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283.短編小説のコーナー
 ┗203-204

203 :ベリー
2023/12/11(月) 22:13:42

『白鳥の王子様』

 ふと、考えることがあるの。私だけの王子様がやってきて、この酷いお家から私をさらってくれないかしら、って。そんなことありえるはずがない。わかっているわ。
 朝は日のでる前に起きて水をはこび、火をもやし、煮にものをし、せんたくをする。それだけでも大変なのに、私のお姉様二人はもっと意地悪をする。
 私の母の形見である首飾りを奪ったり、豆を灰の中にぶちまけて拾わせようとしたり。
 しまいには、私にかまどの中へ寝ろっていうの。灰だらけのあんな場所で寝るなんて、もちろん嫌だと拒否したわ。けれど継母までもがかまどで寝ろと言いだしたの。これ以上反発したら何をされるか分からない。しかたなく、かまどの中で灰かぶりになって寝ているの。
 そしたらお姉様たち、私を「シンデレラ」っていって面白おかしく笑うんですの。私のエラって名前と、灰って意味を混ぜて作った言葉なんですって。それほど私は汚ならしいみたい。灰かぶりにしたのはお姉様たちなのに……。
 そうだわ。明日、お姉様たちは義理のお母さまと一緒に、舞踏会へいくといっていたわ。明日までにドレスのサイズを調整しろって無茶振りもいわれた。早く仕立てあげないと、また機嫌を悪くさせてしまうわ。

 ◇

 次の日の夜、お姉様たちはドレスや宝石を身にまとって舞踏会へ行きましたわ。ああ、舞踏会。なんでも王子の婚約相手を探す会なんですって。私も行きたいわ。けれどそれはお姉様たちが許さない。家にいろってキツくいわれたわ。お姉様たちに内緒で舞踏会へ行こうにも、舞踏会へいけるようなドレスはもっていない。
 ああ、素敵な王子様。どんな方かしら。こんな家からつれだしてくれないかしら。そんな甘い希望の未来。今の窮屈な木の靴じゃなくて、金の靴で、王子様と踊るのよ。

「それはいい。君も舞踏会へいったらどうかね」

 あら、声がする。ここには私以外いないはずなのに不思議だわ。どこから声がしたのかしら。あら、窓の外に鳥さんがいるわ。しかも真っ白。白い鳥さん。珍しいから、ちょっと窓を開けてみましょう。

「開けてくれてありがとう、エラさん」

「あら、私の名前を知っているの? 不思議な鳥さん」

「もっと不思議がるところがあると思うけどね。僕は魔法の鳥なんだ。苦しむ君を見かねてやってきた」

「あら、それは親切に。ありがとうございますわ」

「それだけじゃない。君の願いも叶えてやろうと思ってね」

「願い? 叶えてくれるって、そんな……」

 なんだか現実じゃないみたいだわ。この鳥さん、私の名前を知っているし、喋るし、私の苦しみも知っているし、不思議で仕方がない。私は夢でもみているのかしら?

「夢じゃない。現実だよ」

 あららこの白い鳥さん、心まで読めるみたいだわ。ほんとうに魔法の鳥さんなのね。

「そうだよ。君は本当に純粋な子だね。さて、ほら願いを言ってごらん。僕が叶えてあげる」

 そんな急に言われても、願いなんて思いつかないわ。

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204 :ベリー
2023/12/11(月) 22:15:40

「そうだ、今日は舞踏会があるんじゃないかい? 連れて行ってあげようか?」

 まあ、それは素敵な提案。でもお断りさせていただきますわ。

「それまた何故だい?」

 舞踏会にいったって、王子様の婚約相手に選ばれない限り、私の生活が変わることはないじゃない。私が王子様に選ばれるはずがない。一夜の夢を見たって、次の日から私は「灰かぶり」。シンデレラのままですもの。

「そうかなぁ。行動の前に諦めるなんて、勿体ない気がしない?」

「いいえ。しませんわ」

「そうかぁ。君がそういうなら、別の願いを考えよう」

 願い。どうしようかしら。この家からでたい。誰かに愛されたい。誰かに、私を見てほしいわ。そうだ。

「白い鳥さん、私をここから連れ出して?」

「僕が君を? それはどういう意味だい?」

「そのままよ。白い鳥さん。いいえ、王子様。私をここから連れだして? 私、あなたのことが好きになってしまったの」

「それまた唐突だね。この短時間で、君が僕を好きになる要素がどこにある?」

「だってあなたさっき、『苦しむ君を見かねてやってきた』って言ってたじゃない。誰も私のことなんかみていなかった。けれどあなただけは、私の日々の苦しみを知ってくれている。見ていてくれていた。私は、私を見てくれたあなたが好きですわ」

 白い鳥さんは自分の羽を口にあて、まるで人間みたいに驚いたポーズをとりましたわ。頬も少し紅潮して、こっちまで顔が熱くなりそう。

「こんな僕で、よければ。君をここから連れだそう。森の奥の、僕のお家へ来てくれるかい?」

「ええ、喜んで!」

 すると私の体を光が包んだ。気づけば私は金の靴に青いドレスを纏っていましたの。まあ不思議。これが魔法ね。
 顔を上げてみると、白い鳥さんは白い衣装をまとった王子様になっていました。

「じゃあ、シンデレラ。いこうか」

 白い鳥さん──いえ、王子様が手を差し伸べてくれる。私はその手をつかもうとして、そうだと思いつきましたの。この金の靴を片方でも、この家に置いていきましょう。

「どうして靴を置いていくんだい?」

「私が、ここにいた証を残したいの。さあ、いきましょう王子様」

 ちゅ、と王子様の頬に軽いキッス。すると王子様は照れて目を背けた。お可愛いことっ。王子様は私を連れて窓枠からジャンプ。ここは二階だけど、落ちることはなかったわ。魔法の力で浮いていますもの。私と王子様は、鳥のようにあの森の方へ、飛んでいきましたわ。
 ああ、私今、最高に幸せだわ。ありがとう王子様。さようなら、意地悪なお姉様たち。

 ◇

 後日、エラが去ったことで家事が回らなくなり、困った継母たちが置いてあった金の靴を頼りに、エラを探しに行くのは、また別のお話。


──

オラァ、コメディ・ライトじゃああ! これコメディか……? 小説サイトの新釈グリム童話企画で書いたものです。私にしては珍しく綺麗なハッピーエンドになったので投稿。
本当は、シンデレラに『お姉様方に復讐したい××(滅茶苦茶酷いこと)をお姉様たちにさせてあげて。アハハハ!』的なのを書こうとしたのですが、なんかキャラが暴れちゃって私をハッピーエンドに導いてくれました。いい意味でキャラが暴れた短編でした。
『白鳥の王子様』>>203-204

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