「…少しね。でも、君がこうしていてくれれば。温かいし……、手が、柔らかくて気持ちいいんだ。」
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寒くはない?って手を重ねたら、あなたがそう答えたの。その時のお顔が、なんだか幼げで、とても可愛くて。そのままケープの裾を広げてあなたの肩を包み込むように抱き締めたら…、わたしの首元の、更に奥へと顔を潜らせてしまった。そんなあなたが愛しくて、今度は金髪に梳き入れた指で襟足を撫で付けていたら……とうとう、潜り込んだまま出てこなくなってしまった。
石畳の上を戞々と踏んでゆく蹄の音も、軋りながら回る車輪の音も、聞こえているけどまるで聴いていなかったわ。箱の中の静けさを、これ程までに心地良く感じたことがあって?わたしを抱き締めてくれる彼の身体は、こんなにも小さかった…?腕の中の無防備を、だたただ守りたくて、外から扉を叩く音にも聞こえない振りをしたの。あのままふたり、世界から切り離されても構わなかったのよ。