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253.バカセカ番外編スレ
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49 :げらっち
2022/09/26(月) 15:59:08
《リリ視点》
「ぎゃああああ~!!!」
白い廃墟に、黄色い悲鳴が響き渡る。
黄色というのは実際の色でも無ければ、私が感じ取れるイロでもない。ただの比喩だ。
女子の悲鳴というのは、どれも同じ声に聞こえる。但し今回は、この悲鳴の主が誰かすぐに分かった。このセカイに居る女性は3人。1人は私。もう1人はひなたというあの少女。彼女が悲鳴を上げる所など想像できない。となれば叫んだのはルルだ。
私は面倒臭く思いつつも、一応悲鳴のしたほうに向かった。
すると、廃墟の中のキッチンのような場所で、ルルが冷蔵庫に指を挟んでじたばたともがいていた。
「あ、リリ助けて!!」
私は冷たく言う。「何してんの?」
「食べ物を探して冷蔵庫開けたら、食べられちゃったんですぅう!!私は食品じゃないですよ!」
冷蔵庫の扉には牙が生えており、ルルの指に噛み付いていた。
この世界にはちぐはぐな家電が多いことはわかっているはず。
だのに、無警戒で近付く、あんたが悪い。無視しようか。
と思っていたら、気配がした。キラキラと、強いヒカリがここに向かってくる。ひなたと蘭だ。ルルが悲鳴を上げたので、私のように、「一応」来たに違いない。
ああ、大変だ。
あの2人に無様な姿を見られてしまう。仮にもルルは私の血縁者で、同じ世界の代表選手だ。ルルがへまをやれば、私も同じくくりに見られてしまう。それは最悪だ。だから、打開しよう。
「氷魔法アイスアックス。」
私は右手から氷の斧を生み出すと、無言で振り上げ、そして振り下ろした。斧は、ガツンと家電の頭をかち割った。ルルはびっくりして目を瞑っていた。私はガンガンと何度も斧を叩き付け、その冷蔵庫を完全に破壊した。
「あ、ありがとうリリ……」
ルルはお礼を言った。扉に喰い付かれていたため、右の人差し指が赤く腫れていた。
「別にあなたを助けたわけじゃない。」
私はそう言った。氷のような言葉だったろうか。だがルルは「ツンデレですぅ!」と言って、指を咥えていた。
馬鹿みたい。あほみたい。
そこにひなたと蘭が来た。
冷蔵庫の残骸はバケモノの例に漏れず倒されると消滅したし、斧はちゃっちゃと水滴の姿にバラした。だからここで騒動があった証拠は無い。
それでもひなたと蘭は私たちを見ていた。
「ああ、大丈夫。異常ナシ。」と、私はぶっきらぼうに言う。「そっちは何かあった?」
「水を見つけた。」と、蘭。
「水か。ナイス。川か何か?ここに自然の地形はあまり見られないけど。」
「湖よりは小さいが、水溜まりよりは大きい、そんなところだ。」
「プールですかね?」ルルが口を挟んだ。
「プール?」
蘭が聞き返す。
「プール知らないんですか?泳ぐ練習をしたり遊んだりする、人口の湖ですよ!幼稚園で習わなかった?」
蘭はちっと言って、何かイヤなことから気を紛らわすように、首をぶんぶんと横に振っていた。
何か水関係に悪い思い出でもあるのだろうか。
ルルは生意気で、いつも余計なことばかり言う。全然スマートじゃない。
私は早口で言った。
「じゃあさ、その水場に向かおう。でもその前に。ちょっと、外してくれる?」
私は蘭とひなたを部屋の外に出した。
ルルは突如私と2人きりになったことに戸惑い、キョドっている。
私はそんなルルに、ニコッと笑みを見せた。
ルルはつられて、フッと笑った。
「ブリザード。」
吹雪がドォンとルルに腹パンを喰らわし、少女は壁に激突した。
私は冷徹に言った。
「余計なことは言うな、わかった?」
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