その濡れた肌に唇を落とした時、初めて触れた時よりずっと熱いと気付いた。長く湯に浸かっていたせいか、それとも……。きっとそのどちらもだね。おねだりされて嬉々として残した痕も、今まででいちばん濃く残った気がする。もし独占欲の強さがそこに表れるんだとしたら、消えない痕を残せるのはいつかな?
キスマークはつけたい方だけど、僕に残した痕を愛しそうに撫でる彼女を見たら、ふと心が揺らいだよ。そうだな、おねだりしてみるのも…良いかも。
髪や肌、彼女の身体を滑り落ちる玉の雫が僕の頬を打つだけで、なんだか甘い気持ちになる。ただの水をはちみつに変えられたみたいだ。
抱きつかれた背中を意識しすぎて、裸足で歩く床の冷たさも気にならなかった。じゃれつく頬や唇だけでもたまらなくなるのに、子供みたいに無邪気に笑っちゃってさ。浴室が近くて助かったよ!顔の熱が首まで広がる前に、辿り着けたからね。
狭くて、きらびやかなものは何ひとつなくて、壁掛けの鏡も曇っている。それでも蛇口を捻ってみることすら楽しそうで、そんな彼女の声が響くだけで僕も楽しくて、気付けば笑い声がこぼれてた。
「自分でしなきゃ、駄目…?…覚えた方が、いい……?」
弾んだ声が甘く蕩けて、輝いていた目が潤む瞬間。 頭がじんと痺れてるようなこの気持ち良さが、きっと優越感ってやつだ。
ベッドの中の男は口が軽くなるって、自分で証明してしまった。彼女がそれを狙ったわけじゃないことは分かってる!僕はただ誘惑に負けたんだ。どんなに恥ずかしいことでも、願えば願うだけ僕の期待に応えてくれるだろうって…絶対に抗えない誘惑にね……。
もっと、もっと、あなたの好きなことを教えてほしい。
細く引き絞られた声に反して、瞳の奥に見えるものは激しく、少女らしい願いが底なし沼のように身体に絡みついた。ああ、僕の全てを見せてあげたいな。安心してほっと綻んだ彼女の頬が、僕の胸にやわらかく寄り添うまで。
僕を抱き締めたままイヤイヤと首を振るのがかわいい。甘いわがままを覚えたんだね。あんな状況じゃなければもっと堪能したのに…、ほんとうに。