「はい、火傷するほどではなさそうだけど…気を付けて。」
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温かなミルクを口にするのはいつ以来かしら。
彼はわたしのカップにふうふうと小さく息を吹き掛けて、熱を冷ましてくれたの。お母さまも、わたしが子供の時はそうしてくれたかもしれないわ。だけど…、それは初めて見る光景のように優しくて、温かくて。まるで幼い憧憬を一幕にしたみたいだった。
いつも、銘々に灯る明かりを眺めていたの。温かそうな光の中にわたしも入りたかったから。ぽつぽつ並んだ小さな窓の中では、きっと誰もが舞台の主役で、それぞれの物語があるんだわ。そうして今、わたしもこの十字窓の中であなたと生きていることを実感しているの。温かいミルクを飲みながら、ふたりでひとつの燈火に。