初めは「ドーナツの穴」。ドーナツの穴の本質はどこにあるのか?ドーナツの穴はどこまでなら存在していると言えるのか。そんな正解のない問いに答える、ただそれだけのシンプルなゲーム。いわゆる思考実験みたいなものだろうね。凡そ十数個の問いのなかで、とある例え話を用いた質問にぼくはほんの少し頭を悩ませた。
扉の形をしたワープ装置があるとして、そのワープ装置は扉をあけた瞬間ぼく自身を完全に分解する。それから分子レベルですべて別の場所に移動し、再構築される。そのとき、ぼくの命は連続していると感じるか、否か。命そのものを指すのであれば死んじゃあいないんだから連続しているとして、……しかし一度分解されて再構築されたその「ぼく」は果たして元の、この岸辺露伴であるのか。なんて疑問が残るんだよなァ。命は命であるけれど、ぼくの人格的存在を含めぼくの命と称するのだとしたら?再構築されたあとのぼくが本当に「ぼく」であることを証明する手段がない限り、ぼくという命は既に死んでいるかもしれないんだからさ。──とかなんとか色々考えたが、答えのない問題に思考を割いていてもそこで一生躓いてしまうので、(そして面倒臭いので)とりあえずヤツが「連続してる!してるしてる!」と即答していたからその通りに突き進んでおいた。
その次にプレイしたのは、Refind Selfという性格診断ゲームだ。チュートリアルも目的も何もないゲームをプレイヤーは思いのままに操作して、その行動の数々が記録され、記録をもとにプレイヤーの性質をはかる。ただ「落ちているアイテムを拾う」という行動ひとつですら判断基準になっているようで、ヤツはいわゆる「効率厨」の片鱗があるからそういう側面もしっかり診断されるんじゃあないかと思ったが、結論から言うと案外そうでもなかった。後から同じくゲームを終えたプレイヤーとどれくらい行動がシンクロしていたか。同じ行動に違う行動などを見比べられたりと、それこそ友人や恋人同士で遊ぶのにも適しているかもしれない。ぼくとヤツで見比べてみたとき、同じ行動に「屋上から飛び降りた」があって、ぼくらはどうにも危険を顧みず好奇心に従うタチなんだなァ……と複雑な気持ちになり、それから異なる行動でそいつが「壺を2回割った」「150回掘った」「花を8つ拾った」「室外機を合計3回調べた」と手当り次第目に入ったものをひたすら調べているところを見て、そのうち落ちてるものを突然拾って食い出したりするんじゃあないかと不安になった。どちらも最も象徴する性格は「侍」らしく、その他補足する性格なんてものも概ね一致していたにも関わらず行動シンクロ率は29.33%という微妙な数字だったのも非常に興味深かったね。このまま互いに我が道を進んでいけばいいんじゃない。どうせぼくらの終着点は一緒なんだからさ。
ヤツとその友人がセクシーに聞こえるがセクシーではない言葉を題に沿って言い合うなんてどこで覚えたんだか分からない遊びを始め、「お」から始まる言葉というお題を出されたとき、じっくりと考えるように、けれどもすこしの間をもって──── 「おっぱい」と。そいつは口にした。オイオイオイオイオイ、趣旨をまるで理解できていないじゃあないかッ!それまではガキみてえな遊びしやがってと傍観していたのに、思わず違う違うそうじゃあないちょっと待ていとぼくの心の中の鈴木雅之とノブが総ツッコミしだした。モロだからなそれは。いや、ただの乳房そのものがセクシーに感じるかどうかは議論の余地があるが、だとしてもなァ、この場においてその単語を持ってくるのはダメだろ。ちなみにその後の「う」には「ウコン」と答えていた。な〜にがセクシーだッ!おまえもう船を降りろ。
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