「そんなに空っぽのグラスが恐ろしいのなら。それを……君の中を、僕で満たせばいい。今のようにね。」
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大切にしていたお人形と、栞を挟んだ詩集。マイヤーリンクの白樺木立で見付けた、愛らしい蝶々たち。幼いわたしが箱の中に閉じ込めたもの。あの箱は、開けるべきではなかったのよ。何故なら、美しいものはより味気なく、輝きはこの世の外へと消え失せてしまうから。
だけど、あなたの言葉は、ここに。
美と永遠はともに過ごすことは出来ないけれど、記憶として、記録として、こうして形に残すことは出来ますもの。あなたの言葉は、わたしの存在喚起力。名辞の中に花が咲きこぼれているように……あなたとわたし、未完成の物語の中で、永遠に息衝いていられますように。