自ら服を脱いでみせる仕草ってすごくそそる。そのくせ、恥ずかしそうに目を伏せて…それでも僕のためなら躊躇わない。そんなところがたまらなく可愛いんだ。
あの装いの彼女が可愛くて、脱がせるべきか否か…なんて迷ってた僕とは大違い!
指先から手の平へ、ゆっくりと僕の胸に触れる肌が温かかった。お互いに思うまま相手に触れる。気持ち良いのにもどかしくて、どうすればもっと近付けるのと囁いた彼女の声が、まるで僕自身の声のようだった。
「あなたのものじゃ、ないの?……全て、あなたのものにはしてくださらないの…?」
これからほんとうに僕のものになるんだよ。そう言ってもはっきりとは分からないふうに、重なる肌の柔らかさで訴えてくる。その抗議の仕草は、甘くやさしい媚態と裏表だ。
服の脱がせ方が分からず、手間取った上に本人に手伝ってもらって、「ああ!そうなんだ!」なんて馬鹿みたいな反応をしてしまった。普段ならもう少しスマートに、うまく誤魔化せる方へ導く自信があるんだけどね。
取り繕えなかった。違うな、取り繕わなかったんだ。くすぐったそうな笑い声が優しく響いて、そんな情けなさも許してくれると…感じたのかな。
深緑色の胴衣を脱がせてみたら、可愛らしいと思っていたブラウスが予想よりずっと扇情的だった。でも、何より僕の胸を高鳴らせたのは、やっぱりあのとろけるような瞳だ。
歯が当たらなかったのが不思議なくらいだよ。ねえ、唇が真っ赤になるほどのキスをまたしよう。理由も言い訳もいつの間にか必要なくなった、ただのキスをさ。
「ふふ、仕方ないわ。こんなに酔っているんだもの… 、わたしが脱がせてあげないと…。」
グラスに注がれたワインも、唇から唇へ移されるそれも、どちらも味に変わりはないって頭では分かってるんだ。分かってるのに、頭以外のすべてが安物のワインを世界一の高級酒だと訴える。たとえばあの深みのない色は、彼女の赤い舌のように色めいて見えた。
いや…待てよ、もしかしたら錯覚じゃないのかも。ねえ、君っていつも、なにか蜜のようなものでも口に含んでいるのかい?目を閉じていても、吐息の甘い香りが分かったよ。
口移しのワインに酔ったから、一人で服も脱げない『赤ちゃん』になってしまっても仕方ない。
小さく笑った声、擦り寄せられる頬やおでこのキスに甘えてしまいたくて、それ以外はもうどうだって良かった。目の端が熱かったのは、アルコールのせいか、彼女の手が僕のシャツに触れるのを待ち侘びていたからか…どっちだったんだろう。