさらに体幹の捻りに変換し、そうして方向性を『回る力』へと変えた力により体を振り回し、加速する。

その加速をさらに戦闘には不似合いな程脱力した腕の円運動に変換し、最後にはその円運動から振り下ろしながら沈み込み重力でまで加速し、極度の脱力から瞬間的な最大緊張により載せた力を『手首』で打ち込み、インパクトに全ての力を集中させた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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227 :流転の結末4
2009/05/22(金) 18:25:52


気づくと、小鬼の頭のてっぺんに、若者の掌が打ち込まれている。
打ち込まれてから気づいたが、水を打つような酷く大音量の高い音で耳が痛い。


そのたかたが張り手一発で…小鬼は眼球を両方共目から飛び出させ、耳から血を流しながら地面に崩れた。


軌道からして振り下ろした以外にない。
だがいくら速度を上げて振り下ろしたとて、その『張り手』で相手の頭骨を粉砕する様は、自分の理解を超えていた。


しかしこちらの理解や予測など待たず、若者の動きは止まらない。
張り手で一匹倒した動きの流れからそのまま止まらず、今度は低く沈み込みながら反転しもう一匹の小鬼に迫る。

地面に足裏を滑らせながら迫る若者に、小鬼が鈍器を唐竹に振り下ろす。

それに対し、若者は切り返すのではなくまたも流れのままに小鬼に背を向けるように立ち上がりながら身を返し、回転しながら軸をずらし鈍器をかわした。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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226 :流転の結末3
2009/05/22(金) 18:11:37

特に派手に小鬼の体を横に流した、という訳ではない。

ただ小鬼が武器を持った手先を少し捻っただけだ。

だが、それだけで小鬼の体が自然に流れて体勢を崩してゆく。


その小鬼の体を流した手を、自分もまた流したまま下方に弧を描くように大きな動きで体に引きつけ、その流れを殺さないまま上方へ弧を描くような動きへと移行し、若者の腕が大きく円を描く。

円運動をしながら若者の手先は鶴の首ようにゆるりと形を変えながら流れ、普通に考えれば大きく隙だらけと見える動きは、不思議に流麗な印象を見る者に与えた。

その、まるで

『大きな鳥の翼』

を波立たせるような動きが…若者の顔の辺りを通過した辺りで瞬間的に加速した。

『バヲッ!!』

と羽で大気を打つような音で風を斬り、若者の手先が…それからは見えなかった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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225 :流転の結末3
2009/05/22(金) 17:54:26

が…

私が撃つ前に、若者がすす、と小鬼の一匹に少しだけ近づいた。

とはいえ懐に入ろうという動きではなく、姿勢もそのままなので深く攻撃が入る距離までは近づけていない。
そのままでは、ただ一方的に小鬼の武器だけが届く結果になってしまう。

若者は、鈍器を受け止めようとはしなかった。
しかし、小鬼の手先に自分の手を伸ばし、添えるように這わせる。

すると

『ゆる』

と小鬼の鈍器が緩やかに軌道を逸らして若者の体を避けていった。


村長(なんだ。
あれは。)


見た事の無い技だった。

しかし、自分もこれでも『知覚』を武器に冒険者をしていた身だ。
なんとなく、頭に閃くものがあった。

村長(…敵の攻撃を…『誘導』した…のか?)

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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224 :流転の結末2
2009/05/22(金) 17:31:54

先まで虚ろだった眼で指揮官鬼を眼で射抜くように睨みつけ、折れかけた膝に力を込めて地を踏み返し、今にも獣のように飛びかかりそうな気配を体中から湧き立たせて、ゆっくりと腕を眼前に交差させる。

村長(…?
なんの構えだ…?)

見たことの無い構えだ。
掌側を前に向け腕を交差させ、背筋を立てて腰を落とす。
気配はまるで跳びかかりそうな攻撃的で鋭いものであるにも関わらず、構えはまるで前に出るのに向いているようには見えない。

その奇妙な構えの若者を、挟み撃つように小鬼が左右から襲う。


若者は動かない。

もう小鬼は振りかぶっているのにも関わらず、『打て』と言わんばかりに若者はその構えを堅時した。

もう脚が動かないのか?

そう考え、私はクロスボウを襲いかかる小鬼の一匹に向けようとした。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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223 :流転の結末
2009/05/22(金) 17:10:26

眼下で若者の武器が破壊された瞬間、私は若者の死を覚悟した。

そうすべきではない、と分かっていながら、思わず視線を逸らした先でそれが眼に入ったのは、全くの偶然だった。

明らかに指揮官らしい小鬼…もう小鬼という体格ではないが…と、その取り巻きらしい武装した二匹。
一体今までどこに潜んでいたのか。
もしあの指揮官らしい鬼がもっと早く姿を現してくれていたら、頭のみを狙って撃退も可能だったかもしれない。
しかし、もはや詮無いことだ。

武器がなくては武器持ち相手に防御もままならない。
このまま雪崩を打ったように一気に攻め込まれ命を奪われるだろう若者の末期をせめて見届けなくては…そう思い、私は逸らした視線を若者に戻した。

すると

村長(お…?)

そのまま膝を折るかと思われた若者は、意識を取り戻していた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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222 :分水嶺8
2009/05/22(金) 01:41:35

段々と毛色の違う木の姿が像を結んでくる。


普通の小鬼より二周りも大きく見えるシルエット。
多分俺よりタッパがある。

全身ではないが、肩や胸といった部分部分を鉄製防具で武装している。
多分、略奪した戦利品なのだろう。
一般的集落には数がないから、防具が渡るのは数少ない実力者のはずだ。

手にはまたも略奪したものだろうクロスボウをぶら下げている。
だが近接武器を持っていない訳ではなく、腰に蛮刀を下げているようだ。

一目で特別な個体と分かる。
それを証明するように、良く見るとその特別な小鬼の両脇に護衛のように鉄製の剣を下げた小鬼がくっついている。

要するに

俺「…や…」

指揮官、という事だ。

俺(…やっと…

顔ォ見せたなァア!!)


急激に高まった集中力に、瞬時に意識と視界が回復する。

はっきりとその姿を捉えたその指揮官鬼が、俺と目を合わせて一瞬びくりと身を震わせた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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221 :分水嶺7
2009/05/22(金) 01:26:45

『バキャアッ!!』

と派手な音を立てて、槍が折れた残りの衝撃に吹き飛ばされる。

揺らされた頭が直後にまた揺らされ、ぼわっと頭の中が膨らんだような圧迫感に視界が埋められ耳鳴りのような音がする。

先より白く薄く濁るその視界の先に…妙なものが引っかかった。


ぼんやりと滲んだ視界の中に、林のように並んだ影の群れ。
多分その一つ一つが小鬼だろう。

その林の奥に、毛色が違う木がちらついている。

いつものように自然にピントは合わない。
遠雷のような音が響く頭で意識を集中し、なんとかその木の姿を捉えようともがく。

どのくらい時間が経ったのか分からない。
そんなに長く時間が経っていたら小鬼の追撃があるのだからそんなに時間は経っていない筈なのだが、酷く時間が経った気がする。
それほどただ視界のピントを合わせるというだけの行為に労力を使ったということだろうか。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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220 :分水嶺6
2009/05/22(金) 00:44:30

今、群れの全ての小鬼がその感触を求めている。

具体的に戦闘の結果得られる成果を求めて、俺をこれ以上無いくらいにブチ殺したという感触と目に見える死体を求めている。

そう。
全ての小鬼がだ。

『ガッッ!!』

という音と共に、視界が揺れる。

どこかは判然としないが、側頭を打たれたらしい。
初めて頭部に入り、まともに意識に影響した一発に戦慄する。

白んだ視界から復帰し、膝が落ち掛けて俯いた体を持ち直そうとして

俺「ーッ!!」

再び顔に迫る気配に、反射的に槍を構える。

両手で保持し構えたその槍の中央に鈍い衝撃を感じたと同時

『ミシリ』

と軋んだ音を上げて、槍がしなった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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219 :分水嶺5
2009/05/21(木) 23:29:42

俺(…逃げられやしねェよ。

ここから逃げて、何処に逃げ出すってんだ。あァ?

逃げ出した先で吹き溜まって固まって、やっと安心できたんだろう。

逃げ出した先から、さらに何処に逃げるつもりだ。

来るしかねェんだよ。
お前等が群れて、俺が一人である限り。)


本能に喚起される不安感からひたすらに目を逸らすため、小鬼達は全力で逃げに逃げてきた。

それが今…物理的にではなく、精神的に…脅威に立ち向かわなければならないほど追い詰められ、初めて小鬼達は戦闘の高揚の中にある。

安心を得るために、ではなく、確かに自分達を滅ぼしにくる悪魔の如き存在に対し、殺さなければ逃げる所などなく確かに殺される、というデッドエンドに血を狂わせているのだ。

戦闘の狂乱の最中では、安心は得られない。
自らを脅かす「敵」…「獲物」ではなく、「敵」…の息の根を確かに止めたという感触をその手に得るまで、血の狂いは収まりはしない。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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218 :分水嶺4
2009/05/21(木) 23:07:36

そうなれば、自分達はまた全てに怯えていなくてはならない。

これから安んじて生きるために、この猿を殺さなくてはならない。

例えこれからどんな事があろうとも、「群れていれば安心」という安息を胸に掻き抱いて眠るために、どんな犠牲を払ってもこの猿を殺して「安心」を取り戻さなければならない。



俺(それが、こいつらの恐怖の根元だ。)

例え集落全体で小鬼を撃退しても、「群れ」対「群れ」という同等の条件では、小鬼は簡単に命惜しさに逃げ出すだろう。

そうすればこの場は退けられるかもしれない。

しかし、それでは小鬼が「群れ」であればこちらを獲物にできると考える意識は変わらないし、その上逃げられては数が減っていないとなれば、略奪や殺傷はすぐにまた始まるだろう。
そうなれば解決策は結局最初の予測通り巣ごと根絶やししかない。


だが…もし相手が一人ならば。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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217 :分水嶺4
2009/05/21(木) 22:52:01

今回も、小鬼はその安心感を得られるはずだった。

図体はデカいが、数を揃えて不意を突いてやればすぐさま情けない声を出す猿の一匹。

亀になった村人に構い過ぎている間に隙を突かれ被害が増えたとはいえ、始末してしまえばいつもの安心感が訪れる。


そう思って仕掛けた猿は、まるで自分達がそうするように自分達を触れる端から叩き殺していった。

個々ならまだ良い。
個々で殺されることはよくある。
個々では弱いから群れている。
それは、群れずに単体で猿と出くわし逃げるのにも失敗したヤツがバカなのだ。

しかし、群れで自分達が脅かされる筈がない。

群れなら安心だ。

群れは自分達の安心感の源だ。


その安心感を、この猿が脅かしている。

この猿が恐ろしい。

同時に逃げるのも恐ろしい。

逃げたら、自分達は寄る辺を無くしてしまう。

例えここで逃げ出し生き延びたとしても、自分達が安心感を得られる状況は泡沫と帰してしまう。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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216 :分水嶺3
2009/05/21(木) 21:53:55

けして戦いの高揚など感じてはいない。

群れで敵を押し包む時に感じる悦びは、高揚ではなく、安心なのだ。

小鬼「ギィイアアアァッ!!」

怒声と共に、もはや防御など考えていないようなとんでもないモーションで小鬼の一匹がジャンプし武器を振り下ろしてくる。
それを頭を下げてかわし、下から槍を突き上げる。
が、その突き上げて伸びた体を

俺「ぐは…!」

横から大振りで別の小鬼が拾う。
顔ならば逃がすだけでかわせたが、それで数度かわしたために学習したらしい。

腰を落とした体勢からでは動かない腹を狙った一撃が入り、勢いに乗って追撃しようとした小鬼を物も言わずに振り向き立ち上がりながらのアッパー気味なストレートをブチ込んで黙らせ、バッ!!と周囲に眼を走らせながら牙を剥く。

ただ単に痛みを堪えるために歯を食い縛っただけだったが、それを見て小鬼達は一瞬だけ前進を止めた。

しかし、すぐにより狂乱の具合を増ながら襲い来る。

まるで、逆に追い詰められてでもいるように。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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215 :分水嶺2
2009/05/21(木) 21:24:49

俺(あんまり良い習慣じゃねーよな。
こういう脳内なんたらがタプタプ出やすくなってる状態ってのは。)

多分に日常生活には支障をきたす可能性が高い肉体状況ではある。
とはいえ自分ではそんなに普段おかしな行動をしているつもりはないのだが、自覚がないだけで本当は浮いてるのかもしれないとたまにちょっと思う。


つまり、小鬼達はそういう状況に慣れていない訳だ。


群れをなす動物というのは、つまりは個体が弱いために集団で外敵に当たらなけばならないから群れをなす。
例え残虐で好戦的でも、群れをなす動物はその時点で臆病なのだ。

当然、窮地に立ち向かったりはしない。
ちょっとでも自らを脅かす要素から全力で逃げ出す。

絶対に安心という確証がない限り物事に当たらない。
群れるというのは、その確証を一番強く得られる状況だ。

小鬼達は、その万全の安心感の中、俺を排除にしにきた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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214 :分水嶺
2009/05/21(木) 20:59:50

攻撃が熾烈さを増す。

自分で言うのもなんだが、なかなか尋常事でない量の血やら脳やら腸やらをそこらにぶちまけた。
しかし最早包囲する小鬼達が怯む様子は無い。

殺れば殺るほど小鬼達は激昂し、苛烈に迫ってくる。

それは、もはや単なる怒りではなく、狂乱と言える代物だった。

同族を殺された怒りもある。
しかしそれよりなにより、小鬼達を支配しているのは恐怖だ。

俺(まあ、そう仕向けたんだがな。
しかし、やめときゃ良かったような気もする。
遅いか。)

妙に醒めた頭の中で、我ながら空気読めてない自覚があるタイミングの後悔などしてみる。

その間にも、手加減も怯みもない捨て身気味の鈍器が掠ったり抉ったり直撃したりしているのだが、なんだか麻痺してしまった。
痛みに慣れた訳ではないが、痛みからその先に対する恐怖が湧いてこない。
多分、痛みを紛らわすための脳内のアレな物質が出過ぎている影響だろう。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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213 :包囲8
2009/05/19(火) 23:02:18

槍をあれほど使うのだ。
当然、槍とそれを使う自分の適性くらい自分で分かっているはずだ。

村を包囲する小鬼を引きつけるだけ引きつけて、挙げ句に煽り立てて殺し合ったらどうなるかなんぞ、考えるまでもない。

その男が、わざわざその状況に立つ。


若者がこの村にそこまでする義理はない。
まだ着いて一時間も経っていないのだ。
村長(…なにか、狙いがあるのか…?
ここに来て、他にまだ?)

冷静に見て、なにかここからひっくり返す方法があるようには思えない。

しかし、あの若者は器用ではないが馬鹿には見えなかった。
村長(…もう仕様がない…
どうせ逃げられやせんのだ。
なにかあるなら、やってみせてみろ!)


クロスボウの弦からセイフティを外す。
顎と肩に再びしっかりと固定把を挟み込み、片目を瞑って狙いをつける。

片目だけで戦場を凝視しながら、私はその時を待った。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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212 :包囲8
2009/05/19(火) 22:32:09

元から具体的にどうすればいいと方法が分かっていたわけではない。

村中の小鬼を自分に引きつけながら、それをどうやって殲滅できるのか。

試みて叶わなかったというだけならば、ここで話は終わりということになる。

村長(…馬鹿者め…!
身の程知らずに格好つけて…やってみたがダメだったならダメならで、もっと逃げやすく状況を整えてなりなんなり、上手いやり方があるだろう…
何故わざわざ退路も無くすように煽らねばならんのだ…!!)

おかげで最早ケツをまくることすらままならない、こんなザマだ。

若者を責めているのではなく、そんな状況に陥った若者をこうして見ているしかない自分が腹立たしい。
奥歯が軋む音を聞きながら

村長「…ん…?」

ふと気づく。


若者は変わらずだ。
有効でない武器を手に、避け切れないダメージを重ねつつ、程なく包囲に潰されそうになっている。

村長(…そうだ。
そもそもそれだ。)

若者は、なぜわざわざこんな状況に陥っているのか?

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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