「──……、世界一似合うんじゃないか?」
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とても、懐かしい色だと思ったの。
兄さまが持つ白いお皿の上に泳ぐ色、絵筆に乗せた鮮やかなクロムグリーン。わたしの目は吸い寄せられるように、その深緑の胴衣へ向かったわ。村娘とか、街のお嬢さんのような…、そうだわ、舞台では花売りの少女役がこれによく似たお衣装を着ているの。わたしは、一度も着たことがない。それに、丈が短いスカートは13歳のお誕生日以来、わたしのお部屋から消えてしまったもの。
諦める理由ばかりを探していたら、彼がひょいっとそれを片手に取り上げて、言ってくださった。……不思議だわ。あなたのそうしたお声がわたしに皮を脱がせ、殻を破らせ、新たなわたしを形成していくみたい。思想の泉といったものが、わたしの方へ流れ寄って来るみたい。
わたしが心に描いた鳥はとても自由で、今、クローム緑の翼を広げて世界の殻から飛び出したところよ。