一旦目が冴えると中々眠れないから気紛れに少しだけ。

彼は体調が悪いらしい。
夜に返答が来ない事には慣れて来たけれど。
それでも、帰る頃に一通も反応が無い時や落ち込んでいる時、または具合が悪い時等は何処かで気に掛かってしまうんだろう。
こうして目が冴えて待ってしまうのは…俺の心配をし過ぎる性格故。
ちゃんと眠れているのだと思い込もうとしても中々上手くはいかないものだね。

俺の新しい立ち位置は止まり木程度に彼の役に立てていればそれで良い。
愚痴の捌け口から何気ない日常会話まで幾らでも付き合うよ、君の負担になりそうなら捨て置いてくれても構わない。

と、言うのは言い過ぎかな。

見ていてあの頃の彼の状況と何となく似ているな、なんて思ったんだ。立場だとか状況だとか全く違うんだけどね。俺の立場も前にもまして見守る側なんだけれど。どうか今回こそは良い方向になると良いな。今までの分も幸せになって欲しいと祈るばかり。
祈る事しか出来ない無力感もあの時と同じだけれど。

だからこそ、神も仏も信じない俺がキミの為に祈るよ。

まさか、今頃連絡が来るなんて。
驚きの余りに思わず飛び込みそうになって
慌てて踏み留まったのは此処だけの話。
だって、あの場所はあの子の場所で
俺の場所では無いからね。

真田が居ない間に少し事務的な物を済ませておこうと思ったのに、どうしようか話好きの職員さんに捕まってしまった。

と、思っていたら後から来た真田に標的が移ったので俺は退避。ふふ、この間に終わらせておこうか。

そして、街中で知り合いに似た人を見つけた。特に話し掛けるような間柄でも無いし間違っていた場合恥ずかしいのでそのまま素通りしたのだけれど皆は進んで話し掛けに行ったりするのだろうか。どの程度居るのか少し気になった。

あ、真田。開放されたみたいだな。

久々に開いた日記帳。

記す内容に溜息が漏れ
留守の間に消えた彼らの
日記帳に唖然としつつ
返せなかった言葉が
宙に浮いたまま。

どうか、元気で居ますようにと願う。

俺の歩みが止まるのは
彼の歩みも止まっているから。

俺があのクラスに留まっているのは
彼が居るただそれだけの理由で
それが俺の世界の全てで存在理由。
彼の居るべき場所の時間が止まったまま
余り機能していないなら。

同時に俺の機能も止まると言うだけ。

そして、其処に存在する筈の俺は
とっくに消えて良い筈の人間で
酷く曖昧なそのライン上に立っていて
既に居るのか居ないのかさえ曖昧だ。

それでも俺は其処から動く事もせずに
ただ―…視ている。

俺の名前と彼の名前が刻まれたクラス名簿
幾ら名前を辿ったとしてもそれは果たして
そこに存在していると言えるのだろうか。

駆け引き、言葉遊びで腹の内を探り合う。
戯れながらお互いにどちらが先に堕ちるか。
堕ちたら最後、もう後には戻れない。
タイミングを誤っても、成功しても、内に秘めても。
一度抱いた感情を持って完璧な友人に戻ろうだなんて
絶対とまでは言わないけれど相当な努力が必要。
まあ、駆け引きと見せかけて周りからは
案外筒抜けだったりするんだけれどね。

好きか嫌いかと聞かれたら好き。
寂しくないかと聞かれたら少しだけ。
そんなに付き合いがあった訳じゃない。
実際に顔を合わせたのは片手で足りる程度。
後は彼を通じて見ていただけ。

もしも、また機会があったならその時は
もう少しゆっくりと話をしてみたいと思う。

春は出会いと別れの季節だと改めて実感する。

突飛な行動と言うものは時に奇怪な行動と取られやすい例え本人にとってその行動にしっかりとした意味があったとしても。
それが気にならない程強い意志を持って行動出来たら世界は変わるのだろうか。

俺には清水の舞台から飛び降りる勇気はまだない。

俺は見守るしか出来ないから
本当なら意見なんて出来る立場でもない。
だから、勇気を出して行動したであろう
彼に幸有らん事を祈るだけしか出来やしない。

無意味な様にも見える俺の立場。