アマゾン

スレ一覧
93.MÖBIUSーThe next HEROー
 ┗7

7 :迅
2020/07/28(火) 20:24:23

(後編)

ー羽田空港ー

一方羽田空港前では、入り口に『Keep Out』と書かれたテープが貼られており、入り口に群がる野次馬を警官達が必死に抑えていた。

「皆さん!下がってください!」
「刑事さん!中はどうなったんだ!?」
「私の息子が!私の息子がいるんです!」
「何が起こるか分かりませんので!一般の方々は下がっていてください!」
「ちょっと失礼!」
「あ、コラ君!待ちなさい!」

野次馬を抑える警察のバリケードを飛び越え、燈は羽田空港の国際線の滑走路を目指す。時間帯は午後5時を回っていたが、夏場だったのもあってか外は少し薄暗い程度だった。
全便欠航となった滑走路を走り抜け、辿り着いた事件現場には、知らない何かがそこに居た。

『誰だ?』
「!?」

何者かの視線に射竦められた燈は体を急停止させ、本能的に威圧感を感じ取る。流線型のフォルムは地球人のそれとは限り無い程に遠く、一眼見ただけで『異星人』である事が分かる。

「(やけに流暢な日本語だな……)誰なんだ……?アンタは一体……」

強張る表情筋を落ち着かせ、燈は目の前の異星人にごく自然を装って問いかける。すると、異星人は目を逸らし、暫く思考した後……彼の方に振り向く。

『君に教える必要はない』
「それはどう言うーーーーー!?」

刹那、燈の右腕に激痛が走る。
燈はゆっくりと自身の右腕を確認すると、彼の右腕はグチャグチャに歪められていた。

「がっ……あぁあぁぁぁぁあああ!?!?!?」
『全身を潰したつもりだったのだがな……やはり君は、殺しておかねばならない』
「(こ、殺される………!?)」

焼きごてを押し付けられたような激痛に顔をしかめながら、燈は未だ経験したことが無かった本物の『恐怖』を、今日初めて体験する。
異星人は燈に向けて右手を翳し、その手のひらに収束した薄紫色の光はやがて光線となり、青褪めた彼の頭部目掛けて放たれた。

「うわぁあぁぁぁああああああ!!!!」

燈は迫り来る光線に悲鳴をあげ、恐怖に目を瞑る。しかし、光線は彼にあたる直前で金属音を撒き散らしながら四方に拡散、背後を爆発させた。

『なに……?』
「い、一体何が……!?」

彼はおそるおそる眼を開くと、目の前には、ロングコートを羽織った父・総二郎が立っていた。

「大丈夫か?燈」
「父さん……!」

総二郎はコートを脱ぎ、先程のビームを弾き飛ばした黒い装甲服を露出させる。そして、異星人と総二郎の2人は両者の腕を掴み合い、攻めぎ合う。

『フン……』
「貴様……!何故生きている……!?」
「(なんで余裕そうなんだ……?まさか!)父さん!後ろに下がってーーー」

異星人を睨み付けながら、鬼気迫る表情を浮かべた総二郎は問いかける。だがしかし、嫌な予感を察知した燈は叫ぼうとするが、遅かった。

「ガハッ!」
「父さん!」

異星人の胸部装甲から展開された複腕が総二郎を貫き、内臓を潰されたのか、複腕を引き抜かれた彼は地面に向かって大量に吐血した。燈は総二郎の下に駆け寄り、倒れ込む体を支える。
彼は重々しくと燈に目線を向け、幾度となく彼を育てて来た血塗れの手で、彼の頬を優しく撫でる。

「燈……無事か……」
「父さん!喋っちゃ駄目だ!今、止血するから!」

燈はタオルを取り出して患部に押し当てるが、内臓損失という重傷の為か血が止まる様子はなく、タオルが真っ赤に染まっていく。
異星人は総二郎を介抱する燈を見据え、挑発するような声色で彼に告げる。

『死んだぞ?お 前 の せ い で』
「……黙れ」

燈は抱き上げた父を離れた場所に寝かせ、怒気を孕んだ鋭い視線で異星人を睨み付ける。
すると、メビウスの輪のような光が彼を中心に半径数メートルを照らし、赤と燻銀を基調とした装甲服を見に纏った燈が光の中から現れた。

「初めてなんだ……誰かの為じゃなくて、自分の為に誰かを倒そうと思ったのは……」

彼は悠然と歩を進めながら右腕と意匠が異なる左腕を水平に構え、腕部装甲内に備えられた発信機が起動し、薄青い光刃が左腕に形成される。
そして、燈は大きく跳躍しーーー

「だからさ……俺はお前を、全力でぶっ潰す!」

落下の勢いに乗って左腕を振り下ろし、異星人の袈裟を大きく切り裂いた。

[返信][編集]



[管理事務所]
WHOCARES.JP