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376.【小説】愛と幻想のショートショート
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18 :零
2024/09/03(火) 19:07:36
僕はこの広くて綺麗な病院でずっと働き続けている。病院のお仕事と言っても色々あるけど、僕はお医者さんや看護師さんではなく、患者さんと対話するカウンセラーという仕事をしている。ただ、他のみんなと一つ違うところがあって、それは住み込みで働いているという事。ちょっと不思議だよね。僕もどうしてなのかはよく分からない。
毎週末は外出許可が出る。お休みの日だ。その日になると、色んな散歩道を通って、色んなレストランでご飯を食べる。最近は友達を作って一緒に遊ぶようになった。刺激がいっぱいだ。
僕は今日、患者さんさんとビデオゲームをして遊んだ。内容は簡単なシステムのパズルゲームだった。患者さんとはほぼ互角。ビデオゲームなんて初めての事だったから、とっても楽しかった。
夕方になると、患者さんはゲームをリセットした。セーブしたままで良いのに、ちょっと変だ。スコアボードか全部デフォルトになっているゲーム画面を見て、僕は少しの既視感を覚えた。なんだか不安になる。なんて言うか、今まで蓄えられてきたものが、全部台無しになってしまう所に、そこはかとなく恐怖を感じる。
ちょっと待てよ。そういえば、僕は昔の事を全然覚えてない。既視感の正体はこれか。そもそも、僕はなんでここで働いているんだ? 学校って、行ってたっけ? 僕の親は何してるんだ? 死んじゃったのかな? 僕は何も知らないな。いや、忘れてる。何を忘れたかは忘れたけど、確実に僕は何かを忘れている。エージェントさんに訊いてみた。「僕は何か忘れているのかな」って。そしたら、次の日から僕は面白い形のヘルメットを差し出してきた。そして僕はすぐに気付いた。このヘルメット知ってる。知ってる……? 確か、これを着けると……全部忘れる。そうか。僕が色んな事を忘れているのは、このヘルメットのせいか。「嫌だ。被りたくない」と僕が言っても、エージェントさんは無理やり僕にヘルメットを被せてきた。
う。
この感触。
気持ち悪い。
まただ。
痛い。
……
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