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93.MÖBIUSーThe next HEROー
 ┗8

8 :迅
2020/07/28(火) 21:46:14

(起承転結の結のとこ)

『グゥ……』
「おおおおおおおお!」

光刃は異星人の袈裟を深々と斬り裂き、異星人がようやく呻き声をあげる。燈は確かな手応えにほくそ笑むが、異星人の思わぬ反撃をモロに食らってしまい、上手く着地できずに地面を転がる。

「うわっ!ッテテ……!」
『辛そうだな』

その情けない動作の一つ一つを見た異星人は、まるで呆れ果てたかのように呟いた。

『まるで制御出来ていないようだが?』
「初めてなんだからしょうがねーだろ……!」

彼は軽口を叩きながら起き上がり、異星人が立て続けに放った回し蹴りを上体を逸らして回避、カウンターの前蹴りで異星人を弾き飛ばす。
再び構えると、燈の下に通信が入って来た。

『燈くん!聴こえるかい!?』
「城戸さん!」
『聴こえてるようだね……!燈くん!これかれ私の言う通りに動作を行うんだ!』

小さく頷いた彼は、城戸の言う通り左腕に装備されたユニットに添えた右手をスライドし、両腕で円を描き、右腕に展開したコネクターに左手首を十字になるように組み合わせる。

『これが君の、現時点における最強の兵装……人呼んで、《メビュームシュート》だ』
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええッ!」

燈の叫びと共に左腕から放たれた光線に対し異星人は防御の構えを取るが、光線は異星人ごと光の奔流が飲み込み、羽田空港滑走路から遥か上空を越えて中間圏にまで光の柱が聳え立つ。
そして、雲すらも吹き飛ばした光の柱が消え去ったそこには、耐え切れなかったのか半身を失い、ボロボロの装甲服を纏った異星人が立っていた。

「なっ……!?」
『どうやら……お前を見くびっていたらしい……』
「改めて聞くけど……お前は、一体誰なんだ?」
『私の名は《ボガール》。【宿命の敵】だ』

満身創痍の異星人・ボガールはそう告げ、霞のようにその場から消え去った。

「(宿命の敵……!?)それより父さんは!?」

戦闘を終え、燈は総二郎の方に眼を向けると、酸素マスクを着け、担架に乗せられて救急ドローンに運ばれていく姿に目に移った。
再生槽《カプセル》に入れれば問題無いだろうが、それでも油断は禁物だろう。

「(よかった……)でも、めっちゃ疲れた……」

そして疲労が重なったのか、燈はその場に座り込みながら安堵の息を吐くと、城戸が『お疲れ様、燈くん』と労いの言葉をかけてくれた。

『君も、行き先が決まったんじゃないかい?』
「そう……らしいですね」

城戸の問いに燈は頷く。

「父さん、俺……《NEXUS》に入るよ」

彼はヘルメットを外し、すっかり暗くなった満面の星空を見上げて、小さく呟いた。

次回
「就職」

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