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37 :心理_学者(Iーden_tity_V)
2023/07/22(土) 03:12





自分が綴る時は書き出しすら迷ってインク染みを作ってばかりの癖、燻らせ始めると我慢が出来なくて。彼の愛らしい字面見たさにペンを置いて、直ぐこの本棚へと足を運んでしまう。……本末転倒にも程があるわよね。
綴られた頁に少しずつ、その時々の気持ちが書き足されていくのが楽しみで、つい覗きに来てしまうの。ゲーム所ではないのよ。


昨晩、彼は不調で伏せっていたの。日中の暑さの所為で気分が悪くなってしまったようで、涙を浮かべて熱に浮かされる姿はとても痛々しいのに、譫言みたいに一生懸命好きを伝えてくれる声は蕩けていて、眠りたくないって寂しさが滲んでいるようだったわ。遠慮がちだから、普段は私が窺うまで不調を伝えるのを我慢している事も多いのだけれど……、可哀想に。代われるものなら代わってあげたかった。


彼って足音まで可愛らしいのよ。私が声を掛けると同時にお部屋の奥から物音がして、それから待ち切れないって気持ちに拍子を付けたみたいに上機嫌な、それで居て弾んだ音が飛び込んでくるのが堪らなく愛らしい。毎日毎日胸が締め付けられる心地。ベッドの上が集められた私のお洋服でぐしゃぐしゃになっているのがまた愛おしいの。


でも、今夜は私が彼のお洋服を掻き集めてベッドの上で引き篭る番。


今朝も本調子では無かったのに、エミールがナイチンゲールに呼ばれてゲームに連れて行かれてしまったわ……。報された時は心臓に冷水を浴びせられたみたいに絶望的な気持ちで、寂しくて寂しくて駄々を捏ねてみたけれど……、彼ったら嬉しそうにしていたんだから!強請ったらゲームになんて行かずに私と一緒に居てくれると思ったのに!もう、もうっ!私からエミールを奪うなんてどういう神経をしているのかしら!信じられないわ!


……憤っても泣いても、年甲斐無くじたばたしてみても満たされない。私達は二人で一緒に居ないとダメになってしまうのに。寂しい。彼が居てくれないと生きた心地がしない。私がお洋服をべたべたにする前に帰ってきて……。

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36 :患_者(Iーden_tity_V)
2023/07/18(火) 00:54


今日のデートもすごく楽しかった。
デートの前には着せかえごっこをして、いつもとはちがうデートコースを通ってみたり、手をひくのはどっちだって遊びをしてみたり。
エダと一緒にいられる時間はしあわせにみちてる。それはいつだってそうだけれど、ゲームのあと、きずをおった俺の体を消毒しながら、泣きそうな目をした顔にすこしこうふんしてしまう。彼女のほうがいたそうで、だきしめながら「エダがきずつくのはいやだから」っていうと、決まって「私も、あなたが傷つくのは嫌よ」ってキスをしてくれる。そのキスだけで、いままでの痛かったことも、いやなことも、ぜんぶ頭から消えてなくなってしまうのに。
それでも、きっとエダは首をたてにはふらないんだろう。俺にとって彼女がたいせつなひとであるように、エダにとっての俺もたいせつなそんざいだから。俺は忘れないよ。エダが、それを忘れないでいてくれるように。
きみのそんなところも、すごく大好きだ。



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35 :患_者(Iーden_tity_V)
2023/07/15(土) 21:09


いつからってラインが、ほかの人間にはあるんだろうか。
ふと、そんなことを考えた。彼女以外のやつらに興味なんてない。ただ、だとしたら、いつ、どんなふうに、そうだと決めるんだろう。本にはそれらしいことが書いてあったけど、俺にはそのちがいがよくわからなかった。読み書き、前より上手になったってエダにほめてもらったのに、むずかしい言葉がおおくて、うまく読みとれなかったのも事実だ。いい。しょせんは、彼女のいない、死ぬほどたいくつな時間をやりすごすための手段でしかないから。

なんだったっけ?そうだ。愛情にはしゅるいがあるんだってはなしだ。俺にはエダしかいないから、しゅるいのはなしはよくわからない。愛情をぶんさんしたら、わたす好きがへってしまうのに、どうしてたくさんの好きを持つんだろう。こころから愛しあっていれば、ほかになにもいらないってことを知らないんだ。「かわいそうな人間なのよ」、エダならきっとそう言う。
好きも、大好きも、そのほかの言葉であっても、彼女に愛情をつたえる方法でしかない。わかりやすい言葉っていうだけで、そこに差なんてないはずなのに、どうしてだろう。よくよく思い返すと、俺はエダにそれを伝えたことがない気がする。いつも、気持ちがたかぶったときは、たくさん話をする。つたえきれないありったけの好きを、ゆきみたいに積もらせて、だきあって眠る。
伝えたら、よろこんでくれるだろうか。あの、女神みたいな顔で、笑いかけてくれるだろうか。でも、このページを読んだエダの待ち通しそうな顔を見るのも、きっとしあわせに違いないって思ったら、なんだかもったいない気もする。

ほんとうに、俺はしあわせそうに笑うエダの顔が好きなんだなぁ。うん、好きだ。大好き。



けっきょく、言っちゃった。
ほんとうは昨日からうずうずしてたの、知らないでしょう。エダの顔を見たらがまんなんてできなくて、気づいたら口にしてた。
言葉に差なんてないけど、でも、彼女のしあわせな顔が見られて、俺もすごくしあわせだった。このさきもずっと、きみのことが大好きだよ。エダ。



俺だけにやさしくて、いつまでも大切に思ってくれるきみが大好きだよ。エダ、心配かけてごめんねって言ったら、謝らないのってキスされた。大好き。



何度でも、毎日だってきみに恋してるよ。出会ったころからずっと。エダは運命のひとなんだって、あの日わかったから。



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34 :患_者(Iーden_tity_V)
2023/07/09(日) 11:01


エダはいつかの本で読んだお姫さまなのかもしれない。
だけどキスでは起きないから、あの本はうそつきだ。俺はそのかわり、彼女がねむっているあいだじゅう寝顔をながめている。小さなみじろぎのあと、ゆっくりと形作られるやわらかなほほえみは、きっとまだ夢の中の俺に笑いかけている。なんて、ずるい。自分自身、いやちがうな。夢のまぼろしに嫉妬する。彼女の気をひいてしまう、今ここにいる俺以外の存在すべてがずるいと思えてしかたない。俺以外の名前をよんだとき、まるで全身の穴という穴に針を突きさされるような気分だった。全身の血がぬけてしまったように指先まで体がひえて、それから気づいたら彼女の胸の中だった。
エダは言う。俺のつめたい目が好きだって。俺はそれよりも、もっときみのことが好きだ。そう言うと彼女は、そんなことはないのだと、キスと愛のシャワーを与えてくれる。愛情は均等でなくてはいけないとも。声も、手のひらも、胸の感触も、身もこころもすべてがやわらかなものにつつまれるうちに、どろどろにとけていなくなってしまった。



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33 :患_者(I_den_tity-V)
2023/07/07(金) 00:49


彼女のなみだは、きっと宝石にちがいない。
うるんだ瞳はきらきらしていて、目元は赤くそまって、大きなつぶがこぼれ落ちるしゅんかんが、好きだ。そうっと手ですくって、大事に大事にしまっておけたらいいのに。
エダのなみだをネックレスにできたら、俺はそれをずっとつけておく。鎖はぜったいに切れない、がんじょうなものを用意して、どんなときもはなさないように。
もしも、俺の目がなくなってしまったら、ネックレスにしたそのきらきらひかる宝石を、まるでキャンディみたいになめて、まあるくして目の代わりにするんだ。俺の中に彼女のがいる。なんて、しあわせなことだろう。



まっさきに、けがの心配をしてくれるところも大好きなんだ。



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