俺が夏を乗り越えようと頑張るのは、テニスの大会のためだけと言っても過言ではないと思う。
…テニスは別として、正直、暑すぎて他の事には集中できない。

寒いのは構わない。
冬は寒くても、それほど集中力ややる気を削がれないというか、確かに寒いけど、じっと我慢できる。

だけど夏は、駄目なんだ。


俺はあまり汗をかかない。
これだけ聞くといかにも神の子らしい、なんて思うかも知れないけど、これはかなり辛い。
清潔でいいなんて思ったら大間違いだ。

暑くなると身体の中に熱が籠もって、汗をかかないのに人一倍顔が赤くなったりする。
何度も経験しているけど、気持ち悪い事この上ないよ。

要するに体温調節が極端に下手なんだと思う。


そうは言っても、夏を越えなければ涼しい季節は巡って来ないし、部長がこんな風に我が儘を言っても仕方がない。
とにかく我慢しよう。


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台風のせいでとても天気が悪いのに、蒸し暑い１日だった。

帰りは早く帰宅しようとする人が沢山居たせいか電車が混雑して、狭い中では立っているのもやっとですごく辛かった。
…人混みと暑さだけはどうも苦手だ。
いい加減慣れなければと思うのに、どうして駄目なんだろう…。

それにしても雨が酷い。
怪我をしたりする人がいないといいんだけど。



…真田とは、もう終わりかも知れないと思いながら話をした。
終わりじゃなかったとしても、軽蔑されて、今までのようにはいかないんじゃないかって。
されて当然の事をしていた自覚だってあったしね。

だけど、俺の過去の話を聞いても軽蔑したりしないと言われた時、どうしようもなく嬉しかった。同時に申し訳無くも思った。


ありがとう、真田。
本当にありがとう。



真田に出会えて良かったと、心から思うよ。
こんな俺を必要としてくれて、ありがとう。


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>R-18！


真田の疑問に、答えようと思う。


…彼には二人目の恋人と別れて、少ししてから出会った。
忙しくてなかなか会えない恋人がいる彼は、その寂しさを紛らわすために身体を重ねる相手を欲しがっていた。

俺も寂しかったから、声をかけた。

話していると物腰の柔らかい彼は、俺に抱かれたいのかと思っていたけど、違った。
でもそんな事はどうでも良くて、程なくして彼は俺を飼い始めた。多分、ペットみたいな扱いだったんだと思う。


普段の穏やかさとは裏腹に、彼に抱かれる時は痛い思いをしたり、無理難題を押し付けられたりした。色んな事を強要されたりもした。
…だけど従順にしていれば、そのうちぐずぐずに溶かされるように気持ち良くなって、愛のない行為の虚しさすらも忘れさせてくれた。

彼も俺もお互いに依存しあって、でもそれだけだった。


それで半年くらいは彼と過ごした。
俺は恋人と別れた寂しさを次第に忘れたし、彼も俺を必要としなくなっていた。二人で話し合って、もう会わないと約束して別れた。


そのあと出会ったのが真田だった。
俺は確かに焦っていた。彼との行為に慣れすぎて、何もしないでは居られなかった。
真田はきっと俺に興味がないんだと、何処かで思っていたのかも知れない。

だから真田に「何でも受け入れるのが恋人じゃない」と言われた時は、正直過去を見透かされたようで怖かった。
…おかげで目が覚めたんだけどね。

全部全部、俺が弱かったからなんだ。……ごめん。

　
どうしてだかわからないけど、今日が週末のような気になっている。
体内時計や感覚がずれるのはよくないな。明日からしっかりと気を引き締めないと。



さて、どうして俺が出会ってすぐに真田に色々なことを求めたかっていう話だけど、これは過去にやり取りしていたある人との事があったからだと思う。

ただこれは…、どうなんだろう。

俺は別に過去の事を隠すつもりもないし、話してもいいと思っている。だけど真田はどうだろうと悩む。
あまりいい話ではないんだ。

こういう話を不快に思うようなら話さないし、気になっているなら話そうかなと思っているから、真田が決めてくれたらいい。



……少し短いけど、今日はこれで。


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暑さにやられてとても頭が痛い。
昨日まで涼しかったのに、今日に限って暑いなんて酷いな。

とりあえず練習試合の約束は取り付けた。
場所が分からなくて少し迷ったのは秘密にしよう。蓮二あたりに言ったら、俺も行けば良かったと言われそうだし。

…とにかく、俺はそれなりに方向音痴だ。




真田には、遅くなったけど紫陽花を贈ろうと思う。
何にするか本当に迷ったんだけど、真田が梅雨に紫陽花が咲くのを楽しみにしていると言っていたし、やっぱりこういう花は季節を感じられる。

花言葉は「移り気」「浮気」「辛抱強い愛」「無情」とあまり使いたくないような言葉が並んでいるけど、俺たちには関係ないと信じよう。
約束通り写真を添付したよ。




…花と言えば、真田は５月２１日生まれだから、誕生花は藤だね。
花言葉は確か、「決して離れない」だったかな。

この日に生まれた人は豊かな感性と平和的な心を持っていると聞いた。


うん、それは確かに当たっていると思う。


それから優柔不断な部分があって人生のチャンスを逃してしまう事があるとあったけど、それは違うな。

真田はいつも、大切な物をしっかりと見分けられる。
それだけの目もある。



俺は占いを全く信じない事もないけど、全て信じているわけでもない。
やっぱり当たったり当たらなかったりだと思う。


それにしても、誕生花は１つの日に対していくつかあるみたいだから、少し調べてみようかな。



ああでも、頭痛薬を飲むのを先にしよう。


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真田、



さなだ、





…弦一郎、





…………会いたい。







忙しいんだろうから、迷惑にならないようにしたい。
でもやっぱり、寂しい。

我が儘を言うつもりはない。独り言だから気にしないで欲しい。


…そうは言っても、こうして言ってしまう事自体が、もう既に真田を困らせているのかも知れないね。
気持ちを切り替えよう。


優しい真田は俺の我が儘を聞いてくれるけど、いつも大変じゃないはずがない。

前は毎日学校で会えればそれでいいって、思っていたのに。
それ以上を望むなんて我が儘だ。


だから俺は願うよ。






…明日も真田が幸せでいられますように。



俺が幸せにしたいとは思うけど、できると言い切れるほど思い上がるつもりはない。
何でもいい。誰でもいい。
真田を笑顔で、明るい気持ちにしてくれたら。


神の子が願うんだから、叶えてくれてもいいだろう？

…どうか、叶うといい。


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約束通り、妹と一緒に蛍を見てきた。

たくさんの蛍が居たから暗い中に幾つもの光が浮かんで、流れ星みたいに見えたのがすごく綺麗だったよ。
年に一度、この時期にしか見られないのは勿体無いけれど、それでいいような気もする。

来年も再来年も、変わらずに蛍が見られるような、何気ない日常が続けばいい。
心からそう思ったよ。



…ようやく一週間を乗り越えて週末になるけど、今度の日曜日は他校に練習試合を申し込むために出かけなければいけない事を、今日の昼に思い出した。

あまり日差しの強い暑い日にならない事を祈ってる。



そういえば、最近は寝つきがだいぶ良くなったんだ。
夜中に起きる回数も減ったし、前は極限まで眠い状態でも眠れなかったのに、あんまり眠い時はすとんと眠れるようになった。

よく眠れた次の日は気分がすっきりして、とても過ごしやすい。
真田、ありがとう。



それから真田が、猫になった俺の話をしていたね。
ふふ…、恋人同士もいいけど、真田が可愛がってくれるのならペットもいいかも知れない。

…にゃあ、なんて鳴きながら、真田に構ってもらいたい。

なんてね。
やっぱりちょっと…恥ずかしい。


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日記に悲しい事は書きたくない。
そう思って何か別の話をしようと考えたけど、何も浮かばなかった。少し頭を冷やそうと思って、昨日は日記を書かなかった。いや、書けなかった、と言うべきかな。
毎日書いていたのが途切れてしまったのには心が痛んだけど、おかげでいつも通り笑えそうだ。



…今夜は妹と、蛍を見に行く約束をしている。

近所の公園のビオトープに、誰かが放しているのか、毎年かなりの数の蛍がいるんだ。
また夜に詳しく書こうと思う。



……真田、少しは休んでくれたかな？
頑張り屋の真田が何事も真剣に取り組む姿は好きだけど、もう少し自分を大切にして欲しいとも思う。たまには自分を甘やかしてもいいと思う。


俺は俺で、少しでも真田の負担にならないように、何をしたらいいか考えよう。


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真田が教えてくれた曲を聞きながら、日記を書くよ。
…どんな花の写真を撮るかすごく迷っているから、少し待っていて欲しい。ごめんね。



時々、本当に時々だけど、どこか遠くに行ってしまいたくなる。
多分疲れているんだと思う。
身体よりは、心が。

俺は無駄な事に心を使うのが好きじゃない。
例えば、言っても聞かないような人に対して怒ること。

いつかは変わる、それを信じて訴え続ける。それはとても大変だと思う。
誰かを怒るのは、疲れる。

だから俺はどうしても、笑って許す方に逃げてしまうんだ。
許す方が何倍も楽で、何を言っても変わってはくれない人に苛々する事もない。自分の言葉に傷ついた人の顔を見る事もない。


俺は多分、ずるくて冷たい人間なんだ。
……分かってはいる。だけど、笑顔で居る方が皆も気分がいい、なんて尤もらしい事を言って逃げている。


最近こんな事ばかり考えている俺には、真田に合わせる顔がない。

俺の事を綺麗だと言ってくれた真田を、裏切っているみたいな気分になる。



ごめん。


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>半注意！



真田がピアノが好きだと言っていたからかな。
何となくピアノに触りたくなって、弾いていた。

この前、週末の音楽番組で流れていた流行りの曲。
俺はあまりクラシック以外は聞かないし滅多にテレビを見ないから、曲名やアーティストは分からない。
でも耳に残っていたから弾いていた。

自分の好きな、クラシックの曲。ベートーベン、ショパン、それからブラームス。


ピアノを弾くのは楽しい。
自分の知らない世界に引き込まれるんだ。作曲家が見ていた世界が見える。


…音楽は、時間芸術だ。
消えてしまうものの儚さや美しさを、いつも感じる。


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