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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/04(金) 23:11:21
1分以内にここから脱出するのは不可能だ。
何しろ私は視界を塞がれている。
視界――
そうだ。
私にはもう1つの、視力があるんだ。
私は“目”を凝らした。
この真っ暗闇の中、“色”を探すため――
あった。
向こうに、赤い光が見える。
弱々しくても間違いない。あれは。
「先生。」
あれは先生、志布羅一郎だ。
声を発することも、動くこともできないのだろう。
それでもまだ生きている。
私は地面を這いつくばり、その赤い光に近付いた。
「あの時みたいに。昔、カイブツとなった私を救ってくれた時みたいに。お願いです、私に話しかけて下さい。」
「七海。」
願いは叶った。
「せんせ!!!」
志布羅一郎の声が、私の心に直接語り掛けてきた。
「君との約束、守れなくてすまない。だが僕の弱さ故に、君を死なしてしまうことはできない。僕の指揮棒を取れ。これでL-jetを呼ぶことができる。」
「失礼します。」
私は手探りで、先生の燕尾服の胸ポケットに手を入れた。そしてあの指揮棒を引っ張り出した。
指揮棒を天に掲げ叫ぶ。
「来いL-jet!」
すぐさまキーンという轟音が近付いてきた。
停泊していた専用機が私のすぐ傍にやってきた。アームが伸び、私をピックアップする。
爆発までの猶予はもう10秒と無かったろう。
「先生もいっしょに!」
「僕はもう助からない。5人が死んでも、1人が任務を全う出来ればそれでいい。それが戦隊だ。君だけは生きろ。」
「そんな!」
「何もできなくてすまない。最後に君に、光をあげよう。さようなら七海――」
「先生!!」
私はL-jetに収容された。何も見えない目から一筋の涙を流して。
「さようなら!」
L-jetは上空に向けて垂直に飛翔した。ぐんぐんと高度を上げていく。
直後、Mt.マンスは崩壊した。
何もかも消し飛んでしまうような爆音で空間が揺れ、衝撃波が走った。
あの赤い光は消えてしまった。
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