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┗1089.SSスレッド(101-120/290)

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120 :初手のつまづき・15
2009/04/03(金) 18:49:49

俺「あの」

俺もうつむいたまま、オッサンの方は向けない。
俺自身も迷っている中、そんな堂々とした態度はとれなかった。

オッサンからの反応はない。
それは仕方ない。
ちょっとのことで覆らないのは、予想できたことだ。

俺「…この子達の話を…」

俺は続けた。
一度二度反応がないくらいで諦めるわけにはいかない。

もし受けるとなれば、いくら役に立たないとしても頭数としてこのオッサンらの力は必要になる。

俺「少しだけでも…」

オッサンらからの反応はない。



(…

…?)

なにか妙な気配がする。
いくら面倒とはいえ、あまりに反応がなさ過ぎるような気がする。

俺は、オッサンの顔をチラ見してみた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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119 :初手のつまづき・14
2009/04/03(金) 18:38:07

少年の後方を見やる。

そこには、少年と似たような格好の、六歳くらいの女の子がいた。

幼女「あんちゃ。
おてつだいしてくれるひと、みつこうた?」
少年「こら、駄目だ。
外で待ってろと言うたろ」

どうやら、少年の妹であるらしい。
揉め事を起こす気がなくとも、酒場の中は物騒だ。
少年が外で待たせていたのはすぐに分かった。

そして、それと同時に、今まで失念していたことを気付かせた。

(集落は…保護者なしにこの兄妹を使いに寄越さなきゃならない状況なのか…)

その事に気付いてから少年と妹を見やると、見捨てると腹を決めた胸が痛んだ。

俺「…あ」

なにを言おうかと決めていたわけではない。
ただ、なにかやれることはないか、オッサンに考え直すよう言ってみるつもりだった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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118 :初手のつまづき・13
2009/04/03(金) 18:27:50

しばらく中断しておりました。
申し訳ないです。
続き参ります。



少年が困った様子で俯く。

そりゃあそうだろう。
略奪など痛くも痒くもなければ依頼になど来ない。
それゆえ、略奪に困って依頼に来た集落に、余剰な蓄えなどあるわけがない。

その足元を見る、それ自体が拒否と同じだった。

オッサン「そんなら仕方ねェなあ
これからは腕の立つヤツを雇えるくらいになってから酒場に来んだな」
少年「な、待っ…」

言葉に詰まる少年に無情に背を向け、オッサンがカウンターで再び飲み始める。

「あんちゃ」

その背中に追いすがろうとした少年の更に後方から、小さな声がかかった。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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116 :変身・1
2008/12/09(火) 22:55:28

人の声が聞こえる。

「………れ、……しゅ」

ぼんやりと覚醒する頭。
昨夜は街道を外れた場所で野宿。
見張りはポティットに頼んだ。
自分に何か有ればポティットが黙っていない筈だ。

「……きろ、起きてくれ!!」

ゆさゆさ。
寝袋を揺さぶられる。
誰だよ追い払ってよポティット。
薄目を開けると、えらく重苦しい色彩を纏った男が一人。

「おお、起きたか!!待ちくたびれたぞ!!」
「いや、誰だよお前」
「酷いな我が主、我は我だ」

知るか。
てかちょっと待て、ポティット何処行った。

「ちょっとあんた、うちのポティット何処やった!!」
「だから、我だ」
「知らねぇよあんたなんか、最高に格好良い蝙蝠なんだよポティットは!!」
「我が主。だから、我だ」
続き>>115

(ez/W51SA, ID:ASj4NdMXO)
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115 :変身・2
2008/12/09(火) 22:53:36


……ちょっと、待て。
……我が主って。

「今の形の名は『ガルバロン』。こうして人の言葉を交わす事が出来て嬉しいぞ、我が主」

まさか。
この眼前の、時代倒錯した太陽似合わない顔色悪い男が。

「……返せぇぇぇ!!」
「ぐ、わ、我が主!!」
「今すぐ戻れ!!退化しろ!!」
「ぐ、それは無理、てか首締ま」
「うるさぁぁぁい!!俺はコウモリが良いんだァ!!」
「ギャアアアァァァ!!」



その日テトス北街道では、泡を吹いたガルバロンと、地面にのの字を書き続ける冒険者が目撃されたそうな。

(ez/W51SA, ID:ASj4NdMXO)
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114 :〔初手のつまづき12〕
2008/11/23(日) 20:45:17

オッサン「手前なァ…
見る目だけは確かなようだがよ。

確かに俺は腕に覚えがあるがな。
それを使おうてんだ。
見合う報酬は当然あんだろうなオイ。

それもなくて依頼なんつう馬鹿ァぬかしてんじゃねーだろうな。あァ?」

ここまで面倒を俺にやらせておいて、最後にふっかけてダメならさっさと切り捨てる…なんて態度が気に入る訳もないが…俺も結局依頼を断るつもりだったのは変わらない。
言いたい事は色々あるが、ここで口を挟むべきではないかもしれない。

そう自分に言い聞かせ、俺は気持ち下がって事の成り行きを見守る事にした。

少年「そ、それは…
わしらも蓄えを荒らされとりまして…大した額は…」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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113 :〔初手のつまづき11〕
2008/11/23(日) 19:59:45

俺「…んーと」

言い出しづらいが、腹は決まっていた。

この少年は自覚していないのかもしれないが、つまりはこの依頼は小鬼の巣を潰せという事だ。
実入りが見込める以上は小鬼は諦めはしない。
ハッタリや脅しで一時的に手を引く事はあっても、下手に小知恵が回るくせに根本が馬鹿なため、致命的な事にならないとどうも懲りずに何度もやってくるためにこれも解決にならない。
結局、完全に潰してしまうしかない。

そんな事は俺には無理だ。

良くは知らないが、この街の規模ならしかるべき筋の機関があるだろうし、きちんとそちらに頼んだ方がいい。

結局始めと変わらない結論に達し、気まずいままに口を開こうとした時

ちんぴら「オウ、ガキ。」

オッサンが割り込んできた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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112 :〔初手のつまづき10〕
2008/11/19(水) 22:41:59

その三匹は、おそらく略奪目的というより偵察のようなものなのだろう。

少年の集落がどの程度のものなのか知らないが、二、三人よりはいくらなんでも多いだろう。
小鬼が明らかに自分たちより人数の多そうな集落を襲う事はない。
もし襲う事があれば、それはその小鬼が限界まで飢えている場合だが、その状況ではもはや怪我人では済むまい。

人死にが出ていない以上、その群れは飢えているのではなく…背後に大きな群れがいる、偵察だという事だ。

俺(…ええ~…

面ッ倒臭ェー…)


考えるだけで手に余る。

さすがに小鬼一匹の始末ぐらいはできるが、集落より多い群れの始末はできない。
虫だってキツいのに小鬼はもっとキツい。

詳細はまだ分かっていないが、難度は容易に察しがついた。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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111 :〔初手のつまづき9〕
2008/11/19(水) 21:57:11

俺「そうか…」

このフローリア諸島ほど強力ではないが、国元にも鬼種は出た。
中でも小鬼は山間部に普通に棲息しており、生態もある程度知っていた。

多少の違いはあるだろうが、根幹となる性質は恐らく変わらない。

小鬼は基本的に短絡的で思慮は殆ど無く、道具を使ったり小細工の類をする事はあるものの、小賢しいといった程度のものだ。

その程度の知恵のため、基本的に計画的に略奪をするという事はない。
食える時には食えるだけ全て食ってしまう。

そんな数gの脳しか無いんじゃないかというような連中がそれをしないという事は、小鬼が警戒しているというあらわれだ。

低脳である割に臆病で、それでいて残虐という性質から、国元でもまともに対話など考えられた事もない。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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110 :〔初手のつまづき8〕
2008/11/19(水) 20:58:14

俺「小鬼は…どのくらいの規模で来るんだ」

少年に聞きながら、横目でオッサンを見てみる。

オッサンに動きはない。

…俺に適当に相手をさせながら少年を追い払う目的なら、この質問は気に入らない顔をするかと考えたのだが、動きはない。

俺(…このオッサン…

…まさか…話次第では受けるつもりなんじゃねーだろな…)

小鬼とちょっと遊ぶだけ、というだけで旨い額の報酬が手に入るなら、そりゃあやっても構わない。
だが、そんな甘い話がある訳もない。

そんな期待があるとしたら、この中年はどんだけ甘ったるい考えで生きてきたのだろうか。

心底呆れかえって、恐らく顔に出るほどの絶望に、少年の返事が割り込んだ。

少年「たいてい、二、三匹です」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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109 :〔初手のつまづき7〕
2008/11/16(日) 19:50:19

少年「…あの」


この少年に、何か非がある訳ではない。

俺(…むぐ…)

…少年に文句を言う訳にもいかない。
俺は、続けろ、という顔で少年を先を語るよう促した。
受けるかどうかも、どうせ話を聞いてからだ。
少年は、頷いて続けた。


少年「そこに…小鬼が出るようになってしもうたんです。

開拓集落を襲って、蓄えを奪っていきよって…まだ死人こそ出とりませんが、襲われるたび、怪我人は出とります。

こんままでは、いずれ確実に人死にも出んでしょう…

だもんで、腕の立つお方を探しに来たつう訳です。」


聞いて、しばし考える。


俺(…厄介だな)


小鬼が、単体で村を襲っているとは考えられない。
俺は、少年に質問をしてみる事にした。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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108 :〔初手のつまづき6〕
2008/11/16(日) 18:35:04

少年「そん為、こん街も未だに外延に開発区域がありまして…俺ら、そこで働いとります。

開発区域の労働者は、開発担当区域の近くに集落を作っとりまして…そこで生きとります。」

そこまで話を聞いて、オッサンが俺を見た。

ちんぴら「オウ」

俺「…はあ」

ちんぴら「オメエ、話聞いとけ」


そう言って、オッサンはカウンターに向き直ってしまった。

考えが手に取るように分かる。

明らかに金を持ってなさそうな、しかも子供の依頼。
瞬時に見切りをつけて、俺に丸投げといったところか。
よしんばまともな報酬だった場合、俺にだけ働かせて見入りは分ける、なんて目算すらありかねない。

当然のようにオッサンにならう子分共々いい加減殺しそうな目で見つつ

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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107 :〔初手のつまづき5〕
2008/11/16(日) 18:19:05

三人全員が、眉をひそめた。

もっとも、俺の眉を潜めた理由と、ちんぴらオッサン方二人の理由は違う。

俺は、頼りになる、あたりは恐ろしい勘違いだから、今すぐにこんなバカ三人の元から走り去って然るべき機関へ行け、といった考えによるものだ。

だがおそらくオッサン方のは

『めんでえ』

とかの理由だろう。

どちらにしろ、俺達の真意が汲めれば、俺達に頼み事なんかするべきではない。

しかしその真意は純朴そうな少年には 伝わらず、少年は俺達が振り向いた事で話を聞いてくれると判断したらしく、話を続けてしまった。

少年「こん島は、知っての通り整備途中で…しかも土地概念の歪みで維持が困難だもんで、継続的な開発と点検が不可欠なんですけんど…」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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106 :〔初手のつまづき4〕
2008/11/13(木) 20:49:07

カウンターに座っている俺達の背後から、声がかかった。

ちんぴら「…あん?」

別に合わせるつもりではなかったのだが、三人同時に背後を見やる。


そこには、野良仕事に向いた格好の、垢抜けない印象の少年がいた。

少年「…すんまっせん。
少しお話聞いてつかぁさい。」

改めて繰り返される言葉に、眉を潜める。

一体、こんな少年が俺達になんの用だと言うのだろうか。
こんな明らかに近寄り難いオッサンとツレと駆け出し冒険者という絶対に信用してはならない構成の俺達に。


少年は、そんな俺達を見上げて続けた。


少年「お見かけした所、頼りがいありそうな方とお見受けしました。
お願いがあります。
どうか、聞いてくだっせ。」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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105 :〔初手のつまづき3〕
2008/11/12(水) 17:54:20

困る。

非常に困る。

このままでは、初めの一歩である情報すら手に入らないまま酒場から出られず、ほどなくその肝心な情報も手に入らないまま酒場からも追い出される。

普通に酒を飲むのにすら邪魔になっている以上、店主が動かずとも腕のある有志の数人でも立ち上がる事だろう。

駆け出し冒険者の俺はもちろん、オッサンらだってそれにロクに抵抗できないだろう事は簡単に想像できる。
ていうか、この場合俺は抵抗なんてそもそもする気はないが、オッサンらがアホみたいに暴れるだろうというだけなのだが。


訪島早々絶望的な気分に浸りながら、いよいよぶぶ漬けに手を付けて楽になってしまおうかというその時

「あの…
すんまっせん」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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104 :〔初手のつまづき3〕
2008/11/11(火) 18:09:45

この調子で、酒場中の人間に眉を潜められている。

当然、店主が出したぶぶ漬けの意味を解する情緒など持っている訳もない。
腰ぎんちゃくは味に特に文句はないらしく普通にぶぶ漬けを食っているが、ぶぶ漬けを出された意味は分かっていないようだ。
俺には、出されたぶぶ漬けの味に文句をつける勇気はないので、キッチリ三人分出されたぶぶ漬けの俺のぶんは手付かずになっている。


(…

じっ…

邪魔だ!!!)


なんて邪魔なのだろうか、このオッサンらは。

俺としてはツレになった覚えは欠片もないのだが、このオッサンらは一片の迷いもなく俺をブラダーだと信じている。
結果、杉下右京のついでで疎まれる亀山薫がごとく俺も厄介事の一部と見られてしまう。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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103 :〔初手のつまづき〕
2008/11/11(火) 17:56:22


一向に話が進まない。

この島は不案内をなんとかするためにも、ガイド、またはせめて人数を集めて島の探索に当たりたかったのだが、なんというか話もロクに聞いてもらえない。

必然、情報も得られない。

酒場の主にすら
『いい加減気利かせて出てけやクソ虫』
といった顔でなんだか頼んでもない粥のような物を出される始末。



…何故かというと、理由は明白なのだが。

ちんぴら「ったァア~あん女ァー
気取りやがっクッソだらァァー…
手前がそん尻で俺達に話して欲しそうにしてっから俺達が気利かせ乗っかり易ィように話してやっだらってん、オァ!!
馬ッ鹿野郎手前、味薄ィぞなんだこの水っぽい飯はっだ馬鹿にしてんかクラァアア!!?」

このオッサンだ。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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102 :〔初手のつまづき〕
2008/11/11(火) 17:40:03

翌朝、ランドリート島に到着する。


明け方からほどなく、中部の山陰から陽光が差す島の姿を見た時は、柄にもなくなかなかに美しいものだと感じた。


港に接岸した船から渡された足場に一歩踏み出し、目的地到達の少しの感慨を噛み締める。

しかし、なんのアテもない駆け出し冒険者が、観光気分でいつまでも港でぶらぶらしている訳にはいかない。
俺は、早速情報収集及び仲間を探し、当面の足掛かりを確保しようと酒場へ向かった。



が。



鎧を着た男「え…君とか…
うーん…
その、なんていうか…またの機会に…」
三角帽の女「え。
やだ。
なに。
仲間?
ウソ。
何する気なワケ。
ちょっとあっち言ってよ。
怖い。
衛兵呼ぶよ。」

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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101 :匿名
2008/11/11(火) 17:18:40

お二方、ご意見ありがとうございます。
なんとか、やれるだけやってみます。
よろしくお願いいたします。

(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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115 :変身・2
2008/12/09(火) 22:53:36


……ちょっと、待て。
……我が主って。

「今の形の名は『ガルバロン』。こうして人の言葉を交わす事が出来て嬉しいぞ、我が主」

まさか。
この眼前の、時代倒錯した太陽似合わない顔色悪い男が。

「……返せぇぇぇ!!」
「ぐ、わ、我が主!!」
「今すぐ戻れ!!退化しろ!!」
「ぐ、それは無理、てか首締ま」
「うるさぁぁぁい!!俺はコウモリが良いんだァ!!」
「ギャアアアァァァ!!」



その日テトス北街道では、泡を吹いたガルバロンと、地面にのの字を書き続ける冒険者が目撃されたそうな。

(ez/W51SA, ID:ASj4NdMXO)