本当に？

ここには木なんて何処にも無いのにって思いながら陽向を歩いた。遮られない事がすごく不安で、可視のすべてを信じるなんて出来っこなくて、それは、きっと、いつまで根付いているんだろう。

俺をかたどらないあれやこれやを火にくべて、上る煙をひたすらに見ていたいなあ。そうすればすぐに春は来るし、爪先は感覚を取り戻して、代わりに視界は滲むから。多くのものに見ない振りをして生きるから。
俺があの子を思い出す季節は決まって冬だったから。

陽だまりの端っこで花を愛でるような人生を夢見ていた。遠い戦地を思い涙を流せる人になりたかった。手向ける花の内側にこの世のすべての信奉をつめこんで、なんでもないんだよって揺れていたかった。

俺は、俺のしなかったことの何もかもを愛していた。

一番好きなものをいつまで一番好きで居られるんだろうって思います。
やりたい事だけを選択して得られるものなんてきっと無いんだと識って、
何だかとても見えない憶測に席巻されている。

つまりは自分で設定した筈のパスワードが解らなくてあたふたしたっていう話なんですけど。時間って恐ろしい。

いつもの時間いつもの電車に乗ったら中で犬が鳴いてて、何だかそれが物凄く悲しそうにきゅんきゅん鳴くからああきっと狭くて暗い檻で揺すられてるものだからなんて変に不憫な気持ちになって鳴き声の方向に顔を向けた。
犬じゃなくておじさんの吃逆だった。不憫なのは俺の頭だ、と思った。


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「眼鏡を持ってきて」と言われて財布を渡してた。疲れてるなんて自己暗示じゃもう済まされないですよねこれ。

見たことの無いマークが携帯の待受画面に鎮座し出したのは先月のこと。消し方も矢印に赤い×が付いたそれが伝えたい忠告文も解らないからまずはその意図の確認法を確認、しようと何時かに別れた取説と再会、しようと思って早半月。まだ押し入れすら開けてません。
何も問題なさそうだから良いかな、と思いつつ。あの人は大切なのに唯一の連絡媒体は大切にしないんだなあ俺、って他人事に俯瞰。



自分の思う事はその半分も相手に伝わらない、って言葉を発信する時の当たり前の理論だけれど、その前提でも今回は、やっちゃったな、と思う。絶対違う言い方があった筈なのに、あれは無かったなあ。後でもう一回謝ろう。

あの日のどこかに、
いちばん大切でいちばん愚かだった俺を、俺は忘れてきてしまったんだろうなあ。
薄れる色を繋ぎとめるように掬い上げて、
必死に抗おうとする様を滑稽だと見下ろして、
そうしてしか生きられない俺はまだ赦されようとして
撹拌したぜんぶを飲み込んで
消化できずにいつだって沈殿してる

間違えないように、選択をしてるつもりなのに結果的に伴う後悔はいつも多すぎて。もうそろそろ選ぶ事から逃避したくなってきた頃合いです。
とりあえず布団から出よう、俺。

(0404)

己の狭量を顧みずに誰かばかり許せないのは何なんだって話を部室でしてて、よく解らないけど真剣だなあ皆と思った。許せないひとも、許せないひとを許せない人も。だって俺、哀しい位なんでも良いですし。
怒らないことをやさしいねって言及されてもう居ても立ってもいられない。
(違う違う、鏡なだけなんです。)


窓ががたがた揺れて、遠くで何かが倒れる音がして、どうしてこんなに淘汰してるんだろう。いよいよ世界は浮かぶ気がしてる。