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スレ一覧
┗1504.マチネの前夜(6-10/126)

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10 :アベンチュリン(崩壊:スターレイル)
2024/10/04(金) 22:50


かくれんぼくらいは子どもの頃に経験があるかもしれない。「誰しも一度は」という常識すら当てはまるか危うい彼女だけど、兄さんも、それから幼馴染もいたようだし。でもあんな悪戯は、もしかしたら初めてだったんじゃないかと思ってるんだ。自惚れは時に真実を見抜く、さ。

物陰に隠れて、そっと息を潜めて、僕に見つけてもらおうと胸を弾ませる…そんなかわいい相手が今の僕にはいる。もう縁のない遊びだと思ってたのに、あんなに楽しいかくれんぼは初めてだった。彼女の、心から楽しそうな笑い声がいつまでも耳から離れない。
眩しい舞台に立たなくても、背筋を伸ばして微笑まなくても、彼女の魅力は人の心を掴める。それを誰一人知らないなんて、ああ、かわいそうに!薄暗い迷路のような衣装部屋で、僕だけが知ってしまったよ。



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9 :アベンチュリン(崩壊:スターレイル)
2024/10/04(金) 22:50


誰とキスをしたことがあろうと、相手が齢八十の紳士だろうと十になったばかりの子供だろうと、そんなことで彼女を嫌いになるはずがない。そう言えばそれで良かったことだろ?……くそっ…、うっかり気が緩んでたんだ。あんな格好悪いところを見せるなんて。
でも、頭をぶつけでもしてこの記憶を失ったら、あらゆる方法で僕の機嫌を取ろうと懸命だった彼女のことまで忘れてしまう。それは大損だ。

僕の態度に振り回される姿がかわいかった、そう言ったら意地悪になってしまうかな。だから少しだけ、最後のほんの少しだけは、拗ねたふり、だったんだ。

スプーンで掬ったゆでたまごは悪い子の証拠。寝室を出る時にはもうすっかりご機嫌さ。
ロイヤルフラッシュを開く瞬間の、何十倍も価値のあるもの!新しいドレスに着替えた彼女が僕を待っているからね。



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8 :アベンチュリン(崩壊:スターレイル)
2024/10/04(金) 22:50


寝室で食べる朝食はやっぱり気楽でいいものだよね。マナーの完璧な彼女の所作を見るのもなかなか楽しいし、すぐ隣にいるからパンも食べさせてもらえる。

窓辺に座って池や薔薇の庭園を眺める時、そこにいた彼女が、今は肩の触れる距離にいる。絵から抜け出してきたご令嬢が紅茶のカップを傾けている、そんな変な想像が一瞬過ぎったりもしてさ。姿勢良く座る彼女を、左隣の少し後ろから見つめる時の…頬の輪郭を隠す巻き毛や鼻の形、伏し目がちに見える横顔が、たまらなく愛おしかった。
でもその絵画の、柔らかな抱き心地と燃えるような熱を知ってる。僕の言葉ひとつでカップやスプーンの音を立ててしまうことも、鳥の歌うような声がどうすれば女の声になるかも。

バターやジャムつきのパンに半熟のゆで卵、湯気を立てるレバークネーデルのスープと、淹れ立ての紅茶。彼女の砂糖はふたつ、僕はひとつ。どうでもいいようなことだけど、でも、なんだか忘れられないような気もするよ。
彼女との戯れに夢中になって残されたままになった、かわいそうな朝食たちだったから。



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7 :アベンチュリン(崩壊:スターレイル)
2024/10/04(金) 22:49


真っ白な体に可愛らしいリボンをつけた、甘えんぼうの子猫。まさにそんな感じじゃないかい?窓辺のカウチに小走りでついてきたり、僕が手遊びするピアスを視線で追って目を輝かせたり、そっくりだと思うんだけど。
何より、朝食までの暇潰しに遊んだあのゲーム。右か左か、選ぶというよりボールの転がった方へ飛びついてくる猫みたいで、久しぶりに腹の底から大笑いしちゃったよ!
ただゲームを楽しみ、躊躇いを知らないあの潔さ。ギャンブラーの素質は十分だ。僕たち、とっても相性がいいね。

でも、無邪気な子猫が盲目の姫君に変わる瞬間の、あの歌声を聴いた胸の震えをどう言い表したらいいんだろう。盲目の『イオランタ』が生まれた瞬間から、彼女に寄り添う暗闇?それとも彼女に光の世界を与える医師か、あるいは愛を交わし合うひとりの男?そのどれにもなったような、不思議な気分だったよ。
僕がゲームに勝つのは最初から分かってた。だから、欲しかったのは勝利じゃない。より強く、全身全霊で、「あなたがほしい」と僕を求めるさせること。そしてそんな自分を、彼女自身に選ばせることさ。



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6 :アベンチュリン(崩壊:スターレイル)
2024/10/04(金) 22:49


僕の気を惹きたかったのか、それとも困らせたかったのか。何にしても彼女の作戦は大成功だったと言える。僕が着替えの最中じゃなければ、あるいは息を整えるタイミングが見つからないままだったら、もしかしたら衝立の影から犬のように飛び出していたかもしれない。

「なんだか胸が苦しくて…」

なんてさ。白い肌も露わな乱れたドレス姿を想像させられてしまったら、ほんとうならもうおしまい。こんな時ですら、僕は幸運だったんだ。

たとえ嘘だと分かっていても。その嘘に騙されたいと思う男はいくらでもいるはずだ。
彼女に左耳のピアスを着けてもらいながら、少しだけ思ったよ。騙されて、プライドを捨てて馬鹿な姿を晒してしまっても良かった。僕の靴に触れそうな彼女のヒールの先を見て、なんだか甘い気持ちになったせいかもしれない。



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