彼女の文字であたらしいページが埋まってることを知ったのは、ここを離れてからだった。
俺がいかないとエダがぎせいになると聞いて、いやいや行くことにきめたけれど、ほんとうは一秒だってはなれたくなかった。彼女の手をはなすなんて考えられなかったから。
みんなの前では気丈で、俺が守ると言っても自分が守るってきいてくれないような彼女が、ひとりの時間に泣いてしまったっと聞いて、すごく焦った。はやく戻らなくちゃって強く思うのと同時に、俺のために泣いてくれるんだって考えたらうれしくて、いとおしくて、気づいたら抱きしめてた。それから、すごくわるい人間になった気分だった。
俺は彼女がいないと生きていけないけれど、それは彼女だって同じなんだ。やっぱり俺たちは離れて生きてなんていけない。ふたりでひとつ。そうでしょう?大好きだよ、俺のお姫さま。
エダとひさしぶりのデートは、やっぱりすごく楽しかった。ふたりで手をつないで、いっしょにいられる時間が俺たちにとってしあわせだから。新しい服でも、またデートしようね。
そういえば、新しいが服あたえられるって聞いたとき、俺の服のデザインを知ったエダが目をかがやかせて、たおれそうになっていてびっくりした。彼女にも新しい服があるのに、彼女自身の服にはちっとも興味を示さないんだから。俺に夢中でいてくれるところも、すごく大好きなんだ。
はやく服、もらえないかな。そうしたらエダがよろこぶのに。
オセロはいじわるなんだって笑ってた。彼女の笑う顔が、すごく好きだ。
エダにはひみつがある。
ただしくは、俺だけが知っているひみつだ。俺だけにむけられるやさしい顔や、あまい声に、しあわせにみちた顔、それから意識をうしなったとき。目をさましてから、心配そうに聞いてきた彼女のことを思いだしては、つい顔がにやけてしまう。いまは、安心して身をゆだねてくれるから、そういう変化って、すごくうれしい。
いつか、彼女の不安をすべてぬりかえて、この世から消してしまえたらいい。そのためなら、俺はなんだってするよ。エダ。俺の、とくべつで、いちばんで、だいすきな、たったひとりのひと。
彼女がいつもつけている、治りょう記録。なんて書いてあるのかはわからないけれど、それとは別に俺たちふたりの記録をつけている。
どんな気分だったか、今日したこと、それから聞きたいことや、伝えたいことを簡単に。ふたりで撮ったシャシンをはる日もある。あまったスペースには、記録へのコメントも。
日記とはちがってスペースが少ないからか、いそがしい彼女も毎日記録をつけられるみたいだ。待つのをじれて、ほほをつついてくるエダはむしゃきな顔をした俺だけの女の子になる。それが、すごくかわいい。
ここにきて、エダとペットを部屋でかうことになった。俺たちの子どもみたいだねって言ったら、「なら、子どもの成長記録もつけましょうか」と、うれしそうに笑った。
だから、記録のシャシンはたまに、ペットになる。とは言っても、それだけを写していることはなくて、ペットの相手をしているおたがいの姿がメインだ。この間はうまくとれなかったみたいで、思い出にのこしたいのにって、もらす彼女はとてもかわいかった。俺しか知らない『くせ』も、かわいい。
うまくいかないことがあっても、抱きしめて、エダの不安を拭いたい。ひとりなら耐えられない、いたみも、苦しみも、ふたりでなら耐えられる。そうでしょう?エダ。