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93.MÖBIUSーThe next HEROー
 ┗6

6 :迅
2020/07/27(月) 21:25:44

(中編)

かつて、怪獣と呼ばれる巨大生物の侵攻によって地球は一度滅亡の危機に瀕したが、《星団評議会》の介入により一命を取り留めた。
その後、政府および評議会は怪獣による大規模侵攻を《ファーストアウト事件》と命名し、和平の実現に向けて《惑星間親交条約》を締結してから12年もの時が経った。

***

「……燈、最近変わった事はないか?」
「……どうしたの?いきなり」

帰宅後、父・総二郎からの突然の問いに燈は眉をひそめ、父に問いかける。すると総二郎はどこかバツの悪そうな表情を浮かべたかと思いきや、苦笑いしながら話題を途切らせた。

「いや、いつも通りなら良いんだ。すまなかったな、変な事を聞いて」
「別にいいよ。父さんも疲れてるだろうし」
「ああ、評議会の方々と会議中でな」

父はそう言い、普段吸わない烟草《タバコ》に火を付け、口に咥える。(タバコと言えば有害なイメージが付き物だが、近年品質改良がなされた。)
それを見ていた燈は、物珍しげな表情で呟いた。

「珍しいね、父さんが烟草吸うなんて」
「最近色々あるからな、一服でもしないとやってられんよ」

父はタバコを灰皿に押し付け、燈が耳にタコが出来る程聞かされた話題に切り替える。

「ところで燈、進路先の事についてだが……」
「またその話?俺まだ高1なんだけど」
「別に未来を見据えておいて損は無いだろう。何を目指そうと、それはお前の自由だが、《NEXUS》への入隊だけは許さんからな」

国連直轄の特殊部隊・《NEXUS》。
星団評議会から齎された新機構を用いた開発されたスーツを着用し、非正規移住者や犯罪者を取り締まり、時には要人警護も行う戦闘集団。
父も8年前までは《NEXUS》に所属していたらしいのだが、詳しい事は教えてくれなかった。

「それに、最近帰りが遅いと聞いたが?」
「別に普通でしょ。母さん、ご馳走さま」
「はーい、食器片付けてってねー」

父の長ったらしい話に燈は立ち上がり、食器を水に浸してリビングを後にする。
総二郎は彼の背中を見届けると、台所にて食器を洗っていた母がクスクスと笑いながら、寂しげな様子の総二郎に話しかける。

「あの子も遂に思春期かしらねぇ」
「かも……知れないな。……昨日、明音《あかね》と会って来たそうじゃないか」
「ええ、あの子も元気そうだったし、燈も……」
『臨時ニュースです。本日午後5時半ごろ、羽田空港付近で着陸直前の旅客機が突如爆破し、乗っていた乗客270名……全員が死亡しました。』

刹那、2人はテレビの画面に目を向け、空中で爆炎と共に分解する旅客機を目の当たりにする。
この報道は、あるべき日常の崩壊を意味しており、総二郎はかつての旧友に電話をかける。

『もしもし、久し振りじゃないか。総二郎』
「城戸……例のスーツの準備は?」
『もう完成しているよ、遂に……来たんだね』
「ああ。……願わくば、完成しても使う日が来ない事を望んでいたんだがな……」
________

「うっわ、凄いな……」

時同じく、燈は自室にて臨時ニュースを見ていた。それと同時にネットの掲示板を開くと、そこでは様考察など、様々な書き込みがあった。

『ヤバくね?w』
『これぜってー異星人だろ……』
『ワンチャン《星団評議会》の自演説』
>>125 割とあり得そうで草』
『これ警察と《NEXUS》のどっちが動くんだろ。異星人関連の事件だしやっぱNEXUSかな』
「さすがインターネット、拡散速いな」

彼は手早く状況を整理し、帽子を被りカメラを片手にリュックサックを背負う。特に意味はないが、彼自身ジャーナリストのアルバイトをしている以上、ただ単に特ダネが欲しいだけだ。

「(父さん、母さん……本っ当にゴメン!)」

心の中で目一杯謝罪した彼は部屋に隠しておいたスニーカーを履き、自宅から近い事件現場に向けて走り出した。

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