オレンジ色に照らされた広い図書室のソファと、月明かりの差し込む狭い客室のベッド。そんな対象的な場所で、意図せず、全く同じ体勢になって触れ合っていた。あの場所ではできなかったことをこれから……そう強く実感して、白状するとね、妙に浮ついてたんだ。
甘く濡れた声も、素肌を通して伝わってきた熱や震えも全部。僕を夢中にさせた彼女のすべて、階下の誰も知らない、僕たちふたりだけの秘密だ。
耳障りなはずのベッドの軋む音が、彼女の立てた音というだけで身体を痺れさせる。仕草のひとつひとつが甘い気持ちを誘う。触れた指も、触れられたところも、信じられないくらいに熱かった。
息ができなくなるほど僕を翻弄しないでほしい。それは…彼女にしかできない、特別なことだけど…。
自ら服を脱いでみせる仕草ってすごくそそる。そのくせ、恥ずかしそうに目を伏せて…それでも僕のためなら躊躇わない。そんなところがたまらなく可愛いんだ。
あの装いの彼女が可愛くて、脱がせるべきか否か…なんて迷ってた僕とは大違い!
指先から手の平へ、ゆっくりと僕の胸に触れる肌が温かかった。お互いに思うまま相手に触れる。気持ち良いのにもどかしくて、どうすればもっと近付けるのと囁いた彼女の声が、まるで僕自身の声のようだった。
「あなたのものじゃ、ないの?……全て、あなたのものにはしてくださらないの…?」
これからほんとうに僕のものになるんだよ。そう言ってもはっきりとは分からないふうに、重なる肌の柔らかさで訴えてくる。その抗議の仕草は、甘くやさしい媚態と裏表だ。
服の脱がせ方が分からず、手間取った上に本人に手伝ってもらって、「ああ!そうなんだ!」なんて馬鹿みたいな反応をしてしまった。普段ならもう少しスマートに、うまく誤魔化せる方へ導く自信があるんだけどね。
取り繕えなかった。違うな、取り繕わなかったんだ。くすぐったそうな笑い声が優しく響いて、そんな情けなさも許してくれると…感じたのかな。
深緑色の胴衣を脱がせてみたら、可愛らしいと思っていたブラウスが予想よりずっと扇情的だった。でも、何より僕の胸を高鳴らせたのは、やっぱりあのとろけるような瞳だ。
歯が当たらなかったのが不思議なくらいだよ。ねえ、唇が真っ赤になるほどのキスをまたしよう。理由も言い訳もいつの間にか必要なくなった、ただのキスをさ。