このノートにエースの名前をあまり出さないのは、その。あまりエースがエースがって書いてたら、好きなのバレバレになって恥ずかしいって割とそれだけの理由なんだが……好きなのは……もうバレてるな……？って、今気づいてしまった。
　でもやっぱ恥ずいからノートじゃ今後も基本あいつ呼ばわりさせてもらおう。

　おやすみ、エース。

　寝顔を見るのが好きだ。僕の前で気を抜いてガン寝できるってぐらい、気許してくれてんのかなって思うから。そういう想像でホッとする。……あと他にも、きっと誰にも見られていないからホッとできるとこもあるんだろうな。後ろめたいことをしただとかそういうのじゃなくて、ううん。上手く伝わるんだろうか。いい意味かどうかはわからないが、悪い意味じゃないはずだ。
　今日はきっと夜が長い。

　前にも一度書いた気がすることをもう一度。
　一緒に夜を過ごすようになって、いつしか僕と同じ寝方で眠るようになったあいつを見て生まれる気持ちが僕にとっての「いとしい」だと思った。
　付き合い始めのあいつは「好き」も「恋」も「愛」も「いとしい」も、自分で見つけてほしいとかそんなことを言っていた。いろんなことが分からなかった僕にあいつは「それが好きってことだよ」とか、マジで教えちゃくれなかった。当時の僕にとってはなかなかスッキリできなくて大変だったけれど、少なくとももう「わからない」じゃなくなったなと思う。

　……僕にとっての「好き」は昔このノートに書いていたみたいだ。今の僕が思うものもいい機会だから記録しておくか。
　さびしくなるのが僕の恋で、守りたいと願うのが僕の愛で、そんできゅー……って少しだけ苦しくなるのが僕のいとしい、だ。

　守りたい、大事にしたいとは別に噛みつきたいとかそういう衝動が起きたりするもんだから、大変だしめちゃくちゃ困るんだけどな。本当、マジで困る。

　あいつの隣を陣取るのに相応しい僕でいたいとか、理想の恋人になりたいとか、色んな意味であいつを喜ばせる僕でありたいとか。言ってしまえばきっと俺は僕に対する理想が高い。理想と自分の考えが食い違ったり一度崩れるとあとはまああっという間で、常にどのカードを切るのが正解なんだって賭けてもないはずなのに、択を迫られているような気分から抜け出せなくなっちまう。
　「いいよ」って言ってくれるあいつの目の前で、「もう許されない」って考えが止まらない。優しい言葉を素直に受け取れないことがまた嫌になる。

　僕ってダメダメなんじゃないか、期待外れなんじゃないか、今の自分に付き合わせるのはどうなんだって嫌な自問自答を繰り返すたびに「すき。」って頭ん中のあいつが即答する。どんなに気分がヘコんでいても変わったりしないのはそれをたくさん教えてくれたからなんだろう。調子に乗ってると思うし、頭ん中で「サイコーじゃん」ってまた笑う声が聞こえる。
　こんな僕を叱りながら愛してくれている。忘れていた歌を思い出してうっかり鼻の奥がツンってした。……危ない。

　僕も大概だが多分怖がりなのはあいつの方で、それを僕は忘れちゃいけなかったんだ。そう反省できたのは一日経ってからだった。

　「ホワイトデー、贈り物」で検索して「絶対喜ばれる！」って謳い文句の一覧だとかそういうのを見ても何か違えな……何でだ……って思ったら、そもそも前提が女の子に贈る用だからか。どうりで可愛いテディベアのぬいぐるみとか出てくるわけだ。渡したら多分あいつ困惑するか爆笑するぞ。
　バレンタインデーといったらチョコ、みたいなものがホワイトデーになくてどうしよう。お菓子渡すにしても種類とか味によってそれぞれ細かく意味があるようだから、こんなのヘタに手が出せないじゃないか調べなけりゃよかった……！！　

　バラの出現マジック。どうせやるんだったらカウンドダウンなりアップなりすればよかったなって今更思う。元々手品が得意って言ってる奴に披露するってド緊張しないか……？花びらが中で折れたりせずに上手く出てくれてほっとした。
　贈り物に悩みまくって僕がもらって嬉しかったのは何だっただろう？と考えて、思いついたのがひまわりだった。あいつの誕生日に監督生と計画してボツったのもこれで活かせたし、三倍返しも出来たから僕としては大成功だ！
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　「リボンは上手く入れられなかったから結ぶのを止めた」とか、気を抜くとせっかく作ったムードやロマンをぶっ壊す癖は相変わらず治ってない。でも笑っていたからそれで別にいいんじゃないかとも思う。