「今、何してる?なにも見えないから…気になるな。」
🦋
わたしには見えていたわ。
あなたは腕を組んで、仕切りの棚に肩を預けていらっしゃった。ご存知なかったでしょう?すぐ傍の壁、時計の斜め上にウォールミラーが掛かっていたの。そう、小さな窓のようにね。わたしはあの時、あなたの横顔を見つめていたのよ。こちらに気付いたら、笑って手を振ってくださるんじゃないかって、そんな気がして。
だけど、鏡に映ったあなたは子供のように口をへの字に曲げて、ムスッとしていたの。見えない場所でもあんなお顔をなさるなんて。近頃は色んな顔を見せてくれるようになったわ。……ねえ、信じられる?デメルのお菓子を詰め込んだような爆弾を、このわたしが抱えているだなんて…!ほんの一時間ほど前は、気難しい顔でゆでたまごを食べていたの、あの人。怒っていたから言い出せなかったけど、それがとても可愛かったの。