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240 :
流転の結末17
2009/05/22(金) 23:08:28
薄い風がさらさらと音を立ててそこらを凪ぐ。
少し前から、絶えず喧騒の中にあった村の終端のざわめきが収まり、その場の視線が全て若者に注がれている。
片膝をつくように身を沈めた若者。
その手元には、血溜まりが広がっている。
精妙に顎を打ち上げられ意識を脅かされ、無防備な状態で全力で叩き落とされた王の頭部はまるで熟れた果物がなにかのようにぱっかりと砕けて中身を撒き散らしている。
一見したらまるで挟み潰されたかのようなその頭部は、まるで巨大な生物に咬み潰されたようでもあり…
突き上げられ、そして今度は上から落とされる王のその様は、まるで
『龍の顎に挟まれ牙にかかった』
ようであった。
再び、風が凪いでゆく。
この再びの風を合図にでもしたように…小鬼達は、声も上げずに散っていった。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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239 :
流転の結末16
2009/05/22(金) 22:53:55
身を寄せる動き自体はまるで普通に歩くような気安いものだが、王の顎をすくい上げた腕からは先ほど蛮刀を受け止めた血が舞う。
しかし、そんな腕でも懐から立ち上がりながら、しかも王の腰が落ちながら絶妙なタイミングで打ち上げられている。
あれだけで脳を尋常でないくらい縦に揺らされ気絶しているかもしれない。
しかし、それで終わらない。
打ち上げた体勢から少しだけ前に体重を預けると、王の浮いていた体が顎を支点に冗談のように半回転する。
その光景に、遠き昔の日の記憶が脳に去来する。
村長(あれは…
『アイキ』か!!)
力の流れと骨格・反射など全ての生体反応を利用し精緻に相対する者を操る環の国の妙技。
いつか見た物とは違うが、その術理は過去に見たアイキそのものだった。
半回転し、頭を下にした王の体を…今度は『落とす』。
後頭部から王と若者の全体重を載せて落とされ
『ガコオォオン!!』
という音が、高く響いた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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238 :
流転の結末15
2009/05/22(金) 22:37:02
村長(浅いか!?)
まるで雲上の『神々にでも化けた』かのように空を飛んで見せてまで距離を詰めてみせ、しかし、最後の一歩が足りなかったか…
そう私は諦めかけた。
しかし
『ズシ』
と、高くはないものの、鈍く重い音が響いた。
若者の掌は王の腹に当てられたままだ。
しかし、その距離から、若者はなにかをしたらしい。
王が、まるで大量の『水でも頭から落とされた』ように腰から崩れ、その姿勢を崩してゆく。
相手の重心に同調し、それを零距離打撃で精妙に崩したとでもいうのか。
もはや理論づけも追いつかない。
意識ははっきりしているのに、体が勝手に流れて言う事を聞かない…そんな表情でもがこうとした王の顎を
『ヒュカッ』
と若者が身を寄せながら真下から掌ですくい上げた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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237 :
流転の結末14
2009/05/22(金) 22:23:49
理論として思い当たるのはこんな所だ。
だが、言うのは簡単だがとんでもないボディコントロールだろう。
とても信じられたものではない。
『ザン!!』
と若者が着地する。
と同時、若者の背後で護衛二匹が眼にボルトを突き立てて崩れ落ちるのが視界の端に写る。
膝を曲げて着地の衝撃を吸収した体勢から、跳ねるように飛び出し、王に対し踏み込む。
その踏み込んだ脚を
『ダン!!』
と強く地面に打ち込み、若者は腰から抜かれた王の蛮刀を踏ん張って根元で受け止めた。
切れ味悪い根元とはいえ、自分より体格の良い相手に肉厚の刃を打ち込まれ、受け止めた右手の前腕の甲からブシィと血が吹き出す。
対して若者は、余った左掌を王の腹に
『とん』
と軽く当てただけだった。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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236 :
流転の結末13
2009/05/22(金) 22:12:49
護衛の一匹の眼にボルトが撃ちだし、それを確認し切る間もなくクロスボウをひっくり返し、次の標的を照準し次第トリガーを引く。
命中したか確認もせず、若者へと視線を移す。
若者は素晴らしい跳躍で未だ中空にあり…それを臆病者の王がクロスボウで狙う。
跳躍の一番高い…つまりは重力と跳躍力が均衡し、動きの止まる瞬間を狙い、落下先を予測して王のトリガーが引かれる。
その射出されたボルトは…若者の体が急に
『空中で水平移動した』
ために虚空に撃ち出され、何処かへと跳び去った。
村長(飛ん…だ?)
正確には水平移動したのではなく、ジャンプの最大跳躍点から落下に移行せず、一瞬だけ浮遊を続けたのだ。
空中で脚を跳ね上げ伸身に入り、重心を上に引き上げて落下を遅らせた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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235 :
流転の結末12
2009/05/22(金) 21:48:15
この手で不安が取り除かれたという確証が得たい。
もしそうできずとも、とりあえず異常が収まったということをこの眼で確認したい。
その欲求が、王に姿を現させた。
それこそ、臆病者の王であるが故にだ。
そうして、王を引っ張り出すため…若者は隠し通した。
『それ』を使えば臆病な王は絶対に姿を現さないだろうことを見越して、槍という『鞘』をまるで刀身であるかのように見せかけて…『鞘』を折らせてまんまと本命を引きずり出しだ。
そして、目標が姿を現したが最後、鞘を折って姿を見せるのは…
村長(あれが…
彼の、『本身』だ。)
動きを見れば分かる。
彼の得手は、槍や、どこぞの軍人でも使いそうな『普通』の格闘技ではなく…あの、精妙な無手技だ。
今この時、蛇の頭を取るために、彼はその『本身』を隠し通したのだ。
村長(つまり…
ここが勝負所ということだな。)
私は、クロスボウのトリガーを引いた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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234 :
流転の結末11
2009/05/22(金) 21:30:55
いくら強打を入れても、体のどこか動けばとにかく己の命も省みずこちらを殺しにかかってくる。
そんな悪夢のような存在を前にすれば、もはや動かなくなったと確かに確認できるまでとことん殺し尽くさなくては、とても安心などできない。
そうして、己の身を斬らせて恐怖に追い立てられた狂乱の中に群れを叩き込み、最後の最後…若者は武器まで失ってみせた。
だから、王が姿を見せたのだ。
前線に立たずとも、自陣を蹂躙している狂乱は隠れた者にも伝染している。
しかし、臆病者の王はそれでも姿を敵には見せない。
例え殺し尽くさなくては不安な悪魔のような相手でも、自分の身に危険がある間はけして姿を現さない。
しかし、その悪魔から命を奪う牙がもがれた時、王の中に残る不安は敵に姿を見せる命の危険がなくなり、悪魔を殺し尽くした確証が欲しい…そのただ一つのみとなった。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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233 :
流転の結末10
2009/05/22(金) 21:15:37
指揮官を潰す。
なるほど、よくよく考えれば、自陣が劣勢ならば当たり前の事だ。
しかも相手は蛮族のリーダー。
倫理の無い集団の中で支配者でいるには、少なからず実力がなくては集団を従わせることはできない。
つまりはその集団で一番の実力者を、しかも1対1どころか完全包囲の中から狙って討ち果たされたならば、もはやその集団は成す術もなく瓦解するだろう。
しかし、小鬼の王とは、すなわち臆病者の王である。
実力がなくては集団は従わないが、同時に己の保身に一番長けた者なのだ。
その姿は、襲撃されていた被害者である我々集落の者も見たことがなかった。
普通に抗戦しても恐らく王は姿を現さない。
だから、あんなにも殺したのだ。
小鬼からしたらまるで魔神かなにかのように、敢えて煽り立てて殺しに殺しまくり、もはやこいつを生かしてはおけないというほどに自分を憎悪させた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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232 :
流転の結末9
2009/05/22(金) 21:01:28
その急に現れた『連壁』に隙間の最後尾の小鬼が弾き返され、とうとう楔が包囲の底を撃ち抜く。
その弾き飛ばされた最後尾の小鬼を踏みつけ…というか踏み砕いて足場にし、若者が指揮官鬼と自分の間にあった手近な岩に駆け上がる。
バッ!!
とそのてっぺんから跳び…若者は指揮官鬼に踊りかかった。
若者が包囲を抜けたのを見て、護衛の二匹が剣に手をかける。
私は悟った。
村長(初めから…狙いはこれだった…!!)
殺し尽くさなくては、小鬼の略奪は終わらない。
だからと言って、犠牲を覚悟で村が総出で小鬼を迎え撃っても、小鬼は被害が出ればすぐ逃げ出してしまう。
だが一人で迎え撃てば、小鬼は被害を出してもなまじ相手が単体なため引くに引けなくなる。
しかし、包囲された状態で一人で小鬼を皆殺しにするのは無理なのだ。
ならばどうするか。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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231 :
流転の結末8
2009/05/22(金) 20:40:22
何をしたかと言えば、打ち終わった体勢から見たら、肩からくっついただけだ。
なにか打撃をした様子はない。
しかし若者はまるで分かっているとでもいうように小鬼を弾き飛ばした後、その結果も確認せず再び駆け出し、閉じかけた隙間に自分の体をねじ込んでゆく。
そこに迫る小鬼達がやはり若者の進撃を止めようと仕掛け、再び同じように若者は捌きながら踏み込み密着し
『ドパアアァン!!』
と小鬼が吹き飛ばされる。
今度はまるで背中を預けるような体勢だ。
そのまま一直線に指揮官に突っ込みながら、若者は左右から迫る小鬼の懐に踏み込み
『ドパアアァン!!』
『ガシャアアァン!!』
『ゴシャアアァン!!』
と弾き飛ばしながら隙間をこじ開けてゆく。
その様はまるで少し開いた隙間に楔を打ち込み開いてゆくようで…小鬼達が弾き返される様子はまるで、『長く連なる壁』が急に現れて衝突しているかのようだった。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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230 :
流転の結末7
2009/05/22(金) 20:28:50
小鬼達が我に帰った時にはもう遅い。
既に若者が矢のようにその隙間に駆け出している。
ザザザザザザと足音高くは無いもののかなりの速度で迫る若者の圧力に戦慄した表情を浮かべながらも、その細い隙間を埋めるように小鬼が殺到する。
しかし若者はスピードを緩めない。
ほぼ最高速でその隙間に突入し…隙間の入り口と言える部分の小鬼が、こちらも走って迫りながらすれ違いざまに鈍器を叩き込もうと得物を横殴りにしてくる。
それに一足で飛び込みながら
『カッ!』
と下から回し受けて攻撃を流し
『ひゅる』
と沈み込みながら若者が小鬼と肉薄する。
零距離だ。
一度離れなければ有効な打撃は望めない。
しかし、速度を殺さぬまま肉薄し、同時若者が
『ドシン!!』
と重く踏み込むと
『バカアァアアン!!』
と聞いた事もないような音を立てて小鬼が弾き飛ばされた。
飛ばされた小鬼は受け身も取れず、真横に吹っ飛び一回転し、頭から地面をガシャシャとこすり、ザン!ザン!と数度転げ回って群れの一角に突っ込む。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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229 :
流転の結末6
2009/05/22(金) 18:56:45
人間の体は、翼のような柔軟さを持ってはいない。
しかし、人間の少ない関節を駆使して翼が羽ばたく動きを再現したならば、もしかしたらあのようになるのかもしれない。
その、自らを翼そのもに見立てたような打ち込みで、2つの腕で一匹づつ。
もし見た目で名前を付けるような愚かな真似をするとするなら…『鳳凰双翼』、とか、『双翅』とか、そんなような名前が付くのだろうか。
未知の光景に、そんなどうでも良いことを考えてしまう。
だが、それは小鬼も同じだったのかもしれない。
同朋が殺されて怒るでも怯えるでもなく、それでいて先のように恐怖に突き動かされさらに狂乱するでもなく…なんだか何が起こったのか理解できていないかのように、小鬼達は一瞬動きを止めていた。
そうしてぼんやりした空気の中、ふらりと若者の前の小鬼達が身を退き、若者と指揮官鬼の間に小さな間隙ができた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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228 :
流転の結末5
2009/05/22(金) 18:43:15
その、身を返して回転し攻撃を避けるための動きの中でまたも始まっている腕の円弧の動き。
同時に、というよりあの腕の動きで効率的に加重を移し身を返す動きをスムーズにしているのか。
背を向けられている小鬼にはひょっとしたら分からなかったかもしれない。
背中を挟んで練り上げられる運動エネルギーが、振り向きながら加速して自分に振り下ろされる一連の出来事。
『ビシャアアアン!!』
と耳を打つ音の中、今度は見えた。
一度みたのが、効いたのかもしれない。
脚から出力された力を移動のエネルギーに変換。
それをさらに体幹の捻りに変換し、そうして方向性を『回る力』へと変えた力により体を振り回し、加速する。
その加速をさらに戦闘には不似合いな程脱力した腕の円運動に変換し、最後にはその円運動から振り下ろしながら沈み込み重力でまで加速し、極度の脱力から瞬間的な最大緊張により載せた力を『手首』で打ち込み、インパクトに全ての力を集中させた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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227 :
流転の結末4
2009/05/22(金) 18:25:52
気づくと、小鬼の頭のてっぺんに、若者の掌が打ち込まれている。
打ち込まれてから気づいたが、水を打つような酷く大音量の高い音で耳が痛い。
そのたかたが張り手一発で…小鬼は眼球を両方共目から飛び出させ、耳から血を流しながら地面に崩れた。
軌道からして振り下ろした以外にない。
だがいくら速度を上げて振り下ろしたとて、その『張り手』で相手の頭骨を粉砕する様は、自分の理解を超えていた。
しかしこちらの理解や予測など待たず、若者の動きは止まらない。
張り手で一匹倒した動きの流れからそのまま止まらず、今度は低く沈み込みながら反転しもう一匹の小鬼に迫る。
地面に足裏を滑らせながら迫る若者に、小鬼が鈍器を唐竹に振り下ろす。
それに対し、若者は切り返すのではなくまたも流れのままに小鬼に背を向けるように立ち上がりながら身を返し、回転しながら軸をずらし鈍器をかわした。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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226 :
流転の結末3
2009/05/22(金) 18:11:37
特に派手に小鬼の体を横に流した、という訳ではない。
ただ小鬼が武器を持った手先を少し捻っただけだ。
だが、それだけで小鬼の体が自然に流れて体勢を崩してゆく。
その小鬼の体を流した手を、自分もまた流したまま下方に弧を描くように大きな動きで体に引きつけ、その流れを殺さないまま上方へ弧を描くような動きへと移行し、若者の腕が大きく円を描く。
円運動をしながら若者の手先は鶴の首ようにゆるりと形を変えながら流れ、普通に考えれば大きく隙だらけと見える動きは、不思議に流麗な印象を見る者に与えた。
その、まるで
『大きな鳥の翼』
を波立たせるような動きが…若者の顔の辺りを通過した辺りで瞬間的に加速した。
『バヲッ!!』
と羽で大気を打つような音で風を斬り、若者の手先が…それからは見えなかった。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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225 :
流転の結末3
2009/05/22(金) 17:54:26
が…
私が撃つ前に、若者がすす、と小鬼の一匹に少しだけ近づいた。
とはいえ懐に入ろうという動きではなく、姿勢もそのままなので深く攻撃が入る距離までは近づけていない。
そのままでは、ただ一方的に小鬼の武器だけが届く結果になってしまう。
若者は、鈍器を受け止めようとはしなかった。
しかし、小鬼の手先に自分の手を伸ばし、添えるように這わせる。
すると
『ゆる』
と小鬼の鈍器が緩やかに軌道を逸らして若者の体を避けていった。
村長(なんだ。
あれは。)
見た事の無い技だった。
しかし、自分もこれでも『知覚』を武器に冒険者をしていた身だ。
なんとなく、頭に閃くものがあった。
村長(…敵の攻撃を…『誘導』した…のか?)
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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224 :
流転の結末2
2009/05/22(金) 17:31:54
先まで虚ろだった眼で指揮官鬼を眼で射抜くように睨みつけ、折れかけた膝に力を込めて地を踏み返し、今にも獣のように飛びかかりそうな気配を体中から湧き立たせて、ゆっくりと腕を眼前に交差させる。
村長(…?
なんの構えだ…?)
見たことの無い構えだ。
掌側を前に向け腕を交差させ、背筋を立てて腰を落とす。
気配はまるで跳びかかりそうな攻撃的で鋭いものであるにも関わらず、構えはまるで前に出るのに向いているようには見えない。
その奇妙な構えの若者を、挟み撃つように小鬼が左右から襲う。
若者は動かない。
もう小鬼は振りかぶっているのにも関わらず、『打て』と言わんばかりに若者はその構えを堅時した。
もう脚が動かないのか?
そう考え、私はクロスボウを襲いかかる小鬼の一匹に向けようとした。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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223 :
流転の結末
2009/05/22(金) 17:10:26
眼下で若者の武器が破壊された瞬間、私は若者の死を覚悟した。
そうすべきではない、と分かっていながら、思わず視線を逸らした先でそれが眼に入ったのは、全くの偶然だった。
明らかに指揮官らしい小鬼…もう小鬼という体格ではないが…と、その取り巻きらしい武装した二匹。
一体今までどこに潜んでいたのか。
もしあの指揮官らしい鬼がもっと早く姿を現してくれていたら、頭のみを狙って撃退も可能だったかもしれない。
しかし、もはや詮無いことだ。
武器がなくては武器持ち相手に防御もままならない。
このまま雪崩を打ったように一気に攻め込まれ命を奪われるだろう若者の末期をせめて見届けなくては…そう思い、私は逸らした視線を若者に戻した。
すると
村長(お…?)
そのまま膝を折るかと思われた若者は、意識を取り戻していた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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222 :
分水嶺8
2009/05/22(金) 01:41:35
段々と毛色の違う木の姿が像を結んでくる。
普通の小鬼より二周りも大きく見えるシルエット。
多分俺よりタッパがある。
全身ではないが、肩や胸といった部分部分を鉄製防具で武装している。
多分、略奪した戦利品なのだろう。
一般的集落には数がないから、防具が渡るのは数少ない実力者のはずだ。
手にはまたも略奪したものだろうクロスボウをぶら下げている。
だが近接武器を持っていない訳ではなく、腰に蛮刀を下げているようだ。
一目で特別な個体と分かる。
それを証明するように、良く見るとその特別な小鬼の両脇に護衛のように鉄製の剣を下げた小鬼がくっついている。
要するに
俺「…や…」
指揮官、という事だ。
俺(…やっと…
顔ォ見せたなァア!!)
急激に高まった集中力に、瞬時に意識と視界が回復する。
はっきりとその姿を捉えたその指揮官鬼が、俺と目を合わせて一瞬びくりと身を震わせた。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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221 :
分水嶺7
2009/05/22(金) 01:26:45
『バキャアッ!!』
と派手な音を立てて、槍が折れた残りの衝撃に吹き飛ばされる。
揺らされた頭が直後にまた揺らされ、ぼわっと頭の中が膨らんだような圧迫感に視界が埋められ耳鳴りのような音がする。
先より白く薄く濁るその視界の先に…妙なものが引っかかった。
ぼんやりと滲んだ視界の中に、林のように並んだ影の群れ。
多分その一つ一つが小鬼だろう。
その林の奥に、毛色が違う木がちらついている。
いつものように自然にピントは合わない。
遠雷のような音が響く頭で意識を集中し、なんとかその木の姿を捉えようともがく。
どのくらい時間が経ったのか分からない。
そんなに長く時間が経っていたら小鬼の追撃があるのだからそんなに時間は経っていない筈なのだが、酷く時間が経った気がする。
それほどただ視界のピントを合わせるというだけの行為に労力を使ったということだろうか。
(ez/W61T, ID:3Cu7xFH5O)
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