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93.MÖBIUSーThe next HEROー
 ┗11

11 :迅
2020/08/04(火) 15:50:14

第2話(承ノ後)

『犯人は逃走後、あちらのコンビニ前にて車を乗り捨て、そのまま店員一名を人質にーーー』

杜王町のコンビニ前にて、複数の警官が中に立て籠もる逃亡犯を取り囲んでいたが、中への突入を躊躇っていた。何故か?人質を取っているからだ。
犯人は逃げ遅れた女性店員を人質に取り、ナイフの切っ先の喉元に突き立てようとしていた。

「刑事、いつ突入を?」
「いや、まだ待機だ(……あの野郎、人質なんざこすい真似を……!)」

年若い警官が刑事に耳打ちし、刑事はいつまで経っても突入の時が来ない事に、思わず舌打ちした。
が、『キンッ』とステルス機のように静かな飛翔音に報道陣は音の方向へとカメラを向ける。
そして、その姿を見たリポーターは叫んだ。

『ご覧下さい!例の人物が現れました!』

けたたましい破砕音と共に、新型装甲服《メビウススーツ》を纏った燈が犯人が乗り捨てたと思われる車のボンネットに着地。車から飛び降り、入り口までゆっくりと歩を進める。
只ならぬ恐怖を感じたのか、逃亡犯は人質に取った女性にナイフを突きつけ、焦燥を露わに叫んだ。

「何なんだテメーは!?い、一歩でも踏み込んでみろ!近づいたら……コ、コイツをーーー」

しかし常盤燈。犯人の怒号など微動だにせず、ゆったりした動作で腕を交差《クロス》し、両腕に装備された柑子色に煌めく格闘兵装《メビュームブレード》を展開。
犯人に睨みを効かせると、怖気付いた犯人は尻餅をつき、その拍子にナイフを手放した。

「今だ!突入ッ!」

そのチャンスを逃すはずもなく、手放した瞬間を見計らった刑事は警官隊に合図を出し、突入した三名のうち二名の警官が犯人を捕縛、残りの一人が人質に取られていた女性を救い出した。
その手際の良さに、燈は心底感心する。

「(さすが警察、異星人相手じゃなきゃ遅れを取ることはそうそうないよな)」
「あ、あの!」

彼が心の内で賞賛を送り、その場から離れようとジャンプしかけた瞬間、後ろから声をかけられる。
後ろに振り向くと、人質に取られていた女性が、頬を赤らめながら燈に深々とお辞儀をした。

「助けて頂き、ありがとうございました!」
「礼は、貴方を助けてくれた警察の方に」

そう告げた燈は人間離れした身体能力で跳躍、メビュームブレードと肩部に搭載された推進器を使用して、現場から離脱していった。
闇夜に煌めく柑子色の光。報道陣のカメラは、飛び去る彼の軌跡をしっかりと捉えていた。

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