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┗301.ゲームレンジャー 第2シーズン?(21-40/307)
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21 :げらっち
2022/08/25(木) 16:29:29
0-2
「見ろよ、これ。」
目を覆いたくなるようなものだった。轢かれた猫をそのまま人間に置き換えたような有り様だ。蛙でもいいか。
「クソッ……酷いもんだぜ!!」
暗がりの中、千博は相棒の翔と合流し、視線をかわした。いつも冷静な翔だが今は怒りをあらわにしている。
「どう思う、千博。」
「どうって、GWCの仕業に決まってるだろ。」
地面には涼のゲーム機が落ちていた。画面は粉々に割れ、本体はひしゃげている。
「奴ら本性を出しやがった。絶対許さねえ、ぶっ潰す。このふざけたゲーム戦争もこれで終結だ。」
「平和的だな。ガンジーが生きていたらさぞ喜ぶことだろう。」
翔は嗜虐的にニヤリと笑った。
「俺は怜奈と信穏を呼び出し、合流する。敵はまだこの近くに居るかもしれないし、知らせておく必要がある。翔、お前は学さんに連絡を入れてくれ。」
「任せろ。」
翔は自宅に向かおうとした。翔の家はGWCの基地としても利用されている。だがその前に翔は涼に向けて、「仇は打つからな。」とボソリと言った。
俺は涼の目を閉じさせ、路地に移動させた。
そしてゲームチェンジャーに声を吹き込んだ。
「怜奈、信穏、緊急事態だ、ハードモードだ。」
「何?もうパトロール終えて、直帰しようってとこなんだけど……」
ゲームチェンジャーの画面にさっぱりした顔つきの少女、怜奈が映る。ゲームレンジャーの紅一点。
「家に帰ってお風呂でのんびりしてる場合ではない。涼がやられた。」
「え?」
画面越しに、怜奈は苦笑いした。ジョークとでも思っているようだ。
「やられたって……どういうこと?ねえ、涼。涼!」
怜奈は涼に通信を入れようとしているのだろう。声を投げ掛け続ける。だが涼のチェンジャーは命と共に破壊された。返答は無く、怜奈の笑みは消えていった。
「無事……なんだよね?」
俺は返事をしなかった。
「信穏も応答してくれ!」
画面が切り替わり、信穏が映る。
その顔は血にまみれていた。
「千博、襲撃を受けた!!闇討ちだ!今すぐ来てくれ!!」
「信穏!?現在地は!?」
「ぐああ!!!」
画面が乱れ、血飛沫、そしてくすんだ包帯が一瞬映り、直後通信が途切れた。
「しおん……?」
再び画面が切り替わり、怜奈の顔が映った。怜奈の顔はすっかり青ざめていた。
「千博、一体……」
「怜奈、急いで合流する必要がある。今どこに居る?迎えに行くからそこを動くな!通信はオンのままにしておけ!!」
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22 :げらっち
2022/08/25(木) 16:30:09
0-3
千博は怜奈の居場所を聞くなりすぐにそこに向かった。そう遠くはない。チェンジャーの画面に映る不安げな怜奈の顔を見つつ、足早に移動する。瀬川公園。ここに居るはずだ。
「ハード中のハードだぜ……」
「きゃあっ!!」
チェンジャーの中、そしてすぐ近くから同時に悲鳴が聞こえた。画面が暗転した。「怜奈!!どこだ!?」もしチェンジャーがスマートウォッチの役目を果たしていたなら、千博は自分の脈拍が150にまで上昇したのを目にしただろう。
「チ……ヒ……ロ……」
「怜奈!!!」
近くの茂みの中に怜奈の姿はあった。怜奈は仰向けに倒れ、顔を真っ赤にして、目を潤ませていた。首には鉄の輪がガッチリとはめられていた。「怜奈!駄目だ!しっかりしろ!!」千博は少女に覆いかぶさり、悪辣なる輪を外そうとした。だが輪はどんどん縮んでおり、外すどころか指をかけることすらできなかった。怜奈の呼吸は完全に遮断され、ピクンと痙れんしたきり、動かなくなった。千博は怜奈の首をかきむしり、身体を揺り動かし、無駄だと知って、そして泣いた。
「怜奈……なんで……」
俺は好きだった彼女を、そっと抱きしめた。
涼も、信穏も、怜奈も、手厚く弔わねばなるまい。
彼らの家族は、親は、一体どんな顔をするだろう?
「……ふぅ。」
俺は立ち上がった。
「翔の元に行かないと。」
千博はふらふらと翔の家に向かった。翔と機田学と共に、GWCに反撃する。
慣れ親しんだ翔の家が見えてきた。
凶悪な一瞬だった。その民家は、そこに宿っていた数多の思い出と共に破裂した。火炎が夜空に噴き上がった。爆風で千博は尻餅をついた。轟音が住宅街を疾走し、吞気な人々が家々から顔を出した。
「しょーーーーう!!!」
俺は腹の底から叫んだ、そして背中に金属が突きつけられていることに気付いた。銃だ。
俺は太い手に首を掴まれ、路地裏に引き込まれた。
「ゲームレンジャーはここでゲームオーバーだ。」
しゃがれ声が後ろから死刑を宣告した。
なるほどな。
千博の心にあるのは奇妙な納得だった。最後に死ぬのは俺というわけだ。
「抵抗しないのか外来千博。最後だから教えてやろう。俺はGWCのウィユー。お前らを恨み、死を配っている者だ。お前が死ねばゲームレンジャーは全滅だ。邪魔者は無くなる。世界ゲーム化計画は、大成だ。ゲームクリアだ。」
知ったことか。
感情の容量が氾濫し、洪水をおこし、堤防は決壊し、心は冷たい水の中に沈み込んでしまった、
さあ撃つがいい。4人の友と同じように、俺を殺すがいい。
涼・信穏・怜奈・翔――彼らが生きていないなら、俺が生きている意味などどこに有ろう?戦い続ける意味などどこに有ろう?
だが、どうせ最後なら。
俺を死にやる者の顔を拝ませてもらおうか。
俺はぐるんと振り向くと、相手の銃口をむんずと掴んだ。包帯に全身を包んだ不気味な敵の姿があった。1フレーム後に銃が火を噴いた。千博は心臓を撃ち抜かれた。
GWC社長・イッチスは、スイッチをパチンと切り替えた。それで世界はゲーム化した。お終い。
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23 :げらっち
2022/08/25(木) 16:30:44
1-1
2025年4月――
GWC第十三高校の2年生、中山瞬は、廊下の掲示物を見て立ち尽くしていた。
「廃校……?」
寝耳に水である。
1年の下積みを終え、3年の受験期前に束の間の青春を謳歌する2学年。体育祭も文化祭も、修学旅行もまだしていない。大好きなサッカー部の活動とも、大嫌いな定期考査ともお別れする。そんなのは嫌だ。
「どういうことだよッ!」
「つまりこういうことね。」
俺の恋人、眼鏡を掛けた玉屋瑛は言う。
「よく読んで。これはGWCからの御達しよ。」
掲示物にはこう書かれていた。
『この学校には反GWC思想を持つ者が居る。だから潰されるのは、当たり前だよねえ GMジャクション』
俺は自暴自棄になって叫んだ。「チクショウ!何もかもGM様の言う通りってわけか!」
日本は変わり果てていた。
11月3日は「文化の日」、
11月23日は「勤労感謝の日」、
では12月14日は何か。それは「リセットの日」だ。
2022年12月14日、GWCイッチス社長はリセットボタンをぽちっと押した。それで世界は変わっちまった。日本はゲーム化し、法も平和もぶっ飛んだ。元々俺はGWCのゲーム機など、糞喰らえと思っていた。というより俺はゲーム自体が大嫌いだ。サッカーをはじめとしたスポーツが、俺の生き甲斐だ。だが時代はそうではなかった。未知のウィルスが蔓延した。外で遊ぶより、家でネットとゲームに明け暮れる方が、安全で、疲れない。そういう風潮になった。人と対面するのは億劫だという人が増えた。それはGWCの思うつぼだった。というより、例のウィルス自体、GWCが開発・散布したものだ。人類を間引いて、家に引き籠らせ、侵略しやすくするように。奴らの狙い通り、GWCのゲーム機は、大流行した。俺に取っちゃ悪夢のようだった。
それに抗い、戦う者があった。ゲームレンジャーだ。俺はゲームレンジャーなぞ信用しない。何故ならばゲームなんて屁のカッパ。それでも反GWCである彼らの活動がニュースで取り上げられると、俺は密かに応援した。だが彼らは全滅した。それからGWCが世界を取るまでは、あっという間だった。日本中のGWCのゲーム機が、持ち主を、世界を飲み込んだ。
俺たちの様な少数派だけが、生き残った。
日本は鎖国され、「アクションの国」「レースの国」「RPGの国」などに分割され、GWC幹部たちが国を治める「GM」として各地にのさばった。
元々ゲーム機を購入していなかった1割に満たない国民たちは、ゲーム化こそ免れたものの、GMたちの統治する日本で、虐げられて暮らしている。俺の居るアクションの国はGMジャクションという巨漢が支配する。唯一の自由の場である学校でさえ、GWCの魔手が迫っている。
戦うべき時だ。
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24 :げらっち
2022/08/25(木) 17:35:23
1-2
「教室に戻れー!授業が始まるぞー!」
そんな声が廊下に響いた。
学校の存亡の危機に、授業など受けている暇は無いと思うが。
「どうするの?」と瑛。
瑛は男とは思えないほど可愛らしい。
「すぐにでも動きたいくらいだが……放課後に落ち合おうぜ。」
俺は瑛の手をキュッと握った。瑛はにこりと笑い、隣の教室に入っていった。俺も自分の所属するクラスに入る。
既にクラスメイトは俺以外、全員着席していた。整然としている。
俺は1つだけ欠けたパズルのピースを埋めるように、自席に着いた。
変だ。
何が変であろうか。変なことなど1つもない。それが変だ。
廃校が決まった今日、何故いつも通りに授業が行われるというんだ?
そして級友たちは、何故そんな混沌とした状況で、静かに座っていられるんだ?
嫌な予感がした。嫌な予感しか、しなかった。扉をガラリと開け、入って来たのは先生では無い巨漢。
「おはようございます。GWジャクションです。早速だが、この教室に反乱分子が居る。」
GMジャクションは黒板を覆い隠してしまうほどの巨体だった。顔もデカく、髪はボサボサだ。
GMジャクションは太い指で、教室の最後列に座る俺を指さした。
「それはお前だ、中山瞬。廃校するか、それともお前だけ死ぬか、どうするか。」
俺はきょろきょろと回りの席の生徒を見た。全員うつむいて黙り込んでいる。
恐らく、俺が出頭することを願っているのだろう。でなければ他の全員に危害が及ぶ。
「選ばしてやろう。俺様はやさしいからね。廊下の張り紙を見たろ。」
ジャクションは微笑んだ。
俺の顔を、一筋の汗がつたった。
俺は起立した。
「利口だね、それでいい。静かに俺様の所に来い。2人で教室を出よう。他の者は、授業を続けられる。」
俺は両手で、机をむんずと掴み、持ち上げた。
「くたばれGWC!!!」
俺は机をぶん投げた。机はブーンと教室の宙を飛んで、ジャクションの顔面に命中する軌道を辿った。だがジャクションは驚異の瞬発力でそれをキャッチ、パァンと音がした。一瞬の出来事だった。ジャクションが机を下ろすと、彼の顔は、喜怒哀楽の二番目を指し示す、醜悪なものに変わっていた。
「良 い 度 胸 だ ね え そうか、お前は全員道連れに死ぬ道を選んだのか。犠牲心など微塵も持ち合わせていないわけだ。いいねえ。俺様は好きだよ、うん。連帯責任という言葉がな!!」
ジャクション瓦割りの要領で、机をドカンと破壊した。次にラジオ体操の最初の運動のように腕を弧を描くように動かした。
俺は叫んだ。「みんな伏せろ!!」
だが伏せたのはクラス全体の2割に過ぎなかった。それ以外は死ぬ、若しくは致死的な傷を負うことになった。ジャクションは空中に殴打を浴びせた。空間がボコボコになり、波動が飛び、伏せなかった8割の生徒をバチンと吹き飛ばした。即死した者も居た。血飛沫が飛び、地獄絵図が描かれた。
俺は姿勢を低くして廊下に逃れた。
教室からは、ジャクションが怒りに任せ虚空にパンチを連打するドルルルルという怪音、悲鳴、血の噴き出す音が聞こえる。なんてこった。
俺は廊下を走った。背後で壁が粉砕される音がした。ジャクションが追って来る。俺はチラリと背後を見た。
「待てやオラアアアアアア!!!!」
ジャクションは両の拳を振り上げると、床に向けて、思い切り振り降ろした。
ズドンと爆音がした。
それで学校が壊れた。
廃校決定だ。柱に亀裂が入り、バキンと折れた。校舎全体がガラガラと崩れた。俺は空中で手足をばたつかせていたが、結局は落下し、瓦礫に頭をガンと打った。
しばらく気絶していたようだ。受難だぜ。
だが生きている。俺は悪運強い。
非常ベルが目覚ましとなり、俺を起こした。
「クソッ、GWCめ、やることがクレイジーだぜ。」
俺は瓦礫のトンネル内を移動する。そこら中に、負傷した生徒たちが倒れている。すると、見た顔があった。
「瑛!!」
彼の変わり果てた姿があった。頭から血を流しており、下半身は倒壊した壁に押し潰されている。
「しっかりしろ!オイッ!」
俺は瑛の体を引っ張り出そうとした。
だが既に息が無いことに気付いた。
俺は瓦礫をかき分けて、外に出た。現在地点を確かめる。学校は様変わりしていた。校庭には、校舎の残骸により砦が築かれ、そのてっぺんにGMジャクションが陣取っている。ジャクションは「ぎゃハハハハ!!」と言いながら、登って来た教師たちを蹴落としていた。
「あいつめ、」
俺は決意を言葉にした。
「殺してやる。」
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25 :げらっち
2022/08/25(木) 23:37:34
1-3
俺は砦を駆け上がった。殺してやる。それができなくても一矢報いてやる、と。
校舎の残骸により築き上げられた砦。剥き出しにされた鉄骨、ボルダリングの様な壁、巨大なアスレチックの様な足場。
坂道を走っていると、ゴロゴロと、ドラム缶が転げ落ちてきた。
「チキショッ、何だこれ!」
俺は垂直に跳び上がり、間一髪でそれをかわした。だがすぐに2つ目のドラム缶が現れ、俺は回避行動を取るも間に合わず、直撃を受け、俺自身がドラム缶のように、ゴロゴロと転がり落ちた。
「ぐわあッ!!」
俺は校庭に転落し、頭を強打した。
「クソッ……」
目が霞む。何とか起き上がると、3つのドラム缶が降ってきて、目の前に着地した。缶から手足が生え、怪人となった。
「いいだろう、相手になるぜ。今の俺はキレ気味だ。」
俺は足元に落ちていた瓦礫を思い切りキックした。瓦礫はサッカーボールの如く飛び、怪人の1体にガンとぶつかった。ドラム缶がひしゃげた。いい気味だ。しかし、
「イってェエエエエエエエエエ!!!」
俺は悲鳴を上げた。それもそうだ。固い瓦礫を蹴れば、足の指が折れてしまう。
ドラム缶たちは、頭からボブッと火を噴いた。
「く……」
俺は後ずさりする。その時、
「100%(パー)スパーク!!」
ビシッと電気の直線が走り、3体の怪人を貫いた。眩しい。
「屈むのだ!」
咄嗟の指示に従うほど、俺は冴えていなかった。急な展開により感覚は鈍麻になっていた。だから声の主は、俺を押し倒して伏せさせた。俺はガンと顔を地面に打った。直後ドラム缶たちは爆散した。バガンと凄い音がして、破片が頭上を飛んで行った。立ち尽くしていたら、鋭利な刃物と化した欠片が頭に突き刺さり、命は無かったかもしれない。
口の中で血の味がした。
「歯が折れただろッ!」
俺は起き上がり文句を言った。だが相手の姿を見て、拍子抜けした。
「ッぉ……お前は?」
そこに居たのは、全身を水色の装束で包んだ戦士。
幼稚園の頃テレビで見たような。そしてかのゲームレンジャーとも、少し似ていた。
「おい!命の恩人にその言い方は無いんじゃないのか?ありがとうくらい言ったらどうなのだ?」
と、水色。
背は俺と同じくらい高い。
「押しつけがましい奴だな。俺がいつ助けを求めた?あんな怪人くらい、俺が倒せたのに!!」
憤慨する俺に対し、水色は冷静に言う。
「嘘こけ。」と。
たったの4文字で返された。
確かにそうだ。俺は窮地に陥っていたし、命を救われた。俺は少し自暴自棄になっているようだ。落ち着かなくては。
「まだ返答が無いぞ。お前は誰だ?」
水色は答えた。
「ヒーローだ。」
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26 :げらっち
2022/08/26(金) 01:48:24
1-4
「ヒーローだぁ?」
俺は水色に詰め寄ろうとした。
「だったらあいつを倒してみろよ!!世界を平和にしてみろよ!!」
だがその時、何か大きなものが落下してきて、俺と水色の間にドサッと落ちた。
「! ああああああああああああ!!!!」
俺は女子のような、甲高い悲鳴を上げてしまった。
落ちてきたのは先生だった。落下の衝撃で体がねじ曲がっている。恐らく死んでいるか、すぐに死ぬ。
俺は真っ直ぐ水色を見た。
「あいつはこれから倒すよ。世界はこれから平和にする予定。」
そう言うと水色は、砦に向かった。
「あ、待てよ!」俺は追う。
「足手まといだから来ないほうがいいのだ。」と水色。
ムカつくやつだ。
俺は砦の勾配を上がろうとした。
だが水色は道に沿って進むのではなく、壁に手を掛け、ロッククライミングの要領で登って行った。
「こっちの方が早いのだ。」
水色はスイスイと壁をよじ登る。簡単そうだ。俺にもできるだろう。
「チッ、俺も行く。」
俺も指を掛けるが、予想以上に掴まれる場所は少なかった。手を掛け、足を掛ける。しかし少し登った所で握力が限界を迎え、パッと手を離してしまった。「ぐああ!!」ドンと尻餅をつく。水色はというと、既にかなり高い位置まで進んでいた。まるで平面を歩いていくかのようなスピードで。
「クソッ、俺も行くからな!待ってろよ!」
俺は坂道を駆け上がる。サッカー部の練習で坂道ダッシュは何千回とやった。慣れている。ドラム缶が進路を防ごうが、振り払い、根性論で、踏破する。
砦の外周を沿うように坂道を登って行くと、しばらく進んだ所で、壁を登って来た水色と鉢合わせした。
「どんなもんだ。俺にも登れる。」
水色は俺をじっと見ていたが。
「死にたくないなら戻れ。」
と言った。
「うるせえ。俺は大事な人を殺された。GMジャクションは俺が倒す。止めても俺は、上に行く。止めても無駄だ。」
それが俺の言い分だ。
ほどなくして、水色はうんと頷いた。
「無駄なら止めない。でもお前が死にそうになったら助ける。」
なんだそれ。「援護なんていらねぇよ。」
「そう?どのみちこの先は、一般人にはちときついと思うぞ!」
水色は行き先を示した。道は瓦礫により塞がれ、歩いて登ることはできない。
「手本を見せるのだ。」
水色は手足のストレッチをしていたが、突如バッと走り出し、とんとん拍子でその瓦礫を駆け上がった。まるでパルクールのように。まるで重力など、無いものとしているかのように。
俺はつい、その動作に見惚れてしまった。
……いけない。
「来たけりゃ来い!」と水色は、遥か上方から、手を振った。
「言われなくても行くぜ!」
俺は助走をつけ、瓦礫に飛びついた。水色がやったように、壁をキックし、向かいの壁に飛びつこうとする。だが先程瓦礫を蹴って損傷していた足は、ズキンと痛んだ。予想より跳躍力が出ず、ズズズとずり落ちる。何とかへばりつくも、指が痛い。手の皮が剥がれそうになりながらも強引な腕力で喰らい付き、時間をかけて、登り切った。水色ほど綺麗には登れなかった。醜く、がむしゃらな登頂だ。手を見ると、真っ黒になっていて、爪から血が出ていた。
「意外とやるな!」
水色は俺にねぎらいの言葉を掛けた。そんなものはいらないが。
そして水色は、懐から菓子を出した。
「あ、フエラムネ食べる?」
「要らん。俺は甘いものが嫌いなんだ。」
さて、ようやくGMジャクションと対峙できる。俺がこの手で葬ってやろう。
「いい?一緒に戦うなら、こちらの指示に従うこと。」
水色は偉そうに言った。
「やなこった。」
俺はそれを無視し、砦の頂上にのさばるGMジャクションの元に駆け寄り、背後から不意打ちした。
「死ね!!!!」
俺はジャクションの巨大な背中に、力を込めて体当たりした。ジャクションはよろける。このまま転落させ、あの教師のように、死なせてやる。瑛の仇だ。
しかしジャクションはそれを見越していた。くるりと振り向くと、太い腕で俺をむんずと掴み、持ち上げた。
「ぐああ!!」
「いらっしゃいませえ、中山瞬。」
俺の足がプラプラと宙に浮いた。ジャクションは砦から俺を突き出した。俺の真下に、校庭と、破壊された学校が広がっている。
「見ろ!お前のせいで廃校だ!生徒も教師も殆ど死んだ!ゲーム化された世界には警察も居ない。全てGWCの思うがまま。こんなに楽しいゲームは無いねえ!」
「くッ……」落とされる。そう思った時、声がした。
「やめろ!!!」
水色が割って入った。
いいのに。お前の助けなんかいらない。
水色は叫んだ。
「命は大事にしろ!!」
「何……?」
「この世界はゲームなんかじゃない。死んだら終わりなんだぞ!」
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27 :げらっち
2022/08/26(金) 01:49:42
1-5
……俺はドキリとした。
学校が壊され、級友が死に、瑛が死んだ。世界は徐々にゲーム化され、俺の希望も消えていった。
このまま玉砕してもいいと、死んでもいいと、思っていたのかもしれない。
ジャクションは振り返り、水色の姿を見た。そして、ヒェッと、柄にも無いか弱い声を出した。
「お前は!!」
ジャクションは震え、俺はその両手の隙間から滑り落ちた。危うく校庭まで真っ逆さまになる所だったが、何とか瓦礫の端に掴まった。俺は宙吊りになった。
「お前はGMシューターやGMミリタリを倒した……!」ジャクションは震え声で言った。
「そうだよ。」
水色は、そこで初めて名乗った。
「私はゲームヒーロー・テンナ。」
決闘だ。
ジャクションは闘牛のように、ドッとテンナを攻めた。無言の奇襲が、最初の一撃が、勝敗を決すると思ったのか。
ダンプカーの突進のような強烈な一撃だった。ジャクションは瓦礫の山を木っ端微塵にした。合間にテンナが居れば、すり潰されて死んでいたろう。だがテンナは、ひらりと身を翻していた。ジャクションの頭に手を掛け、宙返りしていた。
「お前の上だぞ!」
「な!!」
ジャクションは上空を見た。強烈な陽光がやつの目をくらました。高い位置にあった太陽に紛れ、テンナは、ジャクションのいかつい顔に、バシ、バシと、キックを浴びせた。
ジャクションはよろけた。テンナは着地し、「サンダーボール!」と叫んだ。テンナは両手を広げ、そこに、青白い電気の玉を生み出した。ドゴンと玉が弾かれ、ジャクションの腹に命中した。ジャクションは後退し、砦から落ちそうになるも、踏ん張りを利かせ、荒い息でそれを耐えた。
テンナはもう一度サンダーボールを生成するも、ふぅと息を吐いて、間合いを取った。
ジャクションは高笑いした。
「ぎゃハハハ!!俺にそんな脆弱な攻撃は効かないよ。大したことないねえ!テンナお前はここでゲームオーバーだ!!」
「狙いはお前じゃない。」
テンナはサンダーボールを、床に打ち付けた。
「こっちだ!!」
ビシャンと雷が落ちたような音がして、砦に亀裂が入った。ビシ、とイヤな音がして、次の瞬間、質量の大きなジャクションは、床を突き抜けて落ちた。
「グあああああああああああああああああああああ!!!!」
砦が崩落する。「手を!」テンナは鉄骨に掴まり、俺に手を差し出した。俺はその手を取り、プランと振り子のように動いて、階下の安全地帯に降り立った。直後、テンナも俺の隣にスタッと降りた。ジャクションが落ちていくのが見える。
俺は興奮して言った。
「すげェ……やったな!!」
「とどめは、お前が刺すのだ。」とテンナ。
「え?」
「大事な人の仇を討ちたいんだろ?」
テンナはサンダーボールを、俺に手渡した。パリパリと刺激的な、電気の球。
「サンキュ。」
俺はそれをキックした。サッカーの試合で、ゴールを決める、最高の瞬間ように。
「いけェッ!!」
バシュッとボールは飛んで、ジャクションの胸部に当たり、そのままやつを地面にぶつけた。「ゲームオーバーするのは、俺様だったのか~!!」カッと閃光があり、大爆発。ジャクションはバラバラに、吹き飛んだ。
「ざまァ。」
━━━━━━━━━━
俺とテンナは、校庭に降りていた。
そこら中に負傷者が居て、非常ベルとサイレンが鳴っている。このサイレンは救急でも警察でもない。GWC部隊のものだ。
「じきにGWCが来る。お前ももうお尋ね者だ。一緒に逃げよう。」とテンナ。
「ああ。」
俺も腹をくくるべきだろう。
「俺は中山瞬。助けてくれてありがとうな。」
テンナは、手首に付けていた、スマートウォッチのようなものを操作した。
「アクションモード解除。」
変身が解けていく。それだけではない。その身長もしゅるしゅると縮み、俺より頭一つ分ほど小さくなった。アクションモード?それで身体能力を増強していたのか?男性にしてはとても小柄だ。いや、男性ではない。
「私はテンナ。よろしくな。」
ヒーローの正体は、中学生くらいの、少女だった。彼女は、フエラムネを、ピィっと吹いた。
つづく
[
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28 :黒帽子
2022/08/26(金) 09:10:27
なんというか戦隊というより仮面ライダーを意識してるような作風に思えたような
それかメタルヒーロー?
げらっち特有の流血沙汰だしさあ
[
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29 :げらっち
2022/08/26(金) 12:38:12
たしかに戦隊っぽくないよねー
シリアスのほうが作りやすいからな…でもつかみが書けたので今後はギャグ要素も増やしていきたい
ちなみに主人公の恋人が男だったのは、HKKが男女の恋愛が苦手らしいからです(>>11参照)
今後戦うGMとモチーフのジャンル一覧
GMシューター シューティングゲーム 死
GMミリタリ ミリタリーゲーム 死
GMジャクション アクションゲーム 死 元ネタはドンキーコング
GMレーサー レースゲーム
GMロープレ RPG
GMシミュレ シミュレーションゲーム(育成など含む)
GMラブ 恋愛ゲーム
GMパズル パズルゲーム
GMホラー ホラーゲーム
GMガクトー 格ゲー
GMリズム 音ゲー
GMパッティ パーティゲーム(スポーツなど含む)
[
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30 :げらっち
2022/08/27(土) 13:04:51
2-1
GWCの本拠地、ビデオキャッスル。
日本各地のGMたちが招集され、カンファレンスが行われていた。
「GMシューター、GMミリタリ、GMジャクション、3人のGMが相次いで倒された。」
円卓を囲む8人のうち、最も大きい椅子に掛けているのがGWC社長イッチス。今の肩書きは日本のトップ。
「私は君たちを信用しているからこそGMに任命したのだ。それがこの有り様だ。どうすれば私の期待に応えられるか、君たち自身で考え、結論を出して貰いたい。」
「社長はお怒りだぁ!」
イッチスの右隣、ノートパソコンを前に座っているのは小柄な男、GMパズル。この会議の書記も務める。
「我らGMは国の統治を任された12人だ。それがたった1人の戦士の前に圧倒されている。これを見ろぉ!」
パズルはエンターキーをダンッと叩いた。壁のスクリーンに、少女テンナの姿が映写された。
それを見て、7人のGMはそれぞれ異なる反応を示した。
「なんてこと。敵はまだ子供じゃないの。」
そう言うのはイッチスの左隣に座る、GMラブ。背が低くポッチャリしている、妖艶な女。
「ちいちゃな女の子相手に3人もの屈強な男がやられたの?それはいただけないわね。」
「あいつらが油断しすぎたのじゃ。わしならば2ターンで殺れる。」とGMロープレ。メンバーの中では最高齢。
「2ターンもかかるのかい、ジジイ?」
老人の向かいの席から野次を投げるはGMレーサー。赤いバンダナを付けた若い男。
「俺なら最速を叩き出せる!相手は動く間もなくアウトだぜ!」
「青いのう。まだまだ青い!」
「なんだと?やんのかクソジジイ!!」
「落ち着きなさい。社長の見ている前で、恥ずかしい。」ラブが仲裁した。
「シューティングの国、ミリタリーの国、アクションの国はGM不在になり、レジスタンスによる武装蜂起が起きています。」
GMシミュレは背の高い少女。ベレー帽を被っている。育成ゲームなどを含むシミュレーションゲームに通じている。「どうします?」
「制圧しかないっしょー♪シミュちゃん。」
GMリズムはその名の通り音ゲーを司る者。片耳にワイヤレスイヤホンを入れて音楽を聞きながら、机を叩いてリズムを取っている。
「タンタターン、タンタターン!ねえパッティ。一緒に制圧しよう!あの3つの国の領土と人民は、うちらで山分けってことで!」
「駄目だにゃリズム。」GMパッティは顔面に大きなサイコロを被った不気味な男。「取り分はサイコロの出目で決めよう。恨みっコなしだにゃ。ゴホッ」
「そういえばガクトーとホラーはどこじゃ?」とロープレ。
「あの2人のことだからおサボりじゃなーい?」とリズム。
「で、結論は何だ?」パズルは討論の様子を、パタパタとPCに打ち込んでいる。「GMが集結しておいて、少女1人の始末を決めかねているのかぁ?」
「では俺が始末してやろう。」
第9の声が会議室をこだました。低く、くぐもった声だ。
GMたちはその声の主を見た。部屋の隅の暗がりに、包帯で全身を包んだ怪人物が居た。
「てめえはウィユー!たかが殺し屋の分際で、ここに立ち入るとはおこがましーぜ!」とレーサー。
「殺し屋ではない。死の配達人だ。」
ミイラ男は剣呑な声で言った。彼は腐臭を漂わせ、机に近付いた。GMたちは席をずらして彼と距離を置いた。
「俺はゲームレンジャーに死を配った者だ。それを忘れるな。俺が居なければ、世界はGWCの庭とはならなかった筈だ。」
ウィユーは、ふっと、闇に消えた。
「不気味なやつだにゃ」とパッティ。
「お前が言うな」とパズル。
「まあいい。結論は出たぜ。」
レーサーは席を立った。
「俺が最速でテンナを始末する。明日までには奴の首を持って帰ってやろう。では行くぜ!3・2・1……GO!!」
レーサーはマシンに乗り、爆音を鳴らして部屋を飛び出して行った。
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31 :げらっち
2022/08/27(土) 18:31:54
2-2
中山瞬とテンナは、顔を伏せがちにして夕暮れの住宅街を歩いていた。
「顔を隠さなくていいのか?」と瞬。
「別に。」とテンナ。「お互い平凡な顔だし、下手に隠すと余計怪しまれるぞ。」
向こうから、GWCの2人組の兵士が歩いて来る。
「ったくよ~、やってらんねえぜ。夜勤込みで月収18万なんてよ!」
「まあ、新人のお前はそうかもしれん。ボーナスが出るまでの辛抱だぜ。」
瞬とテンナは、兵士の横を何喰わぬ顔で通った。兵士はお喋りに夢中で、すれ違ったのがお尋ね者だとは気付かずに歩き去った。
「……ふう。やつらざる警備だな。」
「シッ、聞こえるのだ。」
アクションの国は、GMジャクションの敗死直後、GWC部隊の指揮下に置かれていた。
急いで国を出る必要がある。
2人はせかせかと歩いた。瞬は不思議な気持ちだった。命の恩人は、年下の少女。背は低くて童顔。それが、ヒーローであるとは。
「瞬、家族は?」とテンナ。
「居ない。俺にとっては、学校が唯一のくつろぎの場だった。」
「そうか。」
「お前は?」
日が暮れて、闇になる。2人は立ち止まり、視線を交わした。
「私も居ない。それでも大事なものくらいあるだろ?家に帰って取って来ていいぞ。私も一度家に立ち寄る。7時に、瀬川公園で待ち合わせよう。」
「わかった。」
「慎重にね。」
「わかってる!」
2人は交差点を、それぞれの帰路へと進んだ。
テンナは、パークナード布袋地に到着した。
集合住宅は、過去のGWCの攻撃で欠損していて、その建物の切れ込みから、月が見えた。
テンナは階段で5階に向かった。エレベーターはずっと故障中だ。
目的の部屋に入る。
「ただいまー。」
挨拶は、もちろん返らない。散らかった廊下を通り、自室に入ると、テンナはささっと服を着替えた。
持ち物は特に無いが、哀惜の我が家に、最後の別れをする。全ての部屋を、トイレやお風呂も、1つ1つ巡って、丹念に見回して、そこに染み付いた思い出を呼び起こし、静けさの中に過去のぬくもりを再認した。
最後に、リビングに向かう。そこには、大きな穴が開いていた。下の階層が丸見えだった。
テンナは、棚に飾られている、写真立てを手に取り、顔に近付けた。
暗闇の中で目にする、家族の集合写真。
父と母、自分、そして姉が居た。
2022年12月14日、リセットの日。
その夜、テンナは姉と共に、リビングにて、GWC社製のテレビゲーム『テンプラコン』で対戦していた。
バツン、とブレーカーが落ちるような大きな音がして、家中の照明が消えた。窓の外を見ると、パークナードの他の部屋、そして街全体が、全て停電している様だった。だがテレビだけは光り続けていた。姉は異変に気付き、妹を部屋の外に出そうとした。
「逃げて!!」
突如テレビから光の腕が飛び出し、姉の体を鷲掴みにした。姉の判断が遅ければ、妹も捕まっていただろう。妹は叫び、姉の手を掴んだ。だが姉は妹を突き飛ばし、何とか遠ざけた。姉はゲームに引きずり込まれた。次にテレビが爆発し、空間に大穴が開いた。
「おねーちゃん!!」
GWC社製ゲームの普及率は90%以上であり、つまり、これが日本の9割の家庭で行われた。
多くの人がゲームに取り込まれた。死んだのか、そうでないのか、それはわからない。
テンナは写真立てから写真だけを取り出すと、そっと懐にしまった。
すると呼び鈴が鳴った。
「お届け物で~す♪」
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32 :げらっち
2022/08/27(土) 18:36:18
2-3
テンナは、ぶる、と身震いした。
この場所は知られていない筈だ。だが来たとすれば、それは
「GWC!!」
テンナはすぐさまゲームチェンジャーを操作する。
「ゲームヒーロー・テンナ!!アクションモード!!」
彼女の小柄な身体は水色のスーツに包まれ、筋肉は増強し、背が伸びた。顔はマスクに覆われた。
扉がバァンと吹き飛んだ。ウィユーが狙いを定めている。「死のお届けに来ました。」テンナはダッシュし、窓にダイブした。ジャリンとガラスが粉砕し、テンナは5階分の夜を落ちてゆく。「さらばだ、おうち。」テンナは叫んだ。「電機魔法・逐電逃亡!!」
ウィユーは室内に踏み込んだ。すると全ての家電がオーバーヒートし、爆裂した。
ドドドオンと爆炎、パークナードの5階は吹き飛んだ。それより上層もグラグラと崩れ落ちる。テンナは爆風に押されて落ちてゆくが、煙の中からウィユーの殺意の一撃が飛び掛かり、テンナの首に、ガッチリと鉄の輪がはめられた。「ぐ!」呼吸が遮断される。テンナはガンッと、背中から花壇に落ちた。落下のダメージよりも首輪が深刻だ。輪は次第に縮まり、意識が朦朧とする。テンナはひくひくとよだれを垂らしながら、声を振り絞った。「100.0万ボルト……!!」テンナは体から電流を放った。「ぐぅおおお……!!」放電を続ける。じきに、輪は損傷し、バキ、と割れた。「はあ、はあ!!」テンナは変身を解除し、喘いだ。酸素をがむしゃらに集積し、酸欠状態にある体の隅々に行きわたらせるべく、大きく肩を上下させ、呼吸した。
「……瞬……」
窮地を脱したテンナの脳は、次なる危機を予測できるまでに回復した。
「瞬が危ない!!」
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33 :げらっち
2022/08/27(土) 18:38:19
2-4
テンナは瀬川公園に走った。
緑の多い、比較的大きな公園。テンナは街灯の下に、瞬の姿をみとめた。
「瞬!追っ手は?」
テンナは息を切らして、瞬と合流した。
「追っ手なんて居ねえよ。」
するとクラクションが鳴り響き、木をなぎ倒して、いかつい車が突っ込んで来た。オープンカーで、車体からはトゲが生えている。乗っているのはGMレーサー。
「見つけたぜテーンナ!死ねえええ!!!」
「なんだありゃッ!」と瞬。
「追っ手なのだ!逃げるぞ瞬!」2人は走り出す。
テンナは手首のゲームチェンジャーを操作。「ゲームヒーロー・テンナ!レースモード!!」彼女の手から電流が走り、車が生み出された。しかしそれはゴーカートで使用するような、ちゃちいものだった。
「こんなんで大丈夫なのかよッ」
「つべこべ言わず乗れ!」
2人はマシンに乗り込む。テンナがアクセルを踏み込み、マシンはドンとロケットスタートを切った。
しかしスピードでは到底勝てない。改造車はテンナのマシンに追いつき、後ろからガツンとぶつかった。幾つかのパーツが飛び散る。
「おせーぜ!そんなんで、3年連続GWCグランプリに輝いた俺に勝てるのか?」
「これでも喰らえ!」
テンナはバナナの皮を放った。
「うぎゃーおぅ!!」
GMレーサーのマシンはバナナの皮を踏ん付け、キュルキュルとスピンした。
テンナのマシンは小回りを利かせ、チェイサーを引き離し、茂みを突き進む。
「きゃあっ!!」ベンチでいちゃついていたカップルが逃げて行く。
「どけどけえ!」
テンナのマシンは公園を飛び出し、車道にガンッと降りた。
「撒いたか?」と瞬。
「ところで、家から何を持って来たのだ?」とテンナ。
「ああ、これか?」
瞬は、肩に掛けていた大きな黒いバッグから、テニスのラケットを取り出した。
「俺がサッカーの次に好きなスポーツ、それはテニスだ。」
「知るか!他に持ってくる物無かったのかよ!!」
「特に無え。」
すると、ギュイイイインと、何かが飛来する音がした。
「何だ?」「あれは!!」
ロケットランチャーが飛んで来る。
「わぎゃあ!」
ロケット弾は信号機に着弾、ボッと火の玉が立ち上がり、車は横転した。被弾していれば、バラバラになっていただろう。
「瞬、生きてるか!?」
「生きてるぞー!」
2人は車体から這い出した。
GMレーサーの改造車が、向こうから、クラクションを鳴らして急接近して来る。
「マズいぞ!早く車を起こせ!」
瞬とテンナは息を合わせてマシンを起こすと、再び乗り込み、走り出した。
ウィユーは、闇夜に浮かびながら、そのカーチェイスの様子を見ていた。
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34 :げらっち
2022/08/27(土) 18:42:35
2-5
2つの車は繁華街に辿り着いた。
テンナは人の群れを轢かないように蛇行運転する。
「どけったらー!」
一方のGMレーサーは、逃げ遅れた人々を跳ね飛ばしながら激走していた。
「ノロマなやつは轢き殺すぜ!!」
GMレーサーの赤いバンダナが、ひらひらと棚引いている。
キキーッ!とブレーキ音。テンナはマシンを自在に操り、人波を抜けた。
「切り抜けるぞ!」
テンナは後ろを振り向き、追っ手と距離を取っていることを確認したが、前方に視線を戻すと、自販機が目の前に迫っていた。
「わぎゃああああ!!」
ハンドルを切るも、時すでに遅し。マシンはドガンと、ドーナツ専用自動販売機に体当たりをかました。機械の中からドーナツがドサドサと溢れ出た。
「やったぜ、俺はドーナツが好物なんだ!」と瞬。
「どうでもいいのだ!」
GMレーサーのマシンが追い上げてくる。
「出せ出せ!」
テンナはアクセルを踏んで再出発する。
「もうちょい走れば国境なのだ!」
GMレーサーはテンナたちに、ロケットランチャーの照準を合わせた。
「逃がしゃしねーよ。」
ガンッ、と砲撃。ひゅるひゅるとロケット弾が飛んで行く。
テンナは車体を横にずらして回避しようとする。しかしロケット弾はテンナのマシンを追尾していた。
「まずいのだ!」
「俺に任せろ。」
瞬は後ろを向き、座席に立ち上がった。
「任せられないぞ!変身もせずに戦えるもんか!」
だが瞬はラケットを取り出し、豪語する。
「俺にはスポーツがある。」
迫り来るロケット弾。
瞬はそれを、ラケットでスパンと打った。ガットが焦げ付いた。しかしロケット弾は、回れ右し、GMレーサーのマシンに突っ込んだ。
「ええ?」
レーサーはポカンとするも束の間、彼のバンダナの先が木の枝に引っかかり、彼の体はマシンから引き剥され、ぐんっと宙を舞った。マシンは直進したが、刹那ロケット弾と正面衝突し、バガンとバラバラに吹っ飛んだ。レーサーは爆炎を逃れたかわりに、ぐるんと回転して、路面に叩き付けられた。
「やったぜ!!」
瞬はガッツポーズした。
「テンナ!見たろ?今の!」
だがテンナは「今のサーブは、フォルトだよ。」とうそぶいた。
マシンはそのまま道を走ってゆく。
「もうちょっとでアクションの国を出るぞ。」
「どこに向かってるんだ?」
「RPGの国。」
テンナは言う。
「逃げてばかりもいられないからな。GMを1人1人倒していく。まずは一番近いRPGの国から。覚悟は良いよね?」
「ばっちりだ。」
瞬はニヤッと笑った。
破壊されたマシンがメラメラと燃えている。
瀕死の重傷を負ったGMレーサーは、道を這っていた。そこに忍び寄る者があった。
「死の配達に来ました。羽をもがれた虫けらは、潰してやらないとな。」
ウィユーは包帯の巻かれた大足を上げ、GMレーサーの頭部を、グシャリと踏み潰した。
つづく
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35 :げらっち
2022/08/31(水) 20:04:40
どうだったかね?
って、自分で読んでもアレなほど手抜きだな…
恨むなら作品を全部ごみ箱に捨てちゃった(おジャ魔女風)HKKを恨んでくれ!
私は『戦隊学園』に着手しようと思う。
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36 :黒帽子
2022/11/14(月) 20:11:47
ゲームレンジャーアドバンス、実はあの後も話を考えてた回がある
2話「学校に竜巻注意報」
敵怪人:センプーマン 元ネタはロックマンに出てくる敵キャラのエアーマン
ある日、学校に新しい扇風機が導入された。体育館用の扇風機で、これから来る夏に備えての設置だった。しかし、その扇風機が勝手に動き出して竜巻が起こり、体育館をメチャクチャにしてしまった。これはGWCの罠で、学校の特殊教室を破壊し、生徒や教師に転校、転勤を促すためのやり方だった。
体育館にいたバスケ部の熱也はしばらくセンプーマンと格闘する。
しかしこの雑なやり方は、すぐに外にいた瞬と久美にばれた。早速加勢し、センプーマンはあっけなく破れたのであった。
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37 :げらっち
2022/11/14(月) 20:29:30
>>36 書いてみては?
作者失踪で版権ブラブラだし。
本当にどうしたんだHKKは…
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38 :黒帽子
2022/11/14(月) 20:49:09
実際第2話の原稿は残しているし、それを除いても3話くらいネタは考えてる
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39 :黒帽子
2022/11/15(火) 10:07:12
第3話「春はスキーのシーズン!?」
怪人:チルドレス 元ネタは東方Projectのチルノ
ある日、瞬が目覚めると外は白銀の世界だった。4月下旬に雪が降ることはおかしい。
いつもの3人で集まり、怪しいと思う場所をあたってみることにした。
気象台や町役場など、阿祖美町全体を回っていったが、手応えはなかった。やっとそれを見つけたのは町外れにある根慈権山(ねじこんざん)だった。
そこにいたのはチルドレスとYボタン兵。目的はGWC専用のスキー場を作ることだった。
気象を操作してまで勝手なことは許しておかないと、ゲームレンジャーは戦うことにした。
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40 :げらっち
2022/11/19(土) 02:07:48
ネジコンとは渋いな…
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