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91.マリルイ学園CGR
 ┗996-998

996 :げらっち
2020/10/28(水) 16:32:58

番外編7
「ゲラッチとkotoの兄妹デート!」

ゲラッチはイオンモール入り口前のベンチで缶コーヒーを飲んでいた。
心を落ち着かせるつもりがあまり用を成さず、立ち歩いては座りを繰り返していた。
黒いポロシャツに普通の眼鏡をかけたその姿はあまりにも平凡すぎて、店を出入りしている客たちは誰も気付かなかっただろう。

彼が世界を危機に陥れたメンズスターの元部長だという事に。

しばらくすると、ゲラッチは待ちきれないという様子で店の中に入って行った。
そして何を見るでもなくしばらく進んだところでガラケーを開く。
「ん?今店の前に着いたのか。」
ゲラッチは入り口の方に引き返した。
そして外に出ようとしたところで、隣の自動ドアから入れ替わりに誰かが入ってきた。

「おっ、」

「あ!」

ゲラッチは振り向く。すれ違った相手も振り向く。

「琴美!」

「お兄ちゃん!」

今日は久々に兄妹でお買い物に来たのだ。

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997 :げらっち
2020/10/28(水) 16:37:34

kotoは白いパーカーにジーンズと言う格好で、ピンクのショルダーバッグを身に着けている。

「じゃあ行こうか。」

そう言うとゲラッチはkotoの小さな手をぐいと引いた。

「あっ、恥ずかしいよ(小声)」

kotoは耳を澄まさなければ聞こえないような囁き声でそう言った。

「もう子供じゃないんだから、つながなくても大丈夫だょ」

しかしゲラッチはこう答える。

「いいじゃないか。つながせてくれ、せっかくのデートなんだからさ。」

「デートとは?(?)」

kotoは気持ち嫌そうにしていたが、ゲラッチはお構いなしでkotoの手に指を絡ませぎゅっと握る。
いつぶりだろうか。
2人がまだ幼い頃…ゲラッチが小学生、kotoが幼稚園などと言う遠い昔に…手をつないで近所に買い物に行った時以来だろう。
手をつないで歩いているという事実だけでも彼を幸福な気持ちにさせるには十分だったらしい。
ゲラッチはkotoを半ば強引に引っ張ってイオンの奥へと進んでいった。


しかしkotoはぴたりと足を止めてしまった。
「どうした?琴美」
「人がいっぱいいゆ(小声)」
kotoはもはやゲラッチ以外の人間には聞き取れないであろうかすかな声でそう言った。
「うぅ…人間嫌い…」
たしかに店内には家族連れをはじめ人が大勢居た。kotoはゲラッチの手を逃れふいっと背中を向けてしまった。

「おのれ、シタラヴァ民共め…!」
ゲラッチはカラフルな銃を取り出した。子供が駆け寄ってくる。
「わー何ソレおもちゃの銃?」
「チート級スパイラルレーz・・・」
「それはだめ!」
kotoがゲラッチを制止した。

kotoはゲラッチの護衛付きでショッピングモールを歩くという奇妙な日常を体験していた。
2人はエスカレーターに差し掛かった。
「先に乗っていいぞ。」
ゲラッチがkotoにそう促す。しかしkotoは足を踏み出さない。
kotoはエスカレーターの動きを見つめた後、ちょんと一歩踏み出した。そして恐る恐る両足を段差に乗せた。
ゲラッチは妹にこんな癖があった事を思い出して謎の感動を覚えながらkotoの2段後ろに乗った。
そして今やっと2人の身長が同じくらいになっているのに気付いた。1段登るとゲラッチの方が高くなる。そして上階に到着しエスカレーターが平面になると、kotoの頭頂はゲラッチの顎くらいの高さまで下がった。
これを見てゲラッチは可笑しいような愛しいような気持ちになってしまい、後ろからkotoの肩をぎゅっとつかんだ。
然し。
「どわあ!」
天と地がひっくり返った。ゲラッチはkotoに腕を掴まれ捻り倒されていた。


「あ、お触りは厳禁ですよ?」

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998 :げらっち
2020/10/28(水) 16:41:00

ゲラッチとkotoはフードコートに到着していた。

「」

kotoは長時間の外出で疲労の極に達したのか既に小声を通り越し無声になっていた。しかしゲラッチには通じたようだ。
「そうか休みたいのか。じゃあこの席に座って。」
kotoを席に座らせる。

「せっかくだから何か食べようか。」
「うん。僕イチゴ食べたいな。」
ゲラッチは買いに行こうと背中を向けるがすぐに振り返る。
「さらわれないようにね。」
「たぶん…」

ゲラッチは苺のドーナツ3個とジュースを買って戻ってきた。
kotoはくつろいでいる様子で、結わえていた髪をおろし足をブラブラさせていた。小さめの椅子なのに足は床に届いていない。
「ほい。」
kotoはジュースの入ったグラスを持ってぎゅっと握った。かわいい。
そしてしばらく2人はもぐもぐとドーナツを食べていたが、やがてゲラッチがこう言った。
「おーーーい」
kotoはくすりと笑ってゲラッチの方を見る。
「はぁい?」

「あーんして。」
兄の唐突なお願いにkotoは真顔に戻る。
「やだ。」
「してーー!お兄ちゃんはこの日をどれだけ楽しみに待っていたことか!」
「何て言われてもやだからね」
「それならば我がチートパワーで洗脳してやろう!」
ゲラッチは机に足をダンと乗せグッと体に力を込めると、ダークゲラッチに変身した。
「わあ行儀悪い。メンズスターは退治しなくちゃね。」

「コミュニティアプリ起動!」
kotoはスマホを取り出し、彼女にしては大きめの声で叫んだ。

「病み上がりの武者!ガールズバイオレット!」

紫色のスーツがkotoの体を包んだ。若干身長がかさ増しされているようにも見て取れた。

「妹だろうと容赦はしないからな!」

「最初からそのつもりでーすぜ、おにぃ」

「チート級スパイラルレーザー!!」
ゲラッチのカラフルな銃から今度こそ光線が放たれ、kotoの背後にあったダストシュートを吹き飛ばした。
kotoは変身前とは別人かと思われるような身のこなしでそれをかわすとゲラッチの頭上まで飛び上がった。

「ン?」
ゲラッチは上を向く。

すると100本のナイフが落下し彼を襲った。

「捌かれろ!」

「この程度か、」

ゲラッチが腕をぶんと振ると、全てのナイフは霧散してしまった。こんなのは小細工にすぎないとでもいう調子だ。
kotoは猫のようにスタっと着地した。
おろおろとする客や店員をよそに、2人は睨み合っている。

「まだまだ甘いな。お前は兄であるこの私にいつまでも勝てん!」

「にゃー!絶対勝つ。」

「それじゃあいつまでも挑み続けることになるがいいのか?」

kotoは少し間をおいて頷いた。

「がんばゆ。」

ゲラッチは満足げにフフンと笑った。妹といつまでも戦えることがこれ以上なく嬉しいのだった。



おしまい

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